「神楽、忘れもんねえか」
「もう何回目アルかそれ」
クスクス笑う神楽は、髪も伸びて顔立ちも随分と大人っぽくなって出るとこも出てもう大人の女性で。俺から見ても魅力的な女に成った。いつと比較してかと問われると、こいつが俺の前に現れたときか。しかし容姿が変わろうと神楽は家族のような存在で、いつまでもそれは変わらないんだと思っていたけれど。そんなのはオジサンの戯れ言だったんだな。
神楽は今日、嫁にゆく。万事屋から、俺の元から離れてゆく。俺達みたいに本物のようでそうでない家族じゃなく、ちゃんとした正式な家族を築く。もう二度と、神楽は俺の家族で無くなる。そんな悲しみを抱えながら、笑顔で送り出すことが出来ようか?
「銀ちゃん、酷い顔してる」
「馬鹿、笑えるかよ」
「銀ちゃん、ありがとう、ほんとにだいすきヨ」
頭を撫でると、神楽はいつものようにはにかんだ。その顔立ちや体つきもすべてが過去とは異なっている。だけどそれさえもいとおしくて、抱きしめたくなったけれど。
「神楽、だいすきだ。バイバイ」
そのだいすきが同じ言葉でも、神楽のだいすきと俺のだいすきが交差することは決して無いのだ。