季節はいっきに秋を飛ばして冬…ちなみにあの後は覚悟していた通りに仕事量が半端無いが、一応評価もされた。評価はされたが、やっぱり仕事量は変わらなくて、一週間に一度帰っても帰れたのが昼間だったりすると、彼女も仕事でいなかったりして会えない日も出来たりするし、事務だけしてれば良いっていうわけでもないから結局の所忙しかった。なまえ欠乏症が始まりそう、彼女は俺のそんな気持ちをわかっているのかいないのか、メールでは無く手紙をテーブルの上に置いていてくれたりして、俺の引き出しの中に彼女からの手紙が増えて行く。勿論ちゃんと返事は返す。返事はいらないって毎度書いてあるけど、仕事中にでも見たりして休憩の合間の俺の癒しとしてる

それでも忙しいのも頑張って仕事をこなしていればそのうち落ち着くので、秋にはいつも通りのいつものメンバーで紅葉を見に行った
12月に入って、イルミネーション点灯のテレビをホットココアを飲みながら彼女と見ていた

「イルミネーション…」

「好きですか?」

「冬が好きですよ。イルミネーション見ながら何か食べるのが好きなので、出店があればなお良し!」

彼女は食べないときは食べないが、飲みに行ったりこういった所に行くと大丈夫かって思うくらい食べるし飲む。イルミネーションに連れていってあげたい所だが安易に約束が出来ないのが俺の仕事の辛い所…というか俺がなまえとクリスマスデートがしたい。あわよくばサンタコスでもしてくれていい。約束したいけど約束ができない!開けててとも安易に言えない、もどかしい!もし新一くんと蘭さんが何も無かったらきっと蘭さんと約束するんだろう…この件に関してはもうどうする事も出来ないのでその日が近づくのを待つしかない。

クリスマス少し前はありえないほど平和で、本気で怖くなった。そんな俺の予想も部下の予想も大当たりでクリスマスイブの前日潜入先で、うっかり事件に巻き込まれた。最悪だ
立てこもり事件で、ほとんど一日その中にいっぱなし、大きく動いたりも出来なければ動いてくれる人物も今はいないわけで…となれば外にいる警察に任せるしか無かった
開放されたのは夜、事情聴取をすり抜けて、潜入先の書類は後回しにして巻き込まれた事件の詳細と報告書だけを提出して、家についたのは日付がかわる直前だった
外から見てたけど電気がついていないので眠っているか、出かけているかのどっちか、連絡はしたのだが返事が無かった
家の中に入り、靴を脱いで廊下を歩いていると後ろから飛びかかられた。なまえだってすぐわかるけど、どっかの道ではやって欲しくないな

「起きてたのか…」

「降谷さんが仕事終わったら帰るって言ってたので!」

「もう寝てるか、出かけているかと思いましたよ…返事無かったし電気ついてないので」

「こんな時間におでかけしないですよ。電気はね、ちっちゃいクリスマスツリーを買ってみたので!」

離れた彼女が後ろから押してくるのでリビングのほうへ向かったら、リビングに入らなくても見えた。ピンクや青やオレンジや緑…色々な色がリビングへ通じる扉のくもりガラス越しに見えるから。入って見えた光ファイバーの白いクリスマスツリー、これを彼女が一人で飾り付けていたのかと思うと可愛いだろ。見たかった…というか一緒に飾り付けしたかった

彼女のほうを振り向くと、トナカイだった

「…なんでトナカイチョイスしたんですか!?サンタは!?」

「え、さ、サンタ…?トナカイのこれ貰ったんですよ、会社の飲み会で」

「トナカイにしても…いや、これはこれで可愛いんですけど、もっと違うのがあるでしょう!」

なまえが着ているのは着ぐるみのようなやつで、これはこれで似合っているし可愛いのは可愛いのだが…いや、俺が求めてるものを会社の飲み会で着ろって言われても困るのでこれでいいのか。しかも彼女がお尻を向けてきて「尻尾もついてますよー」なんて笑うし、可愛いにも程があるだろう。これは良いクリスマスプレゼント!

「可愛いですね!もうこれでもいいです!」

彼女をぎゅっと抱きしめれば「れーさんも着ますか?」と聞いてきた。それは全力で遠慮したい…クリスマスプレゼント、彼女にはあげた事が無かったし、つけるかどうかはわからないがネックレスといった類のものはつけているのを見た事が無いので、それをクリスマスプレゼントに買って来た。三日月に青いダイヤと普通のダイヤがついているやつ

「あれ、あ、あった」

彼女を抱きしめていた腕を放せば、彼女が離れる。箱に入れられそうになったのを箱は別にしてもらって小さな袋にいれて胸の内ポケットに入れていたんだった
クリスマスツリーのほうに歩み寄る彼女を呼び止めたら、こっちを振り向いた

「はい?」

「プレゼント…を、つけますのでジッとしててください。あ、髪あげて」

「あ、はい」

袋からネックレスを取り出して彼女の前からつけた、つけた後に彼女の首から手をどかせば彼女が髪をおろし、なまえの首元に光るネックレスに口付けした

「うん、よく似合ってる」

「あ、ありがとうございます…びっくり…しました」

「なんでです?アクセサリーは指輪以外つけてないから、つけたくない人だと思ったんだけど…指輪以外にも首輪もつけておこうと思って」

「これ首輪ですか」

「首輪です」

肯定すると、彼女がクスクスと笑った

「私ネックレスとかお風呂とかでもつけたりして、よく錆ついちゃってたりするんですよ…だから高校の時からつけて無かったりします」

「それプラチナなので、錆ないですよ」

「…たか…「くない」

彼女が疑うような視線をこっちに向けたきたので、笑って返すと眉を寄せられた。ついでに結婚指輪と一緒につけたままの婚約指輪に触れて「これは?」と問いかけてきたのでそれにも首を振った

「給料3ヶ月ぶんが妥当なんでしたっけ…?そうなると…多分なまえが好きじゃない域に到達します」

ブランドものね。彼女が眉を寄せて考えるようにしていたが30秒ほどで考えるのをやめたらしく、再びクリスマスツリーのところに戻って、その場にしゃがみこむ
彼女は俺におねだりなんてして来ないし、むしろ光熱費とか生活費も半分以上渡してくる、基本的に自分のほうが家にいるのが多いという理由で。それを仕方なく受け取ってはいるが、手をつける理由も無いのでそのまま貯金
それとは別にクリスマスツリーとか…言えよ、もっと大きいの欲しいとか…パソコンも新しいの買ってあげるのに自分でお金貯めてるし
とりあえず、何も頼ってくれない。クリスマスツリーのところに正座した彼女が下に置いてある箱を指差す

「あの、これ…去年の降谷さんの誕生日プレゼントと、去年のクリスマスプレゼントと…今年のクリスマスプレゼント、です。いつも貰ってばかりいるから…お返ししたくて」

泣いてもいいかな。俺の妻なんて可愛いんだ
しかもトナカイ、トナカイが正座してプレゼントを指差す姿を可愛い以外どうにも言いようが無いだろう







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