ねえ土方さん、沖田は髪を結いながら話す。あなたは男よ。
「そしてわたしは女だわ」
パチン、紐が切れた。髪がふわりと落ちる。やわらかな色と質感。それが上質であるのを俺は知っている。しかし、俺は切れと言い続ける。
「あなたみたいにごわごわした髪じゃないし、身体に余分な脂肪もついてるの」
布団を捲り、着ていないも同然の肌着を見せた。確かに、筋肉が目立つ身体ではない。白い肌は美しく丸みを帯びたシルエットを持っていた。興奮するでしょうと、くつくつといやに、笑う。俺は煙草をくゆらせ嘲笑う。
「力だってはるかに劣ってるわ。真っ向からあなたと闘ったら、絶対に勝てない」
「卑怯な手を使えば勝てると」
「頭を使うのよ、芋侍は持ち合わせてないでしょうけど」
太刀筋を読み、目線を欺き、気づかぬ内に斬る。彼女の特性であった。無駄な動きは何一つない、その美しい戦闘に、勝る者などいない。緻密に計算された刃の軌道を、誰が読める。その女らしい神経質さが、勝利への導きだ。
「女だからこそ、できることがあるはずよ」
そうでしょう? 問いには答えない。答えはイエスだからだ。
「上司に媚びを売るとか」
「上司に媚びを売るとか」
喉を鳴らし、笑う。何がそんなに可笑しいかなど、わかりゃしないが。俺たちは笑う。それが彼女の強さ。ペロリと舐めた唇は、血液の味がした。触れた髪には殺意を抱く。
「切れ」
「嫌よ。わたしが女である証」
「そんなもの必要ない」
女であるのを見せてはいけない。弱みを知られるな、強みを生かせ。矛盾していることなど解っている。女が闘っている時点でここは歪んでいるのだ。
「女の部分は俺が知ってりゃ十分だ」
「服を剥げばすぐに解るものね」
「俺しか知らない」


瞼を閉ざし、抱きしめる。そこには女がいた。血生臭くにやりと笑う女が。それに食らいつく、俺も血塗れだ。









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