マリアージュ


「ねえさねみんー、この間遊園地いたよね?」
「意外、さねみんもああいうところいくんだあ」
「は?」


今週最後のホームルームを終えて教室を出ようとした時、突如入口を塞ぐように立つ2人の女生徒は、知り顔のませた表情で俺を見る。

「それでさあ、わたしたち、見ちゃったんだよね」
「ねー!」
「めちゃくちゃ綺麗な人と歩いてた!」
「そう!わたしたち気遣って話しかけなかったんだよ?」
「ねえねえ、あの人誰?」
「さねみんの彼女?」

交互に繰り返される質問を片手で制しつつ視線を向ければ、正しく興味津々と書いてある面がふたつ。

「不死川先生、な」
「まぁまぁかたいこと言わずに!」
「そそ!」
「ハァ…ったく。つーか、お前らも行ってたのなァ」
「あそこ最近人気のスポットだよ!」
「ヘェ、そうかィ」
「うん!って、はぐらかさないで教えてよ!」
「そうだよ!ねえ誰なのー?」
「教えて教えて!」
「あァ、あの人は俺の奥さん」
「「え!?」」

重なった驚嘆の音と向けられる4つの瞳に思わず苦笑すれば、あんぐりと口を開いた2人はパチパチと瞬きを繰り返した後顔を見合わせている。

「ええっ?!さねみん既婚者なの?!」
「いつの間に?!全然知らなかったんだけど!」
「おう、ちっと前になァ」
「ていうかあんな綺麗な人がさねみんの奥さん…? 」
「ハッ?そりゃどういう意味だァ」
「え、さねみんやるなあって!」
「ほんと!ねえ、馴れ初めはなんなの?」
「ハァ?」

徐々にヒートアップしていく様子に頭を抱えそうになりながら静止の声をかけるも、やれお祝いだ、何かあげなければと、奥さんの好みはなんだろうかと、盛り上がっている2人には届いていないようだ。

「オイ、わーったから、な?お前らちょっと落ち着け」
「だってー!我らがさねみんが結婚したんだよ?!」
「そうそう!しかもあんな綺麗な人が奥さんだなんて!」
「サプライズは無理だけど、今からでも何か計画しなきゃ!」
「何かほしいものとかある?」
「いや…気持ちはありがてェが、」
「クラスの皆集めて、プレゼントするよ!なにがいい?」
「アー…なら、そうだなァ…お前らがテストでいい点取ってくれりゃァ、それが1番の祝いだな」
「えーっ!それはずるくない?」
「辛いこと言う!」
「でも祝いなんだろ?」
「それは、そうだけど…うん、わかった!」
「今回は頑張るよ!みんなにも言っとく」
「おう、期待してらァ」
「じゃ、帰ろっか」
「うん、さねみんも早く帰るんだよ!」
「そうだよ!新婚なんだから!」
「奥さん待たせちゃダメだからね!」
「はいよ、気ィつけて帰れなァ」

「綺麗な奥さんによろしくねー!」と、上靴を鳴らして駆けていく背中を見送って、今しがた言伝を預かった彼女に想いを馳せる。


交際して8年になる名前と、漸く新婚となったのは半年前のこと。


そうして、教師としても唯一纏まった休みが取れる先月の大型連休を利用して行く予定を立てていた新婚旅行は、突如沸いたご時世柄遠出を憚られキャンセルとなってしまった。せっかくの休みなのだから家でのんびりしようという名前の気遣いのまま、生憎の天候も被って映画三昧で過ごした連休。それだってもちろん悪くはなかったのだけれど、やはり新婚として改めて思い出のひとつくらいは残そうと中止になった旅行の代わりといっては安易だが、彼女達の言うとおり先週末そこに行ったのはそんな理由からだった。

別に隠しているというわけでもないが、あの広い園内に漂う人波の中に受け持つ生徒がいて、さらには目撃もされていたとは。どことなく気恥ずかしい気もするが、思春期真っ只中の女生徒がああも目を輝かせるほどに名前を綺麗と称えるからして、そのたしかな評価は存外悪くはないし、言わずもがなもちろん、名前は俺の自慢の奥さんである。


ガキじゃあるまいしと、軽い足取りと綻びそうになるなる口元を律し職員室へと向かえば、数分後には車のキーを握っていた。


----------


「ただいまァ」
「あ、おかえりー!」


玄関扉が開かれる音に、振り掛けのフライパンに待ったをかけて廊下に顔を覗かせれば、片手を挙げて応えた実弥の手には見慣れぬ紙袋が握られていた。靴を揃えて洗面所に消えたその姿を確認してキッチンに戻れば、暫くしてやってきた実弥はいそいそと紙袋の中身をカウンターに置く。

「なにか買ってきたの?」
「おう、おはぎ」
「あら、そう」

評判の強面からは想像つかないかも知れないが、実弥の好物は甘味である。中でもおはぎには目がないようで、年がら年中欲しているようだし、贔屓にしている店もあるくらいだ。そんなわけでこうして自ら買って帰ることは別に珍しいことではないのだけれど、きまって理由があることは本人はもしや自覚していないのかもしれない。

「晩飯、いつも任せて悪いなァ」
「ううん、大丈夫だよ!実弥は先にお風呂入っちゃったら?」
「いいのかァ?」
「うん、上がる頃には出来てるよ」
「そうか、ありがとなァ、行ってくる」

そうして一度キッチンへ出向いた実弥は、わたしの頬に口付けてからお風呂場へ向かっていった。


ふむ、なるほど。

どうやら実弥は今日、いつも以上に機嫌がいいらしい。


お風呂から出た実弥はこれはいつも通り、出来上がった料理を運んでくれて、それからきちんと手を合わせて、もう何度だって作っているメニューだというに、度に美味しいと呟きながら箸をすすめた。それこそ学校での評判を聞けばあり得ないと揶揄されそうな柔らかな表情で、あっという間にお皿の上はきれいになっていく。わたしが知っている実弥はいつだってまるで優しさのかたまりなのだから、生徒間での一部酷評は正直いただけないけれど、反面この表情は誰にも見せたくないなあと思ったりもするのだから、わたしも大概なのかもしれない。


「ごちそうさま。ありがとなァ」
「いいえこちらこそ、いつもきれいに食べてくれてありがとう」
「なんつーか、これがあれだよなァ」
「ん?」
「毎日味噌汁作ってくれ、とかって言うだろ?」
「あはは、それはプロポーズの言葉だよ」
「じゃあやっぱり名前の味噌汁が毎日飲みてェ」
「っ、もう…こちらこそ、毎日作らせてね」

時々こうやって突拍子もなく溢される甘いセリフに、もう8年と長く付き合っていながら、わたしは未だにドキドキさせられてしまう。本人はきっとそんなつもりなく、無自覚の所業なのだろうけれど。

「洗い物は俺がするから、名前も風呂入ってこいよ」
「いいの?ありがとう」
「あァ、構わねェよ」

食器を運んでキッチンに消えた実弥を追いかけて、今し方高鳴った胸の内そのままに今度はわたしがその頬に唇を寄せる。もちろん差分から背伸びをしても届かない距離に肩を掴めば、実弥はやおらに身を屈め、「ん」と長い睫毛を伏せた。存外協力的な、そうしてなんだかちょっぴりかわいらしい端正な横顔に態と音を立ててキスをすれば、微かに揺れる口角。

「ンだよ、そっちかよ」
「えへへ、仕返し」
「ハ…?」
「じゃあ行ってくるね」
「アー…おう。ゆっくりしてこいなァ」

目を開けた実弥の、少しだけ尖らせた唇に見送られ、お風呂場へと向かった。


----------


「ふう、ただいまあ」
「おかえり」

半乾きの髪をそのままにリビングに戻れば、実弥はソファに座ってテレビを観ていた。観ていたというよりは流していたという方が近いのか、わたしの姿を捉えると電源を落として立ち上がる。

「乾かさねェと風邪引くぞ」
「ん、ちょっと湯冷し」
「ったく、そうやって湯冷めし過ぎんだろがァ」

そう言いながら実弥はわたしの横を通り過ぎ、廊下に消えた。その背中を見送りつつ不思議に思っていると、戻ってきた手にはドライヤーを持っていて、そうしてコンセントを挿して再びソファに座れば開いた両膝の間を叩き、ここに座れと合図が掛かる。


ああほら、やっぱり。

今日の実弥はかなり機嫌がいいみたい。


招かれるままラグの上に腰を下ろしソファにもたれると、心地良い指先が地肌を掠めた。思わず目を閉じて身を委ねていれば、カチリと音がして温風が吹き、大きな掌がわしゃわしゃと髪を解く。まるで美容院にいるかのようなその手つきに、濡れた髪はだんだんと軽くなっていき、さらには冷風をも使い分けまるで自分の髪ではない仕上がりで乾燥を終えた。

「ン、できたぞ」
「ありがとう。実弥は器用だね」
「昔は寿美たちの髪の毛も乾かしてやってたからなァ」
「ふふ、さすがいいお兄ちゃん」

いつもと同じトリートメントなのに、どういうわけか実弥が乾かすとつるりと艶を増すから不思議だ。くるくると毛先を遊んで眺めていれば、ドライヤーを置いた実弥の指が同じように毛先に絡む。

「なァ、ちっと飲まねェかァ?」
「うんいいよ。おはぎも食べる?」
「だなァ」

「せっかくの金曜日だし」と時計を見ればまだ21時をまわったばかりだった。晩酌をするにはちょうど良い時間だと2人で席を立ち、わたしはキッチン、実弥はドライヤーを片付けに洗面所へと向かう。

「ありがとう」
「おう」
「ビールにする?」
「あー…ワインなかったかァ?」
「えっ?あ、うん、あるけど…」

珍しいオーダーだなあと、買ったものの飲む機会に恵まれずにいた赤ワインを戸棚から取り出して見せると、ドライヤーを片付け戻り、箱からおはぎを出し終えた実弥はひとつ頷いた。そうしてキッチンにやってくると食器棚からワイングラスを2つ取り出して、引き出しからオープナーを持つとわたしから受け取ったワインと共にテーブルにセットする。

「このグラス使うの初めてだな」
「そういえば、そうだね」

金縁が施されたかわいらしく繊細なデザインのグラスは、実弥の同僚の宇髄さんが結婚祝いにとくれたもの。使うからして意味があるのだろうけれど、勿体無くて飾っていたままだったそれを今日というなんでもないはずの日に卸すことになるとは、やっぱり実弥はなにかいいことがあったのだ。

ポンっと軽音を響かせてコルクが外れると、とくとくとグラスに注がれる葡萄色。やけに様になるその姿に思わず見惚れていれば、手を止めた実弥がわたしを呼ぶ。

「呑もうぜ」
「うん」

なんだか少し上がったテンションに順ってリビングの明かりを間接照明に切り替えると、テーブルの上にキャンドルを灯した。そうして出来上がった暖色の空間で向かい合って座れば、小洒落たお店のような雰囲気に思わずほぅと息を吐く。

「乾杯」

細い足を長い指が包んで持ち上がる実弥のグラスにわたしのそれをカチンと合わせれば、なんだかとってもパーフェクトな夜が始まった。


----------


おはぎと赤ワインのマリアージュは意外にも美味しくて、それからこれも機会に恵まれずにいた缶詰をいくつか開ければ、わたしは元より実弥の頬も薄らに染まっていった。飲み始めて一時間、回ったお酒にふわふわと笑みを溢す実弥を、あれは半年前、結婚式のあとのパーティーでも見た気がする。その時だって、長く付き合っていながらまるで見たことのなかった実弥の酔い姿に驚いたのだけれど、この短期間で2回も見ることになるなんて、もしやそれほど稀有ではないのかもしれない。

「なァ…」

一体いくつ買ってきたのかとツッコミそびれたまま消えていったおはぎは残り1つ。丁寧に切り分けられ形の良い唇にゆっくりと消えていく小豆色の片を目で追っていれば、咀嚼を終え喉を鳴らした実弥が口を開いた。

「なあに?」
「今日な、帰り際によォ」
「うん」

酔いからゆったりと話し始めた実弥は、何かを思い出すように視線を左上に泳がせる。

「生徒2人が俺ンとこにきて、この間俺たち見たって言ってきてなァ」
「この間?」
「ほら、先週遊園地行っただろォ。あそこで俺たちを見たんだと」
「えっ、そうなんだ!でも、誰にも声掛けられなかったよね?」
「あァ、どうにも気遣ったらしいぜ。邪魔しちゃ悪ィつってなァ」
「なんだぁ、そんなことないのにね」
「そうだなァ」
「それに、先生の実弥が見れるチャンスだったのに」
「ハァ…?それは、別に見たかねェだろ」
「そんなことないよ?実弥先生のことは、話でしか聞いたことないもの」

良くも悪くも小耳に挟むだけの教師としての実弥を見てみたいという気持ちは実を言えばずっと前からある。けれどそれはわたしが生徒にでもならない限り巡ってくることはないからして、その機会を逃したことに抱く惜しい気持ちは紛れもない本音なのだけど。想像に想いを馳せ緩む口角のまま微笑むわたしに、微かに小首を傾げたものの実弥は話を続ける。

「まァそれはいいとしてだな」
「ん?」
「それでな、そいつらがよォ、」

そこで実弥は言葉を切ると、こくりと一口グラスを揺らした。

「名前のことをな、」
「うん…」
「綺麗だってよォ」
「えっ?」


そう言ってグラスを掲げたままの実弥の、真っ直ぐにこちらを捉える深紫の瞳は、お酒の所為かいつもよりもずっと柔らかい。もちろん厳しい視線を向けられたことなんて、わたしがうっかり手を滑らせて包丁を取りこぼした時くらいしか現れていないけれど、それでも、普段とは違う色を孕んだ双眼はゆっくりと瞬きをひとつしても尚、わたしを離さない。

「綺麗、だってよォ…」
「う、うん…」
「ンっと、綺麗だよなァ」
「…あ、ありがと…」
「綺麗…」
「…っ、実弥、酔ってる…?」
「ンー…アァ…酔ってンなァ」
「そ、そうよね…」

溶けて無くなるんじゃないかと思うほどに目尻を細めて、グラスを置けば赤らむ頬にその手をついて、もはや戯言ではないのかと思いたくなるほど何度も呟かれるその言葉に、アルコールを無視しても身体が熱い。一体どうしてしまったのか、わたしがこれまで見てきた不死川実弥という男は、こんなにも締まりのない表情を浮かべられる男だっただろうか。


二次会で見かけたそれとは比べ物にならないほどの惚けた顔は、紛れもなくわたしに向けられている。


「あ、あの…実弥?」
「うん?」
「そ、その…そろそろ口を噤んでもらうことは…」
「聞けねェ願いだなァ」
「え、なんで…」
「ンー…そりゃ、何遍だって言いてェからだなァ」
「っ、いや…だからってそんな、」

もうこれはやはり酔っ払いのそれだと割り切ろうとも、耳に入る誉の数々に耐えきれず俯けば、旋毛のあたりに感じる視線さえも熱い気がする。

「綺麗だし、すげェかわいいし、」
「………」
「料理も美味けりゃ、気立もいいし」
「っ…」
「笑ったかと思えば、存外怖がりで泣き虫で、なァ」
「…っさね、み…、」

いったいなんのプレイなのか、止まらぬ言葉を制するべく意を決して顔を上げれば、途端にばちんと交わる視線。

「…っ、」
「名前、」
「実弥…」
「…俺を選んでくれてありがとなァ」


結婚というのがひとつのゴールだとするのなら、交際の長さが必ずしもそこに向かうための道筋になるとは限らないと、年月が経つほどになんとなく覚悟していたときもあった。それにもちろん8年もの間、まったく順風満帆だったかといわれたらそうではないことだってあったし、それこそ実弥は控えめに言ってもモテる部類に入っていたので、不安だってなかったわけじゃない。そうして交際後間もなくからはじめた所謂自分磨きは、好きな人には綺麗に見られたいという乙女心由来はもちろん、万が一訪れるその日に自分を見失わないための保険のようなものでもあった。けれどそんな日が来ることは疎か、遂には満期を迎えて純白のドレスに変わったのだ。

だから、その言葉は寧ろ、わたしの台詞だというのに。


「…随分待たせちまったからよォ」
「えっ…?」
「ずっと決めてたンだけどよォ、仕事が安定するまではつってなかなか言い出せずにいたら8年だ」
「うん…」
「やっと、手に入った…俺の自慢の奥さんなンだわァ」

そうしてゆっくりと伸びてきた両手に応えれば、テーブルの上、散らばった小皿を挟んで指先が触れる。実弥の右手はわたしの左手を撫でて、昔ながらの謂れを実現したシルバーを擦る。

「わたしだって、実弥の奥さんに選んでもらって、本当に嬉しいよ」


「ありがとう」とわたしよりもずっと大きな掌を撫でると、ふわふわと垂れる前髪を揺らして、実弥は静かに頷いた。


「でもよォ」
「ん?」
「いくら生徒とはいえ、ああやって名前のことを褒められるのは悪くねェよなァ」
「そ…そんなに、その、褒めてくれてたの?」
「あァ」
「なんて…?」
「ンー?めちゃくちゃ綺麗な人が奥さんだなんて、さねみんやるねェつって…」
「へっ?さねみん…?」
「アー…、いや、なんでもねェ」
「えっ、ちょ…実弥って学校でさねみんて呼ばれてるの?」

先までの甘い雰囲気を一変させるには十分すぎる情報をぽろりと溢した実弥は片手を解くと、バツが悪そうにがしがしと頭を掻く。

「さねみん…先生…」
「………」
「どうしよ…初めて知っちゃった…」
「ッ…だーからァ!調子乗ったヤツがそう言うだけで、普通に不死川先生だわァ」
「ふふっ…でも、さねみんって…ふふ、さーねみん?」
「…呼ぶなァ…」

聞いていた噂よりずっと可愛らしい呼び名があることに驚きつつも、すっかり和んだ空気の中、お酒の力に肖って繰り返し口にしていれば、とうとう痺れを切らした実弥が席を立つ。

「名前…」
「なあに?」
「…さっき言いそびれたンだけどよォ」
「えっ?」
「____、」
「っ、な、何言ってるの…!」

すぐ隣で身体を折り吹き込まれた言葉に思わず耳を押さえて振り向けば、くつくつと笑う実弥はすっかりいつもの実弥だ。

「ま、それだけは誰にも見せてやれねェけどなァ」
「あ、当たり前だよ…そんなの…」
「うん?」
「…実弥だけに、決まってるじゃない…」
「ハッ、これ以上煽ってくれンなよ」

耳元に残る掌をそっと掴まれて、促されるまま席を立つ。そうしてきゅっと絡んだ指先のまま、向かう先はひとつしかない。

「さて、存分に見せてもらおうじゃねェか」
「…っうう…さねみん、厳しい…」
「なんだ、そういうのもアリかァ?」
「えっ?なっ…!」


ふらつく足元を掬われるように倒れ込んだベッドの上、実弥はやっぱり上機嫌だった。


「あァ…すっげぇ綺麗だわ、名前」



翌日のデートの帰り道、贔屓の店で再びおはぎを買い込んだのは、実弥ではなくわたしの方だった。




2021.06.10


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -