03

前世の記憶を持っていると分かってもなんら驚きはしなかった。そんなもん、派手にイケてるとしか思わなかったし、今世では許されたことではないだろうが、気づけば俺には前世でもそうであったように3人の嫁(厳密に言うと恋仲)がいるからだ。

この学園で新米教師としてやってきたあいつらの姿を見たときはそれはもうド派手に喜んだし、あいつらもそうだった。それぞれが今世を笑顔で生きていることに感謝したし、そばで一緒にいられることは素直に嬉しかった。ときに確か不死川には恋仲がいただろうと尋ねたが「アイツはいねェ」と一言。予想だにしなかった声色弱い返答に、どう返していいか流石の俺でも考えをあぐね、それ以上何も聞けず終いだった。

そうして月日が経ったある春の日の放課後、職員室でいつもの面子で談笑(業務は済んだ!)している時、ふと不死川が口を開いた。

「アイツを見つけた」

アイツとは紛れもなく不死川の前世の恋仲のことであり、その言葉に俺と煉獄は大歓声でガッツポーズをし、伊黒は「ほう」と僅かに目を見開き、冨岡は真顔で大拍手を送った。

「そうか!やはり今世に生きていたのか!」
「どこで見つけたんだ?声は掛けたのか?」

派手に喜ぶ俺達とは対照的に当の本人には首を垂れ地味に落ち込んでいるように見える。

「どうした不死川?まさか、既に他奴と…」

ついに伊黒が心配し始め声を掛けたが、不死川は頭を振った。

「それならその方が…いや、よくはねえが。…アイツは、ついこの間ここに入学してきやがった」

よもや!と煉獄が大声を出したが口には出さないだけで3人とも同じ気持ちだった。入学してきた、つまり生徒ということだ。それはド派手にツいてねえ。

「齢まで同じだとは思ってなかったが、生徒でこられちゃどうしようもねェ。俺の首が飛ぶ」
「…物騒なことを言うな不死川、お前は人間だ」
「少し黙れ冨岡」

不死川が言うことは尤もだ。俺達が教師である以上、生徒に手を出すなんぞ御法度中の御法度。ド派手に協力したいところだが流石に許容範囲を越えている。

「そうか…でも、間違いなくアイツなんだろ?だったらいいじゃねえか!まだ記憶があるかもわからねえことだし、じっくり行こうぜ!」
「そうだぞ不死川!生徒である以上、教師として堂々と接することができる!」
「身近にいるだけ有難いと思え。いつでも見ていられる」
「…成長していく姿が見れるのは楽しそうだな」

それぞれが精一杯の励ましを述べたところで漸く顔を上げた不死川は視線を窓の外の校庭に向けた。連れて俺たちも視線を向ける。

「…アイツ、全然変わってねェ」
「変わってないとはどういうことだ?」
「いや、確かに幼さはあるんだが、容姿が、歳不相応すぎる」
「つまりド派手に美人だって言いてえのか?」

遠い目をして、なんだ惚気か?と呑気なことを考えていると、先程はまで落ち込んでいたであろう男は徐々に深妙な面持ちになって呟く。

「悪い虫が付かねェよう、見張らねえと…」

ここはいつもの調子を取り戻したことを喜ぶべきか。どうにもこいつは拗らせ易いらしい。全くおっかねえ野郎だ。

見つめる校庭にざあっと、地についた花弁ごと巻き上げて風が吹く。それを見つめる眼がぐっと開かれた時、物騒な文字の書かれた白い羽織が見えたのは、ほかの3人も同じだった筈だ。
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