「暇だねィ……。」
「暇アルな……。」
俺達は、屋上に寝転がって空を眺める。蒼い空、白い雲、死んだ顔の俺ら。サボり中だ。暇なら授業に出ろ、という台詞は言わないでほしい。退屈な授業より暇な昼寝のほうが100倍マシ。
「吸い込まれそうアル。蒼すぎて。」
「空にか?」
「空を通り過ぎて宇宙まで行っちゃいそうネ。」
「へェ。」
空を見つめる神楽の横顔は、本当に遠くを見ていた。俺は空より、お前のきらきら光る蒼い瞳に吸い込まれそうでィ。
「宇宙行きたいアルなァ。きっと暇じゃなくなるヨ。」
「馬鹿。最初は暇じゃねーかもしれねーけど、ずっと星空ばっかりじゃあそのうち飽きてくるぜィ。」
「そっか…。
じゃあ私は地球の日本の銀魂高校の3年Z組のサド(沖田総悟)の隣の方がいいネ。」
「かっこ沖田総悟かっことじる、ってなんだよ。サドが本名で沖田総悟があだ名みてーじゃねーか。」
「お前はそんなもんヨ。」
「馬鹿チャイナ(神楽)。」
「……………アホ。」
ああ、やっぱり暇だ。ふぁ、と欠伸をすると、神楽もつられてかくあぁっと大口を開けて欠伸をした。てめーホントに女子高生か。
「ねェ、青春って何アルか?」
「なんでィ、いきなり。」
「私青春してるアルか?」
「しるか。」
神楽を見ると、さっきと同じように空を見ていた。ピンク色の艶やかな唇はキュッと結ばれている。
「青春と言えば、友情・部活・恋ネ。でも私にはよくわからないヨ。」
「うん、そう言われりゃ青春ってわからなくなってくるな。」
「サド、私ネ、高校卒業したら、中国に帰るの。」
「うん………え?」
ワンテンポ遅れて俺は驚いた。あまり理解できない。てか、なんで今言ったんだ。今すげー青春についての会話だったじゃん。
「パピーの都合で……。」
「…………。」
俺は何もできず、空を見つめるしかなかった。あぁ、蒼い。
「青春、したいヨ。帰っちゃう前に。
みんなとの思い出がほしいアル。」
「…………。」
「サド、手伝ってヨ。私に青春させて。私の思い出を作って…。」
ぐすり、という水っぽい音が聞こえた。あの蒼い瞳から零れる雫は、同じように蒼いのだろうか。
「俺は、」
ひっくひっくとしゃくりあげる声。それに心臓がぎゅっとする。
「俺は、青春してるのかもしれねーし、してないのかもしれねェ。けど、俺ァ……楽しいんでィ。」
「たの、しい…アル、か……?」
神楽がしゃくりあげながらも問いかけてくる。
「こうやって授業サボって屋上にいるのも楽しいし、友達と喋ってるときも楽しいんでさァ。ただ高校生なだけで、楽しいことはたくさんあるんでィ。」
「…………。」
「楽しもうとしなくていい、高校生でしかできないことをすればいいと思うぜィ。」
「サ、ド………。」
俺の心臓はどくんと跳ねた。神楽が俺の腕にしがみついて、顔をうずめてきたから。
「サド…ありがとう。私…私……っ。」
ドッドッと血液が循環するのを感じる。顔も紅潮しているはずだ。全く、俺らしくねェ…。
「そうだ、今からZ組で遊びに行かないかィ?高校生ならではだろィ。」
神楽はパッと顔を上げた。涙は蒼くはなかったようだ。透明で純粋な雫だった。睫毛についた雫がキラキラしてとても綺麗だ。
「行くアル!サボりだけど。」
「それも青春でィ。」
「そうアルな。アハハ!」
「フッ。じゃあ行くか。」
今しかできないことをしよう。
後悔のないように。思い出になるように。
青春だったと思えるように。
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