骨ばった手が美しくない。上下に動くのどぼとけが美しくない。筋肉質な脚が美しくない。私の身体はどう頑張っても極上にはなれない。「そりゃあトキヤ、身体のつくりは変えられないよ」だけどこの身体が好きじゃないんです。もちろん醜いなんて思いませんよ。出来得る限り美しくなれるように努力しているのですから。でも極上じゃあないんです。どうしようもありませんが。「トキヤ、お前女の子になりたいの?」どうでしょう、でも女性の曲線美には酷く憧れます。


トキヤは自分の身体を見つめ直してため息を吐いた。そうして俺の身体にぺたりと触れる。
「あなた筋肉が落ちたんじゃないですか?」
「今筋肉が嫌って言ったのに」
「あなたはいいんですよ」
なんだかむらっとしたから、手首を引いでトキヤの頬にキスした。きっとどんな女の子よりもすべすべでさらさらだ。この手首だって男にしては細い方だ。腕もふくらはぎも太ももも、白くて筋肉が程よいかたさだと思うんだけど。トキヤはどうなりたいんだろうか。
「女の子になったらどうする?」
「そうですね、ヌード撮影でもしてもらいたいです」
「お前露出好きじゃないじゃん」
「私は美しくないので」
「俺よくわかんないよ」
「わからなくていいんです」

トキヤの身体は美しい。本当の本当に美しい。トキヤは細くて柔らかい曲線が最高の美だと思ってるんだろうけど、俺はきっとそれだけじゃないと思うんだ。トキヤは筋張った首からごつりと浮かぶ鎖骨への流れの色っぽさなんてこれっぽっちも見ていないし、平らで白くてかたい胸も曲線に欠けると言うんだろう。俺はその平坦についている小さな乳首までも美しいと思うのに。無駄な脂肪のない頬に対してものすごく柔らかいピンク色の唇も、この筋肉質な太ももをのぼるとこれ以上に触り心地の良いものなんてないだろうってくらいの極上のお尻があることも、トキヤは絶対に知らないんだ。このちぐはぐがトキヤをより美しくしているなんて、トキヤは考えもしないんだ。

「完全だけが綺麗じゃないよ」
「たとえば?」
「一度女の子の服でも着てみたらいい。きっとちぐはぐで綺麗だよ」
「それはあなたの趣向なだけでしょう」
「そうかなあ、そうかも」
女物の服を着たトキヤを想像した。ひらひらした上等な白いワンピースから覗く太ももとか、ハイヒールで強調されたふくらはぎの筋肉のとか、襟がふりふりしたシャツから見えるくびれのシルエットとか、頭の中にどんどん浮かんできて、それは俺をとんでもなくムラムラさせた。たまらずトキヤを抱きしめてお尻を撫でる。
「トキヤは世界で一等綺麗だよ」





欠陥美/121214







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