これはきっと現実じゃない。でも現実かもしれない。ぐわんぐわんとあまあくゆれる頭ではわからない。でもそれはどうだっていいことだ。この気持ち悪さは嫌いじゃない。





まともに頭がうごかないのは、路地裏から覗く不快な真夜中のネオンの点滅と、潰れるまで飲んだ酒のせい。赤い顔も、あつい身体も、気を抜くと荒れる息も、ぜんぶぜんぶそれのせい。
「万事屋、手前、ホモだったのかよ」
土方が目を細めて笑う。あざ笑うのほうがただしいかもしれない。
「んー、かもなァ」
かも、なんかじゃあないくせに、意地をはった。俺は昔っからずっと男が好きなくせに。だって男がいいじゃん、楽で後腐れもないじゃん。触れるとごつごつする感覚が好いし、力一杯抱いても大丈夫だし。女も悪くはないけど。
「気持ち悪ィ」
「お前も同じだ、馬鹿野郎」
顔を寄せてもこいつはいやがる素振りは見せない。それが好い。男らしいじゃないか。皮膚をちくちくと刺激するこいつのかたい髪も、男らしさでいっぱいだ。
「好いなァ、お前、好いわ」
「気持ち悪ィ」
「そうだな、何でこんなに気持ち悪ィんだろうなァ」
アア非凡だ非合理だ非生産だ、何て気持ちが悪いんだろう!大の男が大の男に耳を舐められて歯を食い縛っているなんて。
「でも、これが好いんだよ、なァ、わかるだろ」
呟くと、こいつはフンと鼻を鳴らした。








きもちわる/120919







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