自分たちの小さな結婚式が終わってから数日後のこと、新一くんから電話が来た。蘭さんと園子さんが自分たち友達とだけでも結婚式とまではいかなくても、結婚お祝いパーティーをしたいという。なんとも彼女が喜びそうな案件だし、友人だけだというのなら許可してもいいのかな、彼女が喜びそうだし。2回言いましたが。彼女が自分のために何かしら諦めているなら、俺が求める。俺が求めたら多分彼女は受け入れるだろう
「降谷さん、彼女さんと結婚してから作業スピード早いですよね」
「そりゃ家で愛妻が待ってますもんね」
そんなからかっているような声を流して仕事を終わらせた。少し定時は過ぎたので車に乗って急いで帰るとちょうど彼女がお風呂から出てきた所で、良い匂いのパジャマ姿の彼女が歩み寄ってきた
「おかえりなさい、ご飯の前にお風呂入ってました。れーさんも先に入りますか?」
「なまえっていう選択肢はありますか?」
「ありません」
まあ、なんかどうぞなんて言われる事は無いっていうのはわかってるんだけど期待を込めて聞いた結果がこちら。あまりがっついても良くないと思って実は彼女としばらくしていなかったりする、本当なら毎日いただきたいくらいだがそんな事していたら今度こそ本気で引かれそう
とりあえず彼女が待っていてくれたようなのでご飯を食べる事にし、スーツを着替えてリビングに行った。彼女がご飯を温めていたので手伝いに行く、彼女のご飯を食べるのも習慣みたいになっていて、最初こそ彼女はびくびくしていたがそれも…まだびくびくしてるな。ご飯が並んでいただきますをすると、先にこっちを見てくる
「大したもの作れなくてごめんね!美味しくないかもしれない、でもなんにも入ってないから!」
「せめて愛情は入れてくれ」
「感情は入ってるよ!頼むから美味しくなーれー…って」
「どんなふうに?」
「こう、うーーーん!って」
彼女が料理に手をかざして目を瞑って力を込めた。だめだ、彼女が可愛すぎる、やっぱいただきたい。しかもやった後に自分は何をしているんだというように、顔を背けて食べ始めた彼女に余計に惚れる
くすくすと笑いながら食べ進めると、彼女が無言で目を伏せながら食べていたので怒らせている気がする。片付けを彼女に任せてお風呂に入った、片付けくらいさせて欲しいが臨機応変と言われたら断りにくい。お風呂から出てきたら彼女は、仰向けにソファーに寝転がって携帯用ゲーム機で遊んでいた
「また乙女ゲームとかいうやつですか?」
「うん」
それでも自分がくると彼女はゲームをやめる。これはいつもで、そのまま起き上がろうとしてきた彼女の上に覆いかぶさるようにすると彼女の顔が引きつった
「蘭さんと園子さんが…今度の日曜日パーティーをやるから来てくださいって言ってたけど」
「い、行く」
二つ返事で了承した彼女。もちろん行かない以外の返事は無いんだろうが、彼女は自分の用事がそれだけだったのかと思ったようで、安心したように息を吐いた
顔を近づけると彼女が肩を押してきたが、その手を退けると彼女に口付けをした。優しく、ただ触れるだけのキスをしたら安心したようで力を抜いたが、ちょっとだけ彼女の唇をぺろりと舐めたらまた力がこもった
彼女を解放して笑えば、彼女が拗ねたように唇をへの字にしていた
「遊ばないでください…」
「ごめん。なまえが可愛くてつい」
下に移動して彼女のお腹に額をすりすりと擦り付けると彼女が笑う。彼女の上から退いてあげれば彼女が座ったので、その隣に座り直すと彼女が珍しく肩に寄りかかってきた。いつもは遠く離れて行くのにどうしたのかと彼女を見やると眠たそうに、ゆっくり瞬きしていた
「眠い?」
「うん。あ、でも違うの、寝不足とかじゃないから…あと2日くらいで治りますし。ちゃんと寝てるし平気です」
なんとなく察した。寝かせたほうがいいのかと思ったが、俺の腕にごろごろと頬をすりすりしてきたりする彼女が全力で可愛いのであえて何も言わない事を決め込む。彼女の頭にキスをすると、彼女がふふっと可笑しそうに笑う
彼女の指に指を絡ませて、手を繋いでるようにしながらお互いがお互いに寄りかかった。テレビも何もつけていないから、何の音も聞こえてこないがそれが逆に心地よくて、彼女の温かみを感じた。いつもよりも体温が高く感じる彼女、そういえば彼女がそれになってる時に会った事が無かったからこんなに温かいのは知らなかった
そのうち本気で眠たそうだったので歯磨きをして寝る事にし、彼女を腕枕にしていつも通りに彼女を抱きしめる
「おやすみなさい」
「おやすみ。出来ればおやすみ零さんって語尾にハートつけて言って欲しいんだけど」
「んー…おやすみーれーさん」
ハートはついて来なかったし、ちゃんとした発音で零とは呼んで来ないが彼女が俺の胸に擦り寄って抱きついてきたので死ぬほど満足した