▼でも憎めない社長
その日動くと何か都合が悪いらしく、次の日に私の家に服部くんとコナンくんが来て…スーツをきるように言われた。
「やだ!」
「お願いなまえさん!」
「とかなんとかゆーてとりあえずスーツは着るんや」
「服部…くんと私とどっちが役に立つかって思ったら絶対私だと思いつつもやっぱりやだ!」
「なんやて!?役立つとかやなくてこっちの坊主が俺の助手やろ!」
「私のほうがパートナーかもしれないじゃん!?悔しかったら女装でもなんでもして自分で入ればいいんだ!」
「俺は顔が割れてるから姉ちゃんに頼んでるんやろ!」
「あー…いいよ服部…なまえさん無理言ってごめんな。事情知ってるから頼りやすくて、ごめん」
「ねぇ、私コナンくんのそういうところずるいと思うの!」
一度私の家に帰ってスーツは着た。スーツを着てその会社の社長に近づいて脅迫状を取って来いとか、内容を見てとか…なんで難しいこというの?社長だよ?社長相手にどうやって近づけばいいの?って思ったところ、来客を装うように言われた…本来ならば社長相手の来客だときっと社長の友人とかじゃないとだめなんだろう、そう思ったのに社長にインタビューをする…そういう事になった。とりあえず色々な指示を貰い、頭をぐるぐるさせながらも緊張した状態でその会社に向かった。もちろん写真も持ち、何かあった時のためにコナンくんに発信機をつけられているし、何かあっても大丈夫…
その会社のエントランスに入る前に深呼吸をし、それから受付でインタビューをしに来た旨を伝えた。それは事前にコナンくんが電話で私の声を使ってお話をして、ちゃんと連絡を取ったから…なんだけど、いざ私と案内してくれる人が歩いていると怒鳴り声が聞こえた
「私は誰にも会わないと言っただろ!」
「え、でも社長っ…昨日確かに社長からの連絡でインタビューは受ける…と」
「言っとらん!」
これもしかしてコナンくんの仕業かな…。器用なことするな、どうやってやったんだろう…なんて考えたところで考えても仕方ないような気がする。私と案内をしてくれている人が顔を見合わせるとお互いが苦笑いを浮かべた。引き返したほうがいいか、一度離れてコナンくんに連絡したほうがいいかと考えたところで、室内から声の主が出てきた。どうやら
私が案内されようとしていたのは社長室の隣に続いている談話室だったみたいで、そっちのほうへと視線を送った後に出てきた人と目が合った
「こんにちは」
「ああ…こんにちは…」
驚いた顔をされた後に私が笑って挨拶をすると、罰の悪そうな顔をした後に顔を逸らしてつぶやいた。私に背中を向けた社長が足を止めて「君、こっちに入ってくれ」と言ってくれたので私だけが入る事になり、他の人たちは下がった。社長室の中に入ると、社長専用の机の前に、ソファーのテーブルが置いてあってそこに座るように言われたので座る
「あの、すみません、こちらの手違いがあったようで」
「いや、きっとこっちの行き違いがあったんだろう…。インタビューだったな?」
「は、はい」
「それは何か記事になるのか?」
「そうですね、特集ページにこの会社のことを書きたいと思っているので」
「そうか…。」
私の目の前に腰をかけた社長さんが何かを言いたげに口を閉じた。私はそんな社長が気になって偽のだけどインタビューをする事が出来ずにいた。無言で、時計の音とか外の音だけが聞こえる室内に、私は変な汗をかきそうになった。
潜入捜査官でもなんでもない、特殊な何かを訓練したわけでもないただの知っているだけの一般人の私が、緊張しないなんて無理なんだ…逃げ出すわけにもいかないし、どうしようかと考えていたら社長さんがこっちを見た
「殺されるかもしれない」
と静かに声をあげた
「君、昨日あの現場にいたな?服部くんといただろう?」
コナンくーん、ばれてるよー。顔がばれてるから服部はいけないとか言って、私もしっかり見られてるんじゃん!もう仕方ないし、嘘をつき続けるよりも信用されるだろうと思って服部くんが急に護衛もいらないって言い出した社長のことを怪しく思って私に探りを入れたことを伝えたら、社長が小さく息を吐いた。そこで「実は」なんて吐き出したところで私はあることに気づいて手を出した
「どうした?」
「待って、すっごいフラグを見つけたの。社長座ってて、私あそこのカーテン閉めてくるから、社長はこのソファーの下に小さくなって!!」
今社長から話しを聞いてしまったら社長がこの窓のほうから狙われて絶対死んでしまうパターンだと思った。正直言うなら私も窓に近づくのは怖いけど、この社長は素直な人のようで「危険じゃないのか」と心配しつつも社長よりは大丈夫だと伝えてからブラインドカーテンを下げて、しっかり中が見えないようにした。そして社長のところに歩いて戻っている途中に事件は起きた
パリンッという音とか聞きなれたような慣れてないような音、まるで工事現場じゃないのかって思ってしまう音がなって私は反射的に転ぶようにその場に倒れた。次々と割られていく窓、色々なものが壊れていく音が聞こえ、それがどのくらい続いただろうか、音が止んだので私はそのまま匍匐前進で社長のほうへ行ったら、汗をたらしながら生きていた
「大丈夫か!?」
「フラグを折った…コナンくん聞こえてる?一人じゃ怖いよ!」
大丈夫だといった後にコナンくんの発信機に向かって話していたら電話が鳴った。ああそっか、普通に電話取ればよかったんだ!そのままの体勢で私の愛用あいぽんちゃんを耳に当てた
'なまえさん無事だよね!?怪我してない!?'
「うん、まるで映画の役者のように倒れこんで元気だった。コナンくんの「伏せろ!!!」っていう声が聞こえたから大丈夫、任せて」
'よかった…社長さんは?'
「私がフラグ追ったから生きてる。でもコナンくん、怖くて身動き取れないよ」
'今俺がそっちに、服部が今撃った犯人のところへ行ってるんだけど、社長さんとなまえさんどこかに逃げて!もしかしたら'
そこで電話がぶつっと切れた。それは私の愛用あいぽんの充電切れのせいだった…あれれー?おかしいぞぉ?昨日ちゃんとプラグインしたはずなんだけど…とりあえずここにいてもだめな気がする。だってコナンくんの言葉の続きは犯人がこっちへ向かっているかもしれない、とかかもしれないから
「社長さん、どこか逃げられるところありますか?」
「そうだな…とりあえず秘書を呼んで状況を」
「だめ!誰が味方で敵かわからないんですから!」
「そ、そうか…でも、どこへ?」
「わかりませんよ!どこか無いんですか!?秘密の通路とか!」
「そんなものありゃせんよ」
「わかってます!」
逃げるところ、逃げるところっ…!
あたりを見渡した私が見つけたのは…やっぱり天井裏だった…もうここしか無い気がするけど、入れるかどうかわからない場所にいるのか危険。とりあえず社長室から出て人の多いところに行きたい、だってもう廊下がばたばたしているし…
社長さんを連れて繋がっている会議室へ入ったらまた何発か撃たれる音が聞こえたのだがすぐ止まったので走って廊下に出た。おかしいのはさっき廊下がばたばたしている音が聞こえたのにこっちに誰も来ていないこと。すぐそこにある部屋の中に入り、さっき狙ってそうなやつがいた反対側の窓から顔を出した。もちろん社長さんは隠れさせたまま
狙えそうな場所が無い。ここならもしかしたら大丈夫かもしれない
そろそろ聞きたいのはなんで私がこのほぼ見知らぬ社長さんのために怖い思いしなくちゃいけないのってところで、かといって人を見捨てられるほど冷たい人間にもなりたくないから見捨てられない。廊下を歩くのも部屋の中にいるのも危険だから怖い、私は今度こそ変な汗が背中を伝い、額にもじわじわ汗が出てきた
「社長は」
「わからない、社長室にいなかったんだ」
「じゃあ死んでないって事か」
物騒な言葉が聞こえたのだが、社長が返事をしようとしたので社長の肩を勢いよく掴んで首を振った。というかなんでここまで命を狙われるのか、この人がいったい何をしたというのだろうか、それは今聞くことでは無い。どうしよう、って頭をフル回転させていたのに社長の電話が鳴り、社長が電話に出た
え、このバカ。え
さっきっから私がフラグ折りまくってあげてるのにこの社長めちゃくちゃフラグ立てるんだけど、ほんと、ほんといい加減にして欲しい。助けを求める社長の電話を無理やり切って、その電話の電源を切ってそこに置いた。だめだっつってんのにいい加減にしろよ!そんな顔で睨んだら苦笑いを浮かべてきた。一応そんな空気は察してくれてるんだ…それならこの状況も察してほしい…
ずっとこの場所にいるわけにもいかないのでそっと扉を開けて外を見てみた。一応外からパトカーの音とか救急車の音が聞こえるから、あと少ししのげればどうにか…
そう考えていた矢先だった。カチッという音がして私の頭に銃口があたったのは
フラグ折るのって理屈じゃないんだなってこのとき感じた。
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