彼女が高校へ潜入する数日前から、彼女は公安へ何度も来ていた。風見に会いに行く事を止められていたので何をしているかは具体的にはわからないが、問題集を解いたりして、とりあえず高校生の時に受けた授業の数々の問題を呼び起こしているらしい。
そんなものなら俺だって教えられるのに、というよりも俺の膝の上で問題でも解いててくれればいいと思う。…俺が仕事にならないか

公安の自分の部下たちの書類を確認したり直させたりするのに、自分の仕事場と行ったり来たりをするのが面倒なので公安課にいた。愛用している10秒チャージの飲み口の部分を歯で噛みながら頬杖をついてボーっとしていた。一応手にはペンを持っているが、書類が進まない、しばらく眠っていないせいだろうか

「自分のワイシャツ着てる彼女っていいですよねー」

「あぁ、わかりますわかります。太ももの半分くらいまできてるのが凄くきますよね」

なんて声が聞こえてきて、自然と目線がそっちに向かった。
そういえば彼女は加賀くんの服は着たくせに自分のを着てくれないとか言っていたのを思い出した。他の男のは着て自分のを着ないっていうその心理がわからない
嫉妬されたいとか?いや、彼女は嫉妬されたい時とかも案外すぐわかる。
見ていたら丁度その部下と目が合ったので呼んだ

「はい、降谷さんどうしました?」

「他の男の服は着るのに、俺のを着ないその心は?」

「は…?あ、えーっと…好きじゃない、とか…」

「嫉妬してほしいとか?」

「あぁ、ね…あ、逆に好きすぎるとか。そう言ったら俺の彼女、俺の事そんなに好きじゃないって事になるな」

あははは、なんて笑っている部下たち。どれもこれもピンと来ない
ワイシャツとは言わないが、自分の服を着てるなまえ。うん、見てみたい
じゅっと飲み終わったゼリーをゴミ箱に捨てると前に立っている部下たちから質問が返って来た

「ところで降谷さんって彼女さんいるんですか?」

「え、有名じゃん…誰も何も教えてないのに全てを把握している降谷さんが溺愛してる」

「へぇ、どんな人なんですか?」

目の前で会話を始めたが特に何も気にならない、それよりも廊下を走る足音が聞こえてきたので彼女でも入ってこないかと扉を見ると、扉が勢いよくノックされて誰も返事をしていないのに扉が開いた。入ってきたのは加賀くん

「失礼します!みょうじ知りませんか!?」

「……人の彼女のお尻追いかけるのやめてもらっていいですかね。タダ働きさせるくらいなら金払え。それとなまえがいるなら俺の所に連れてきてもらえますか」

そういい残すと、お尻を追いかけるのをやめろと言ったのに、失礼しましたと挨拶をしてからまた探しに行った。人の話しをちゃんと聞け。目の前の部下が驚いたような顔で見ていた。

「降谷さん、彼女さんどんな人ですか?」

今度はこっちに向かってもう一度同じ話しを振ってきたのでとりあえず「天使」と答えておいた。あぁ、だいぶ自分参ってるなぁ、なんて思って部下に下がるように伝える

これがつい昨日の事で、もう日付が変わってだいぶ経っているはず。ずっと引きこもってパソコンや文字と睨めっこしていると頭がおかしくなってくるし、たまに文字が浮かんで見えるくらいまで行く。集中し続けている間はいいがそう簡単には集中し続けていられないので、休憩を交えながら仕事を進めていった

「ちゅーしたいなぁ…」

とりあえず俺の今のテンションがおかしい。自分ではわかってるがどうにも抑えがきかない
ゼリーを飲みながら呟いていると、目の前に立っている風見が怪訝そうな顔で見てきた

「ゼリーよりなまえにちゅーしたい」

今日も彼女は公安に来ているのだろうか。

「あの、降谷さん…実はそこの廊下で怪しい…女性に会いまして、公安にいるので変な人ではないんでしょうけど。降谷さんに渡してって言われて、最初断ったんですが」

その辺でその部下に視線を移した。風見はため息を吐いてこっちの様子を見ていた

「その女性という人の真似をしろ」

「は!?」

「どんなふうに言われたか真似しろって」

「あ、あぁ…えっと…降谷さんまた10秒チャージしてる気がするのでこれ渡してください、ちゃんと味見しましたし毒味もばっちり。彼にみょうじなまえですって言えば多分受け取ると思うので…って」

「はぁー…ちゅーしたい」

「え!?俺にですか!?」

「バカ。その女性連れて来い」

「えっ?で、でもさっき帰ろうとしてて」

「早く」

部下が持ってきたその小さな、フルーツでも入ってるんじゃないかと思えるくらいの小さな花柄のタッパ。それを机に乗せたまま風見が俺に向かって何か言ってくるのを右から左へと流していった

しばらくして廊下からぎゃあぎゃあ聞こえる

「ちょ、ちょっと放して!私家に帰ってたまってたクエストやらないといけないんですってば!やっと勉強終わったのになんでまたリターン!」

あぁ、乱暴するなって言い忘れていた。廊下に行って注意しようとしていた所を風見が先に行って彼女を連れてきた。手首を掴まれて引きずられてきたらしい彼女は、物凄く不機嫌そうに自身の手首を摩っていた

「お前」

「は、はい」

「覚えておけ、彼女は俺の彼女だと。連れてこいとは言ったが触っていいとは言ってない」

「はっ!?す、すみませんでした!」

自分と、それから彼女に頭を下げると、彼女が風見よりも先にこっちに走ってきた
絶対怒ってる顔だけど、とりあえず抱きしめた

「ちが、怒ってるんです!!!ちょっと一回ベチッてさせてください!!そろそろ本当に腹たちます!!」

「人前だからって照れなくていいですよっ!!!!卵焼きなんて作ってきてくれちゃったら食べるしかないじゃないですかっ!!なまえが食べさせてください」

「だっ…誰かこの人仮眠室連れていってください、セクハラッ…この人お尻触ってます!風見さん、この人逮捕してくださいっ!!」

「俺も出来るならそろそろしたいですね」

抱きしめたついでに暴れる彼女のお尻を撫でたら体が一度揺れた、その瞬間に俺の首を腕で押してくるあたり、なまえは結構戦えるんじゃないかと思う。まあそんな事はさせないけど
とりあえずしばらく公安に引きこもりっぱなしなのを忘れて暴れる彼女を膝に抱きかかえ、彼女はその俺の上に膝をついて抜け出そうと必死にしているが、彼女のお腹に自身の顔を埋めると諦めたように大人しくなった

「あの人が降谷さんの彼女です」

「天使…天使ですか?」

そっちのほうから部下の話し声が聞こえてきて、なまえはため息を吐くと力を抜いたので、もう暴れないだろうと少しだけ腕を緩めてあげた







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