リアルのフラグは立つ前に折って投げろ | ナノ
コナンくんのせいだよ

佐伯さんと帰っている途中に、ふっと横を見た家の前に停まっている車、普段ならあぁ、ただ停まっているんだなーくらいで済むのにどうしてもここはコナンくんがいる世界、何かあるんじゃないかと見てしまう。たとえばこのへんには不釣合いな大きめのファミリーカーみたいなのだけど子供が乗ってます、みたいなステッカーが貼っていなかったり
別に貼らない人もいるだろうから別にそれもそこまで気にする所じゃない、だけど全面的に曇りガラスのように見えて中はほとんど見えない。開けっ放しの運転席と、後ろのドア
一階の電気はついていないのに、二階の電気だけがついていて、ピンク色のカーテンが風にゆらゆらと揺れていた。胸騒ぎ、みたいな感じ、ただちょっと確かめるだけ、そう思ったけどやっぱりコナンくんの世界だから佐伯さんに頼んで自分はそっちの家のほうに歩み寄って行った
まるで通りがかりのように運転席の横を歩いてみる、誰もいないみたい。こうやってすぐに乗り込もうとしている状態なのに一階の電気がついていないのは些か怪しいんじゃないかな。そのまま通り過ぎた所で車の前の部分から人が出てきて、私の肩に腕を回して口を塞いでくると、そのままずるずると引きずられた。暴れても暴れても離れない、口が塞がれていて大きな声が出ない
車の中にそのまま入れられると、同じ状態の女の子が車の中に入って来た。口と目を塞がれて、腕を後ろで縛られた状態で車が動き出す
一緒に乗せられた子は暴れているらしく、鈍い音が私の鼓膜に響いた。くぐもった声と震えたような声が聞こえ、それから私のiPhoneがタイミングよくなる
そしたら助けを求めてだろう、その子がまた暴れていたようで怒られていた

「つーか、そっちは何?」

「この車の周りうろうろしてたから連れて来た」

「おいおい…どこの誰かもわかんねぇのに…」

「歩いてたってことは近所だろ」

少なくとも四人以上はいる。何が目的かは全然わからない、佐伯さん私の言った通りにしてくれたかな
とりあえず今は佐伯さんを信じるしかなくて、しばらく走った車はどこかで停まり、そして私は立たされて思い切り押され、冷たい場所へと転んだ。足がジンジンして痛い

「こっちの女は利口だな、暴れたら余計痛い目見るってわかってる」

「その点お前は暴れたら暴れただけ痛い目見る事をわかってねぇな?」

パラ、目隠しが外された。目の前にいる女の子はパジャマ姿のいかにももうすぐ寝る予定でした、と見受ける女の子。涙を若干赤くなった頬に伝わせていた
そっちの子が髪の毛をぎゅっとつかまれて上を向かせられていて、涙を流す様子をその男が笑っている、なんて悪趣味なの…あぁ、友人は泣いてる私を見て笑ってるけど、こんな痛めつけた状態で笑ったりなんかしないよ。友人より悪趣味だよ
転んだ状態から体勢を起こすと、今度は私も髪を掴まれた

「っ…」

「かと言って〜?こっちの大人しい女も気に食わねぇな〜?もっと怯えてくれなきゃつまんねぇじゃん?」

何か目的がある、こうやって話しているだけで何かをしようとする気配も無い。だから入れられた倉庫みたいな場所を視線だけで探った。

「おい、用事があるのはこっちだけだろ」

私の視線に気づいた男が舌打ちをして私の髪を強く掴んで後ろに倒された。腕の自由がきかない私は見事に後ろにひっくりかえって頭は上にあげたので打たなかったが普通に背中が痛い

「はいはい…さて、俺の事わかるよな〜?」

知り合い?なの?なんて冷静にその二人を見ていたのに、背後から近づいてきた男が私をうつ伏せにひっくり返してきた。ひっくり返してくれたほうが動きやすい、足が自由なのをいい事に立ち上がろうと片方の膝を立てたら、もう片方の足首をつかまれて後ろに引っ張られる。あぁぁ膝が痛い!!!太ももの付け根をつかまれたところでサッカーボールと扉が飛んできてそいつの頭に扉があたり、もう一人の女の子のほうにいた男にボールがあたった

バタバタと駆け寄ってくる小さな足音が私の口を塞いでいたものを外してくれた
その間に赤井さんが残りのやつらをすぐさま倒した。

「遅いっ!でも助けてくれてありがとう!」

「ったく…キッドがたまたま見ていたからいいものを…そうじゃなかったらこんなに早くこれなかったからな?」

「キッドがー…」

なんと都合の良い人。今度またからかって遊んであげないと
赤井さんはと言うと、もう一人の女の子のほうの縄を解いてあげていた。その子が縄を解かれた後に赤井さんに泣きながら抱きつき、赤井さんは背中に手を回したりはしなかったがかと言って拒否もしなかった。まって、普通は私のほう先に助けないですかダーリン!?コナンくんが私の縄を解くのに「かってぇ…」なんてため息を吐いていた。ナイフとか持ってないの?万能コナンくんなのに

「だいたいなまえさんさー、最初に連絡くれればよかったのに。どうして突っ走るの?」

「コナンくんを見てると、私にまで正義感が移るんだよ」

「っ…バーロー。なまえさんと俺とじゃ違うだろうが…女なんだからよ…」

そのうちパトカーの音が聞こえると、女の子が赤井さんを離して顔を赤くさせて謝っていた。その人に何か言われた赤井さんはその子の頭をポン、と撫でた
それからこっちに歩み寄ってくるとようやく私の縄を解いてくれる

「膝のほかに怪我は?」

「無いと思いますよ。助けてくれてありがとうございました」

「いや…今回の事でやはり君の発信機をつけるのはどうかと、勉強になった」

「うん、やめて」

それで、私には何もないわけですね?赤井さん…クスクスと笑って、いつも通りの笑顔で笑うくせに、私を心配したような素振りも抱きしめるわけでも、頭をなでるわけでも無いのかっ!
ジ、と赤井さんを睨むように見たら警察の人が事情聴取にこっちに来て、それから手当てをするためにパトカーに乗せられた。警察の人っていうか…おなじみの高木刑事だけど
手当てされながら事情聴取、とは言っても私は不審だと思った車に拉致られただけだからすぐに帰された。コナンくんも夜遅いから、とパトカーに乗せられて送ってもらって、私は断った。あそこに黒い影が見えたから

「お疲れ」

「赤井さん、ごめんなさい巻き込んで」

「いやなに、気にする必要は無いさ…君が危ない目に合っているのに助けにいかないわけがない。自分から首を突っ込んだのは感心しないけどな」

「怒られると思いました…」

「怒って欲しいのか?」

「いや…そういう事じゃないけど」

「そうだな、話しを聞いた瞬間にやっぱり室内犬にしておけばよかった…なんて思ったくらいだ」

「怒ってるじゃないですか」

「怒ってはいないさ」

車に乗り込むように顔で指されたので、助手席に乗り込んだ。車がついたのは工藤邸
うーん、私の家に送ってはくれないのかな、この人
ただ何かされるわけでもなく、車から降りるように言われて降りて、それから家の中に通された

「あの、赤井さん?」

「ん?」

「ん?って…家に帰りたいんですけど」

「あぁ…危ない目にあった君を簡単に帰すわけないだろう?」

「え、えぇ…でも着替えも化粧落としも無いし…」

「化粧落としなら沖矢のがある。心配しなくとも明日の朝には家に送る…今日はここにいてくれ、心臓が止まるかと思った」

「その場合は…AD…ED…ED?」

「AED。それ外で間違うのはやめてくれよ?誤解を招く」

「なんの?」

リビングで向かい合わせに座りながらそんな話しをしていた。なんだっけ、ADもEDもどっちも聞いた事があるからすごくしっくり来るんだけど、赤井さんがなんとなく微妙な顔をしたので何かよく無い言葉だっただろうか。とりあえず赤井さんの心臓が止まったときは使ってみたかったAEDを使用するよ!って、そんな話しだったんだけど私のせいで話しが曲がってしまった。問いかけたのに眉を寄せた顔のまま返事が返ってこない
小首を傾げていると、「いや」と言って立ち上がり「服なら貸そう」と言ってくれた。服よりも下着ですよ、お兄さん…
とりあえず前と同じようにする事にして、服も借りてシャワーを済ませた。出た後はお水が用意されていたのでそれで喉を潤す

「次の休みは?」

「えっとあしー…あさって」

「それなら明日は迎えに行こう」

「うん?送ってくれるんですか?」

「いや?持ち帰る」

「あ゛ー…うーん…じゃあ、たまには私の家に泊まったらどうですか?赤井さんのままでいれますしね?」

「ホー、ならその誘いを受けようか」

え、なんでなんか私が最初から誘ったみたいな感じな返事をされたの。決して違いますけど
とりあえず自分の家なら色々あるし、気を使わなくて済むからそっちのほうがいい。お腹すいたら何か軽いものも自分で好きに作ったり出来るし…うん、泊まるならそっちのほうがいい
眠い事もあるので今日は寝る事にして赤井さんの使っているベッドに入った、赤井さんは私のほうを向いて横向きになり、腕で顔を支えるような形にしながら煙草をすっていた。いつも思うけど寝ながら吸うのやめようよ。それなのにそんな姿さえかっこよくて見とれてしまう

「赤井さん寝ないんですか?」

「寝るさ。君の寝顔を見てから」

「やだよ…。一緒に寝ましょうよ」

「……わかった、ちょっと待ってくれ」

寝顔見られるとか冗談じゃない、私が一緒に寝ようと誘うと眉を寄せて起き上がり、煙草を消してから一度部屋の外へ出た。うとうとしていたら戻ってきて再び私の隣に寝転がってオレンジ色に光る電気を消す

「おやすみ」

「おやすみなさい」

すっごく違和感なんだけど、かつて赤井さんが私にこんなに触れない日なんてあっただろうか。絶対抱きしめて寝てたし、キスとかするし、なんならベタベタ触ってくるのに…
ぐるぐると考えているのにうとうとしていた事と、近くにいる彼の匂いが安心できて私の眠気を誘う

朝起きると、私の寝相のせいなのか彼のそばに物凄く寄っていて、横を向いて眠っている彼の寝顔をジッと見つめた。「赤井さん」と呼んでみるものの、何も反応も示さないし眉も動かないから本当に眠っているんだろう
彼のほうにもう少しだけ寄れば胸に額をトン、と当ててそれからすぐに離れた。
ベッドに座ると、彼が動く音が聞こえたので振り向く、先ほどの事は何も言われなかったので本当に眠っていたんだろう。朝の挨拶を済ませた後に家に帰って色々準備があるからもう帰る旨を伝えると沖矢さんになった彼に送ってもらえた

触れてこない、そばにも寄らない
なんで?もしかして遊ばれた…とか、ないな…じゃなかったら泊まりに来るとかそんな話にならないだろうし…
じゃあ、なんでだろう…



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