ゆらゆら、ゆらゆら。居場所を求めるかのような、さみしげに揺れるひとみをしっていた。きっと最初からわかっていたけれど、見て見ぬ振りをしていたのかもしれない。私が頼るべきひと、私のよりどころになってくれるひとは強いはずだと思っていたから。だけどそれは願望であって、現実ではなかった。

一般的に、涙を流すと泣き虫やら弱虫だとか言われるけれど、私は違うと思っている。涙を流すのは弱さの主張ではなく、助けの懇願なのだ。助けが弱さに繋がるなど以っての外だ。そんなのをみて格好悪い、なんて誰も思わない。私ならば救いたくて救いたくて躍起になるだろう。だから銀ちゃんもそうしてくれれば良かったのだ。助けて、神楽、苦しいよ、って。

結局、さいごまでその助けのシグナルを出してくれることはなかった。私が気づくことはなかった。自分の負荷を閉じ込め枷をして、放つことのないまま銀ちゃんは自ら時をとめた。

記憶にあるのは、窓から夕陽を見ながら黒い鞘から輝く刀身を出す姿。そしてそれを愛おしそうに指でなぞり、その先を自分の胸に向け、大きく振りかぶったところだった。そのとき泣いていたかなんてしらない。すべて赤色に染まってしまったから。

赤は宙を舞い踊り、部屋中に鮮やかな花を咲かせた。この世が全部真っ赤になったように思えた。その赤の中で銀ちゃんがばたんと倒れた。酷く大きな音だった。足の力は抜け、そのまま床にへたりこんだ。

そこからは記憶にない。





気がつくと新八の家にいた。それでも世界は赤いままだった。

「神楽ちゃん、大丈夫?」

「………。」

「心臓を一突き、即死。」

「………。」

「何があったなんてしりゃしないけど、言ってほしかったね。」

本当に強いのは新八だ。涙を流しながら救いたかったと言うのだから。

「ずっと一緒に、いたかった、な。」

新八が涙を拭った。

それならば、涙のひとつも出ない、弱く冷酷な私はどうすればいいのだろう。

この赤い世界をどうやって生きていけばいいのだろう。

無情な赤を
(ただ見つめた。)




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