▼私は罪な女☆
'その本屋に何も無いように見張っておけ。開店前と閉店後までだ。今日は営業してるかわからないが、片付けをしにきてはいるはずだ'
「わかりました。「おはようございまーす」あ、おはようございます…」
‘ 今のは?’
「店員のようですね…」
‘ ……お前今本屋の目の前にいるのか?’
「本屋の前の道の自販機の前にいますよ」
‘ なら、なんで挨拶された?’
「さあ…」
‘ …今そっちに行く。’
昨日の犯人たちがやらかした掃除をなぜ私がしないといけないのかほんとわからない。今度から警察の人たちも散らかしたものは片付けましょう、みたいなのを教訓みたいなのにしたほうがいいと思う。佐伯さんはもちろんお休みで、バイトの子たちも臨時で休みにしてあげた。どうせ今日一日営業できないし、一日かければ一人で片付けられない事も無い。どうせなら楽しくやろうと音楽をかけながらやっていたら、ロールスクリーンカーテンの向こうからこんこん、という音が聞こえたのでそっと覗いたらさっきお店のすぐそこの自販機にいた風見さんがいた。眉を寄せてこっちに何か言っているので、透明な扉に‘ うら’と書いた。あとでこの窓ガラスも掃除しよう…
風見さんがすぐに見えなくなったので裏に回って鍵を開けてあげれば風見さんが入ってきた。
「どうしました?今日は一身上の都合でお休みなんですが…」
「それをなぜさっき言わなかったんですか?」
「え?」
「…あなたに挨拶された時にお客様だと思ったのならそう伝えればいいんじゃないですか?それともあなたは道行く人に挨拶を?」
なんとなく口調が変な気がして首を傾げた。それから扉に立つ風見さんの横から顔を覗かせようとしたら、彼に邪魔された。えい、と抱きついて扉の外を見ればやっぱり安室さんがいた
「風見、情けないですよ。抱きつかれて怯むなんて…しかもバレてますし」
「す、すみません!!」
「安室さんおはようございます。なんでここへ?あ、とりあえず入ってもらって大丈夫ですよ、今日みんなお休みなので」
裏のカギはしっかりしめる。
休憩所に案内をすれば扉はちゃんと閉めて、風見さんと安室さんがパイプ椅子に座ったので向かい側に座った
「それで…いったいなんなんですか?」
「単純に、風見の事知っているのかと思いまして」
「いいえ?」
「ではあなたは誰にでも挨拶を?しかも電話している最中の人と」
「…い。いいえ?」
「そしてその急にドアガラスを叩いた男を、昨日襲われたばかりのこの場所に再び知らない人を招き入れる事を普通はしますか?」
「い、いえ…しません…」
「では、風見を知っているんですか?」
「いえ…」
助けてぇええええ!!!!!!ただ、そこにいた人がたまたま風見さんで口からポロッと丁寧なご挨拶が出てきただけなのにこの仕打ち、神様なんか私悪い事しましたか!?そこにちょっと知ってる人がいたから挨拶しただけ、しただけなんですよ。それがどうしたことでしょう、びっくりするわ本当!
もう上京して何回目かわからない汗が私の背中を伝っていく、何かあるたびに背中に汗が伝っている癖が出来てしまったら、これは本当に嘘なんてつけなくなってくる。
どうしようどうしよう、と頭の中で考えていたらガチャガチャという音が聞こえた
「鍵閉めたはずなのにっ…!」
私が慌てて席を立とうとしたが、安室さんが手を出して立とうとするのを制し、そして人差し指を立てて口元に当てた。風見が懐から物騒なものを取り出して扉の前で構える、安室さんはゆっくりと立ち上がると私の前に庇うように立ってくれた
トントン…という室内を歩く音が聞こえ、その足音が今自分たちがいる休憩所の前で止まった。ガチャリと扉が開くと入ってきたのは赤井さん、私が一気に肩の力を抜くものの安室さんも風見さんも構えるのは止めない
「鍵しめたはずなんですけど…」
「あぁ、あんなものは簡単に開く」
「そ、そうか…」
「赤井ィ!!!」
物凄く動揺するわ。赤井さんだから出来るっていうのならいいんだけど、他の人も簡単に出来てしまうんだって言うのならそれはもう鍵チェンジをお願いしたい。安室さんの背中が私の目の前から無くなったと思ったら赤井さんに拳を突き出していたのを、赤井さんにいなされていた
「落ち着け安室くん、君と争いに来たわけじゃない」
「では何しに?」
「なまえを見ていたら君たちが入って行ったのが見えた。この子はちょっと訳有りでな」
「この怪しいなまえさんの事でしたらそのまま捕まえさせていただきます。僕の正体を知って、そのままに!出来ないでしょう」
その会話の間にも二人は喧嘩を止めない。二人は、というか安室さんが一方的に赤井さんを殴ろうとして、赤井さんにいなされている感じ、廊下に積んでいたもう廃棄する本や雑誌や付録が倒れた
私は廊下に広がった雑誌の一つを拾い上げてそれで壁を叩いた
「おい」
ッパァン!!!!
という音が廊下に響くと、安室さんが目を見開いてこちらを見て動きが止まり、赤井さんも赤井さんで力を抜いてこっちを見てきた
「場所考えろ?なぁ安室さん?ここどこだ?私のテリトリーだな?散らかしてそれで?片付けてくれるんですか!?私が怪しいとか怪しくないとかどうでもいい、私は…本屋の店長です!!やる事いっぱい、それなのに…え?増やしにきたんですか?」
満面の笑みで捲くし立てるようにだが決して早くない口調で言ってのければ、安室さんよりも先に風見さんが片付け始め、それから安室さんも渋々といった感じで、赤井さんと一睨みしてからお方付けをし始めた。私は打刻するパソコンの前のパイプ椅子に座って片付けしている様を見張るつもり
「赤井!お前も手伝えよ!!」
「残念だが降谷くん、散らかしたのは俺じゃない」
「喧嘩両成敗ですよ赤井さん、早く終わらせて」
赤井さんがこっちを見てきたので視線は逸らしておいた。こんな時の私は全力で強気だと自分で思える、だいたい人の店の中で何してるんだこの人たち
ずっとここを見張っていても仕方ないので店内を片付ける事にして、少しずつ暖かくなり始めていた冷たいパイプ椅子からお尻をあげた。小さくため息を吐いた赤井さんが可愛い付録とかを拾って行く
――…イイ!!!!
「じゃあ私店内片付けてきますので、きっちり綺麗にしたら報告しに来てください」
「はい…」
安室さんと風見さんが返事をしてきたので、そのまま店内に入ってレジ周りを片付けし始めた。音楽はもう一周し終わったらしく止まっていたので、そのまま音楽は切ったままにして。ついでにレジ周りの整理整頓だけ終わらせてしまえば3人が揃ってこっちに来た
何この異様な光景、あ、させたの私か
「ついでにピッカピカにしておきました」
「あぁ、滑るから気をつけろ」
なんでそんな赤井さんまで安室さんのお墨付きみたいな言い方をしてきた…かなり笑えるぞ。
「すみません…降谷さんワックスかけるって聞かなくて…」
「よく…見つけましたね、ワックス」
「えぇ、ぬかりなく」
「怖いわ」
裏は移動してきたものや、まだあけていないものが多かったり、自分一人で棚に運べないものが多いから少しずつ片付けていた、それをワックスをかけたという事は全部棚にでも入れたのだろうか。しかもどや顔で言ってくる安室さん、面白いけど怖いよ
「どうせならこっちも手伝います。風見、ここはもういい、お前は今日は帰れ」
「は?しかし」
「なまえさんへの質問は、不本意だが事情を知ってそうな赤井を交えて聞く。風見がいたら都合が悪い事も出てくるかもしれないからな」
「わかりました、それでは」
風見さんが帰っていくと、私は掃除を安室さんに任せてPOPを拾って元の位置に戻したりしていき、綺麗にした頃に店内もピカピカになっていた。赤井さんはというと、ずっと私のそばに座って行動を見ていただけで手伝うとかじゃないけど、ファイルに入れる作業とかを頼んでみたらやってくれたりした。FBIと公安を足で使う私、罪すぎるな。うん、今更ながらごめんなさい。くせになりそう
改めて休憩室に入ると二人に、主に安室さんにお礼を言った。安室さんにさっき色々とぐちゃぐちゃにした件を謝られると、笑って許してあげた
それから赤井さんが私の前世の話し…正確に言うと前世でも何でもないんだけど、その話しでもするのかと思ったら何か嘘が次々と出てきた
「なまえは、とある事がきっかけで色々な情報を不本意ながらも入手してしまったFBIの保護監視下におく人物だ。そのとある事はFBIの今後にも関わる事だから残念ながら君には説明出来ないが、少なくとも君たちが警戒しないといけない人物でも無ければ君の正体を誰かにバラすような人物でも無い」
「なるほど…つまり詮索はして欲しくはないが、この子を信じろ…という事ですか。それは虫が良すぎる話しなんじゃないですか…?」
「この子の機嫌を損ねると、全世界に色々な情報が飛んでいく。さっきのを見ただろう?あまり怒らせないほうが得策だぞ」
「……」
え。そこで黙らないで、私そんなに怖い子じゃない!!
しかもよくも赤井さんも嘘がベラベラと出てくるよ…とある事がきっかけって何…あれ、もしかして嘘はついては…ないのかな。
「その情報が流される前に捕まえればいいだけの話しだろ」
「もう一度いうがFBIの監視下に置かれている。君が捕まえようとするのなら俺以外に、他のFBIも出てくる事になるぞ」
「くっ…」
目の前で広げられているこの会話が、まるで自分の事じゃないみたいに思える
一言で言うなら物凄くかっこいい。赤井さんは私の事を考えてそういった嘘をついてくれているというのに、私はそんな赤井さんにズキュン、バキュン
ライフルで心臓狙い撃ちされているような感じ。だって何か真剣にしゃべってる姿がかっこよくて!
結局安室さんはため息を吐いてとりあえずの事情はわかった、という感じだった
赤井様様〜っ!赤井さん味方につけるとすごいなぁ…
prev / next