「あーー…なまえー…」

カタカタという音がしばらく続いたと思ったら上司の口から出てくるのは、その上司の恋人の名前。それからしばらくフリーズした後にまたカタカタとパソコンを打ち始める。現在彼がやっている任務は黒の組織までとはいかないが、中々危険極まりないもので、彼含めて上層部で作戦会議と報告会もある程。ほぼ同時進行で進められている三つの作戦を完遂しなくてはならない、ただ報告書もだが会議用の書類も作らなくてはいけなくて、ほとんど自分も彼も上層部もほとんど退庁する事無く缶詰状態

「あぁぁあ…なまえに会いたい…だいたい人の国で所構わずドンパチしやがる他の国どうにかしろよ…FBI…赤井を呼べ。あいつに全部任せてやる…なまえに会いたい…」

机に突っ伏してブツブツ言い始める彼に、新しい書類を持ってきた部下が彼の机の上にその書類を音を立てて置くと「あ、さっきその彼女見ましたよ」という爆弾を投下したせいで目の前の机に顔を突っ伏していた彼が、顔を上げた。さっき、という事は夕方から夜にかけてか、それなら仕事帰りの降谷さんの彼女、みょうじなまえを見た事になる

「あ?」

「公園に…高校生の男の子といましたよ」

「は?誰?新一くん?」

「その新一くんという方が誰かは知らないのですが…降谷さんの話しをしていたと思いますよ。」

「なんて言ってたって!?」

食いつく上司にため息を吐いた。もう目が血走っていて見慣れているこっちまで怖いと思ってしまうほど。肩を思い切り掴まれた部下は一度驚いたような顔をするものの、彼女の事を賛成している部下にとってはそんな彼を見るのが嬉しいようで、照れたように笑っていた。照れる意味

「まだ1ヶ月くらいしか経ってないのに寂しいって言ってましたね」

「んんんん…俺も寂しいよなまえー!!風見、俺帰「座れ」

そのまま退庁しようとした彼の額を勢いよく押してもう一度座らせた。そのまま彼が椅子に座ってくるくると2回ほど回る。その彼女が寂しがっているという話しを聞けただけでいいのではないかと思う、だからこそさっさとこの仕事を終わらせればいい

「ちっ…」

この人は…

「降谷さん、あなたの行動でみょうじなまえが危険な目に合うかもしれないんですよ?」

「わかってる」

急に強い目に変わる彼が、ため息を吐いてまた仕事をし始めた。
それにほっとして自分は自分の仕事をする、彼はそろそろ疲れが限界だろうと思うので寝かせなくてはいけない。夜の会議が終わってから家に返した。その5時間後くらいに彼は帰ってきた。もちろん自分もその間仮眠を取っていたので頭はすっきりしている
無言で自分の席にすわり、無言で仕事を始めた彼、少しはまともになって帰ってきたのか、ちゃんと眠れたのかどうかはわからないが、昨日よりも隈は取れているように感じる

「降谷さん、次こっちです。」

彼は書類を終わらせてからすぐに現場に出なくてはいけないので、ほどほどの重要な書類だけを彼に渡していた。無言だった彼が頭を抱えた

「どうしました?」

「家に帰ったら…なまえの匂いがした…」

「はぁ…」

「来てたんですよきっと。俺に会いに」

悪化している気がする。

「気のせいじゃないですか?」

その言葉に彼がため息を吐く。そりゃ、布団とかで寝られれば彼女の匂いはついているかもしれないが、ただ家に来ただけで匂いがするわけが無い、自分の言葉になんの反論もして来ないということは自分でもどっちかわからないのだろう

彼女との事を認めたわけでは決してないが、ギスギスしてて近寄り難いあなたよりも
今の人間味がある降谷さんのほうが
自分は好きだったりする







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