夢を見る。それも毎晩同じ夢を。そして毎朝じくじくとした頭の痛みに襲われる。でもその痛みを憎むことはできない。何だか俺を戒めているように感じるんだ。
くろ、そこは完全なる黒の世界だった。黒を背景自分の身体さえ視界には入らなかった。もしかしたら俺自身が闇に溶け込んでいるのかもしれない。手も足もすべて溶けてしまって、闇と同化してしまった。俺が闇、闇が俺。まあ、どれほど考えても視界が黒で埋め尽くされているのに変わりはないのだが。ここは何処か尋ねようとしたが、誰もいないことはわかりきっているからやめた。
俺はひとりだと、再確認させるかのような、夢。そんなこと、知っているから。今更だ。
俺が死ぬとき、きっとあの黒の世界にかえるだろう。そうだといい。それならば今と大して変わらないから。
名も知らない若い男は、目を閉じてそう言った。その瞼の裏の闇を見失うまいとしているんじゃあないだろうか。
かと言って死にたいわけじゃない。饅頭だって美味しく食べた。むしろ足りないくらい。と言うことは、俺は生きたいと言ってるんだ。だけどな、この空の脳味噌は死しか考えないんだよ。俺は若い。のに、死を沢山見過ぎたんだな。
己の血か、他人の血か。知りやしないが、初めて見たこの髪の色が赤色に隠されているのは、勿体無い。
辛いことがあったんだろう。きっとあたしにゃ想像もできないくらい。でもそんなの知りやしないから。読もうとしたとて読めるものではないから。
「死は、誰にでも最後までついてくるもんさ、当たり前だろう」
迎え入れるも追い返すも自由。死にたきゃ死ね。生きたきゃ生きな。それだけさね。
「生きる、」
慾望の侭/120207