涙は出ない。逆に笑いがこみ上げてくる。

どうしてだろう。私は今こんな状態なのに。

息をする度に、ゼィゼィヒュウヒュウと音が鳴る。気管か肺をやられちゃったかな。

痛い、ようで、痛くない。痛いという感覚がない。

「残念だね。こんなにもあっさり死んじゃうなんて。」

神威がペロリと手を舐める。私の血だ。

「やっぱり、家族だ仲間だに囚われてる連中は弱いんだ。
これだと、あのお侍さんも期待はできないな。…まだ生きてる?しぶといね。」

ガバァと口から血が溢れる。もうすぐだ、死ぬのは。
だけど、やっぱり涙は出ない。口角が上がるのみ。

「今から自分が死ぬってのに笑うなんて、さすが俺の妹。殺さなかったらよかったかもね。
でも、遅いか。」

「………て…る。」

「ん?」

「殺して…やる。」

霞んで見えないが、神威のほうを見て笑う。

「来世……殺してやる…から、まっと……け……。」

目は完璧に見えなくなった。声も出ない。耳も聞こえない。それでも、顔の筋肉は緩まない。

「ハハ、本当に殺されそうで怖いね。……あり。死んじゃった?笑ったまま死んでるよ。」

ただただ、私は来世が楽しみ。




thanks Aコース



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