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レコーディングテストのための一回限りのペアの相手は、あのイケメンくんだった。

一十木音也なんて珍しい名前はこの世に二つとないだろう・・・。

私がボーっとそれを見ているとガタンッと音が鳴った。

目を向けてみれば、そのイケメンくんが驚いた顔をしていた。

まぁ、私よりは超絶プリティガールの春歌ちゃんが良かったんだろうけどね…今回は平凡ガールの私で我慢してくれ。

そう心の中で思っていると彼は私に顔を向けて笑った。

「やったー!綾部とペア。よろしくね」

爽やかイケメンの笑顔を向けられた(いい奴だな)と思いながら苦笑いをしたのであった。

ペア発表にざわめくクラスだったが担任の月宮林檎先生の声でピタリと話は終わる。

男とは思えない可愛さ…ギャップ萌えって奴だろう。

そんな林檎先生が私のルームメイト兼エンジェルの春歌ちゃんを指名したのだ。

どうやら彼女にピアノを弾いてもらうつもりらしい。

キョドっている春歌ちゃんも可愛いなと変態チックで見ていると、どうも彼女の様子がおかしかった。

ピアノの前に座って、楽譜を見て少し焦り気味の顔をした。

(あ・・・もしかして)

そう思った瞬間、ガタンと席を立つ。

『先生』

一斉に注目を浴びるがそんな事は気にする性格ではない。

突然立ち上がった私に驚く春歌ちゃんと林檎先生。

「どうしたの?」って優しく声をかけてくれる先生と焦り顔の春歌ちゃん。

私は彼女と目を合わせ、ニコリとほほ笑んだ。

『春歌ちゃんは楽譜じゃなくて耳で聞く人なんで、私が代わりに弾きます。』

それは昔の私もやっていた事だった。

楽譜で見るより聞いて弾いた方が速いと思っていたのだ。

でも作曲する側になってからは楽譜を見る機会も増えてきたのだ。

たぶん、春歌ちゃんもきっと昔の私と同じなんだろう。

そう思ってした行動だ。

「じゃあ、おねがいね」と快く了承してくれた林檎先生に内心で感謝しながら私へピアノに近づいて行った。

ホッとした表情の春歌ちゃんに私は笑いかける。

「あっ!私、お邪魔です『いいの!いいの!一番は私が弾くから二番から一緒に弾こう。アドリブなんて入れてさ。いいですよね、林檎先生。』

私が聞けば頷いてくれた林檎先生を見て、私は春歌ちゃんの横に座った。










「ありがとうございます。」

小さな春歌ちゃんの声に更に笑みを深めて、私は鍵盤に触れた。

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