「なにがすきなんだ?」
「食べることアル」
「なにを食べたい?」
「無節操アル」
くちゃりくちゃりと酢昆布を噛みしめながらベンチからぼうと空などを見ていればいきなりの質問。姿も見せずにこえだけ先に飛ばしてくるものだからほんの少し誰か考えたが、面倒臭い、誰でもいいや。脳が働いている気がしない。
「寒いか?」
「あまり思わないネ」
「そうか」
「腹は減ってる?」
「常日頃」
「そりゃあよかった」
「甘ァいものはすき?」
「だいすき」
「いいねえ」
「さっきからなにアルか」
ふっと軽く振り返れば質問攻めにしていたのはドS税金泥棒野郎。質問の意図がわからない。
「お前を満足させることはなんだ」
「食べることアル」
「三大欲求のうち、食欲だけが特化されたりしねぇんだ。故にどれかが強いとほかのふたつも強いらしい」
「意味がわからないアル」
「睡眠欲、食欲、性欲が人間の欲求だすなわち性欲でお前は満足しないのか」
「食欲で満足したいアル」
「残念」
私にいったいなにを伝えたいのだ。
「お前は何で満足するアルか」
「そうさな、お前を食べることかね」
「ごめんこれは訊いた私が悪かった」
「お前は甘そうだ」
「話変わんの早いな」
「きっと、髪にキスするととろりと甘いし、首筋は噛むと甘酸っぱいし、指先をくわえるとふわりとミルクの味がするんだ」
「すごい尊敬するアルその妄想」
「お前は照れて、やめてとか変態とか嫌いとか冷たいことを言うけれど、しばらくたてばどろどろに溶けて抵抗もしなくなる」
「そうして」
「俺はその溶けたストロベリーアイスクリームをゆっくうりあじわうんだ」
にやりと厭な笑み、白けた気持ちで横目に入れた。そんな官能的なアイスクリーム、私であじわえないだろうに。
「いただきます」
彼はそう言うとがぶり、首筋に噛みついた。うっとうめけば彼の吐息が耳にかかってくすぐったかった。
「甘ェな」
首筋から口を離しからからと笑い出す彼はなにかがおかしい。どうしたのだろうか、そう思ったけれど口が上手く動かない。きっと脳がアイスクリームみたいにどろどろ溶けてしまった。
「死ね」
「ごちそうさん」
歯型が私の白い肌にあかく浮いて、まるでストロベリーの果実。
なんかすいませんでした。主催fruityに提出。