涙って、綺麗だ。

辛いとき、悲しいとき、憎いとき――そして嬉しいとき。感情のまま流れる涙は驚くほどに美しく、純粋だ。


君の涙は一段と美しい。きっと君は涙だけじゃなく、心までもが何色にも染まらない純白だから。

君の肌、君の髪、君の手、君の足、君の唇、君の涙。全て俺のものにしたくて。俺色に染めてしまいたくて。

ただ、抱きしめた。

「サ、ド……?」

俺の腕にすっぽり入ってしまう君は弱々しく呟いた。

「好き、でィ。」

君の額に唇をあてて俺も呟いた。それはまるで独り言のように哀しげな声で自分でも驚いた。

「神楽ァ……。」

「…………。」

神楽は何も言わない。でもゆっくりと俺の背中に手を回した。

「そう、ご……。」

初めて俺の名前を呼ばれた。なんか、すっげェ、嬉しい。更にぎゅうっと抱きしめた。愛しい。このまま抱き合って溶けてしまいたい。

「痛いヨ、総悟…。」

そう言いつつも、神楽も強く抱きしめている。でもちょっと痛い。いや、ちょっとというよりかなり痛い。メキメキいってんだけど。夜兎自覚しろよ。

でも、そんな痛みも嬉しかったり、愛しかったりするんでィ。

「神楽、好きなんでィ。どうしようもなく、好き……。」

唇を頬や眼に這わせる。キスする、というよりも触れさせるくらいに。すると口に少ししょっぱい味を感じた。

「神楽……?」

神楽は涙を流していた。一筋、すぅっと。白い肌に流れる雫はきらきらひかっている。

なんて、綺麗。そんなことを思ってしまった。

「嫌だった……?」

すこし離れて訊いた。嫌だったって言われたら俺も泣くぞ。

「違うヨ。なんだかネ、私…、」

神楽は笑った。


「嬉しいの。」







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