リアルのフラグは立つ前に折って投げろ | ナノ
これは…なんとも言えないな

さて、ようやく彼女に好きだと言うのを伝えたのはいいが飲み会に行った彼女の酔いようがあまりにも可愛すぎてもう一度酔わせようと企んだのだが…どうやら酔わせすぎたらしい。俺の口に彼女のお酒を流し込まれて嚥下する。彼女のお酒を作ったのは自分自身で、彼女が飲みやすいように桃とオレンジで割ったのだが甘い

「甘い…ほぼジュースだな」

「ふふ、おかげで飲みやすかったです!」

手の甲を自身の口に押し当てて息を吐く。バーボンの香りと混ざってなんとも言えない甘さが増したような匂いだ。顔をあげて彼女を引き寄せると、彼女の唇に自身の唇を押し当てた、目を瞑ってキスを受け入れる彼女が「ん…」と鼻にかかったような声を漏らした。彼女と舌を絡ませると、彼女の飲んでいた甘いお酒の香りと味がしてそれがまるで彼女の本来の香りのように一瞬惑わせられる。もっと、と言うように彼女の舌の裏を舐めようとしたら彼女が肩を押して離れたきた

「赤井しゃん!」

「ん?」

「お預けです!」

「……今ちょっとショックすぎて一瞬飛んだ。それは無理な話しじゃないか?」

「聞いてください!」

「…聞こうか」

「頭がくるっくるしてるんだな。私!くるっくるしてるんですよ、つまり…そういう事です」

飲ませすぎたか。俺の肩に頬を乗せて先ほどよりも体重が重く感じる、そう思った瞬間に彼女からは「すー…」という寝息が聞こえてきて、背中に回されていた手がだらんっと下に落ちた。まったく…とんでもないお姫様だ
とりあえずそのままグラスに入っているバーボンを全部飲み干してから彼女をベッドに運んだ。何をしても起きなさそうな彼女は人の気持ちも知らず幸せそうな顔をして眠っていた
これで預け食らったのは二回目だな、お酒のせいで赤くなった頬を撫でてからベッドに座って煙草に火をつけ、片付けるために一度部屋から出た。戻ってきたら彼女の寝相のせいだろう、足が太もものほうまで露出していたのでそっと布団をかけておいた。なまえ、この代償は大きいからな、覚えておけと言っても君は身に覚えは無いだろうから俺がしっかりと覚えておいてやる。

しかしびっくりな事に次の日になったら俺が彼女を好きだと言ったことも、彼女も俺を好きだと言った事も綺麗さっぱり忘れられていて、狂言として扱われた

「赤井さん…大丈夫ですか?狂言って狂った言葉って書くんですよ?」

「はぁ…」

ここまで大きなため息を吐いたのは産まれて初めてじゃないだろうか。何度も昨日の夜の事を説明しても「自分はコナンくんがいなくて騙された思いを胸にお酒を飲んだら眠ってしまった」としか言わない。本当にかわいそうなものを見るような目で見てきたので一旦この話しは終わりにしよう。怖いもの、と聞かれても何も出てこなかったが、今一番怖いのはこの彼女だな
シャワーを浴びたりしている間に坊やが来たので彼女が会いたがっていた旨を伝えると、困った顔で「なんで?」なんて言っていた。それは俺のほうも聞きたい

「そうそう、安室さんと知り合いだって言う人が…」

「安室さんのキュッと引き締まったお尻がなんだって!?あ、コナンくんおはよう!」

「おはよう…。安室さんのお尻の話しなんてしてないよ…」

「なんでなまえが安室くんのお尻にそんなに反応するのか詳しく聞きたいな」

「お飲み物でも入れようかな!キッチンかりまーす!」

あさっての方向を見たと思ったら、そのままくるりと体を動かして飲み物を作りに行ってしまった。坊やがそんな彼女を苦笑いで見たと思ったら視線はこっちに戻ってきて先ほどの話に戻る

「その、安室さんの知り合いだって言う人がいるんだけど、どうも安室さんは知らない人みたいなんだ」

「ホー?女性か?」

「それが、男の人で…安室という人物を探しているんだが知らないか?ってこの間元太たちと遊んでる時に公園で聞かれたんだ。元太たちがポアロにいるにーちゃんじゃないのか、って答えたんだけどその時のその人が呟いたんだ…そこに――がいるのか、って」

コーヒーを作った彼女がこっちに持ってきて、テーブルの上に置いた。それからもう一つ自分のぶんも持ってくると坊やの隣に座って「うーん」と考えるような声を漏らす。坊やはバーボンという部分は唇を動かすだけにしていたのだが、彼女はまるで知っているかのように聞いていた。視線を彼女に向けると、コーヒーを飲んで俺からの視線に首を傾げる

「安室さんのお尻狙ってる人じゃないの?」

「なんでさっきっから安室さんのお尻を強調してんだよ…」

「良いラインしてるでしょ?撫でたくなるよね?」

「ホー?」

坊やを見た彼女がこっちにもう一度視線を送ってきたのだが、さっとすぐに逸らすとカップをテーブルに置いて俺との間に壁を作るかのように顔の前に両手を出して自身の顔を見えないようにとしていたが、俺が何を思っているのかわかっていてやっているのなら少しわからせてやる必要があるな
ただ残念ながら今は坊やがいるし、何も出来ない。少し彼女を睨むように見てやるものの、視線を合わせようとしないのでため息を吐いた。坊やは少し安室くんの周りを見てみるという

「あ、私も私も!」

「君はやめろ」

止めた事に批難めいた表情をされてすぐに彼女のiPhoneの音が鳴り、彼女が待ちうけをジッと見た後に電話に出た。その間もうそろそろ赤井から沖矢になっておかないといけないので沖矢になってから戻ると、彼女が荷物を持って立ち上がった所だった

「あ、沖矢さん。私急に仕事入ったので帰りますね。コナンくん、安室さんのところ行く時は私も誘ってね!」

「聞き捨てならないんですが」

「じゃ、お邪魔しました!」

「聞いてください…はぁ…」

颯爽と帰って行く彼女にため息が出た。送って行くつもりもあったのだが、それを必要ないと言わんばかりに走って行かれたこともあり、昼間だという事もあるのでそのまま見送った。まだ全部飲んでいないコーヒーを飲もうと改めてソファーに座るとコナンくんがこっちを見てきた

「沖矢さん…なまえさんの事が好きなの?」

「…昨日告白したんですけどね…酔っていて無かった事にされてます」

「あぁ…大変だね」

コナンくんに愚痴るなんてどうかしてる。コナンくんも若干彼女に気でもあるのかと思ったが、この反応を見るからにそうでもないらしく苦笑いをしながら労われた
酔っている彼女が可愛いと思えて酔わせた自分にも責任があるのだが、信じない彼女もどうかと思う。既成事実でも作って自分のものだって印でもつけておけばよかったか…あぁ、そうだ、それがいいな

「沖矢さん、なんで笑ってるの?」

「いえ。安室くんの件ですが、こっちのほうでも調べてみますね」

「うん、お願いね!それと昼過ぎに元太たちがこっちに来るかも」

「ええ、お待ちしてます」

コナンくんが外へ出たのを見ると扉を閉めた。
最後に一本煙草を吸って、それから彼らが来る前に煙草の臭いを消したりしないといけませんね…
比較的入られる事の少ない寝室でベッドに座りながら吸っていると、もう冷たくなっている彼女が寝転がっていたベッドの端を撫でた。困った人だな



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