ホテルで彼女を待ってる間…風見ばりに胃痛に見舞われた。来なかったらどうしよう、という不安しか無い…自分が自信たっぷりな人種だというのは自分ではわかっているつもりだが、彼女が絡むと途端にこれだ
そもそも彼女は俺を不安にさせすぎだろ…まあ、今回不安にさせてたのは俺だろうけど…それにしたって何も連絡も無しに約7ヶ月程経っているのに、彼女の心が変わってない。という自信が持てる方がおかしいだろ、そうだろ
そんなわけで今胃が痛い…

「風見…胃痛が痛い」

「胃痛がいたっ…?安心してください、彼女新幹線にちゃんと乗りましたよ」

「そうか…」

「降谷さーん、今彼女さんナンパされてましたよー」

「バカっ!!降谷さんを刺激するな!!」

「風見…そいつ連れて来い」

「あ、今日みょうじさん可愛い格好してましたよ」

「バカ、なまえはいつも可愛いだろう」

上手くごまかされた気がするが、とりあえずは彼女がこっちに向かっているという事なのでそのまま放っておいて電話を切った。それから逐一彼女の行動を伝えさせる
情けない事をしている男がここにいます。知ってるけど、権力を使用する事に決めました
ホテルの人に彼女が来た時の事を伝える。そういえば風見たちに彼女は荷物を持っているのか聞いていないが、まあ、持っていないだろうな

彼女がついたという報告を貰ったのでしばらく待てば来るだろう。ソファーに座ったまま彼女を待っていた、この時間が凄く嫌だ、電車の中で足踏みする子供の気持ちがわかってしまう。彼女が来るのか来ないのか、心臓がふわふわした感じで気持ちが悪い
いや、来るとはわかっている。わかっているから早く会いたいという気持ちが先走って仕方ない

物音は聞こえたが、何分テラスに続く窓を全開にしているため他の所の音も聞こえる、それが何回もあったので彼女だと思わないようにいた。風の音だけに耳を澄ませていたら、集中しすぎて本当に彼女がきたのに気づかなかった

「あ…むろさん…?」

あぁ、ずっと聞きたかった声だ。安室呼びだけど
俺は平静を装ってそれこそ安室のように返事を返す、すると彼女が急いでこっちに歩み寄ってきた、拒絶されなくて良かった…と思ったのは本気で内緒の話し。通り道にあった椅子の足に自分の足を引っかけて転びそうになった彼女を抱きとめた、なまえだ、本物のなまえ、本物の彼女の匂いと知った抱き心地。ただ少し…お腹周りが細い気がするが

彼女が泣いてくれた事にはめちゃくちゃニヤニヤした。彼女を抱きしめてこっちの顔が見えてないのをいい事に全力でニヤけた
彼女が離れようとするので顔を引き締めて涙目の彼女を見る、彼女が目を擦るのでその手を退かして器用に涙だけを舌先で舐めた
彼女の涙は当然ながらしょっぱかったが、それを伝えると驚いた顔をしていた彼女が笑った。笑い顔も、この体も…全部全部俺の…どうせなら閉じ込めて大事にしまいたいくらいの…でも自由に生きてる彼女が好きで、手を伸ばして抱きしめようとしてもするりと抜けるのに、最後には手を差し出してくれるそんな彼女。
逆にこっちが彼女を求めずに、傷を抱えて無理をしていると歩み寄ってきて頭を撫でて抱きしめてくれる…、無理しないで頑張れと背中を押すくせに彼女が背中を向けて我慢して泣く
彼女が愛しい。もう一度力いっぱい抱きしめた

全部欲しい、本当に全部
キスだけじゃ足りない、そうじゃない。それでも彼女に自分にしか出来ない事がしたくて、顔を寄せたら、彼女が背伸びをして一緒に顔を寄せてきた。彼女の腰を支えるようにして持つ、もっと、もっとと言うように彼女とのキスを深くしたくなる。彼女が腰を引いた、彼女の声からくぐもった声が出てきていて、それが自分の鼓膜をくすぐってどうしようもなくめちゃくちゃにしたくなる。
彼女を押すようにソファーへ倒せばキスを拒まれた
彼女の指先が自分の手に触れて、困った顔をしてる彼女。可愛すぎだろ、蘭さんじゃなくてなまえが天使

「ちょっと、待ってください…えっと、降谷さん?聞きたい事がいーっぱいあるんですけど」

「俺はしゃべるよりも先になまえにとーっても触れたいんですけど」

彼女の言い方を真似して言えば、頬を膨らませて怒ったような顔をする。その頬に噛み付いていいかな
でも彼女に逃げられるのも嫌なので我慢して謝ったのに、その心の篭ってない謝罪に彼女は気づいているようだ。

「ちゃんと答える」

そう伝えたのにキスをしたら、彼女がまた怒った。彼女は怒ってるだろうが、こっちとしては誘ってるようにしか聞こえない甘い声

「ん…こ、たえるって…言った」

「どうぞ?」

「キスされたら聞けないじゃないですか!」

あぁ、可愛い…。わざと怒らせたい

「じゃあキスはしない」

その代わりにイタズラでもさせてもらおう。そう思ったのも束の間、彼女が自身の頬に触れてきて泣きそうな顔で額を合わせてくるのでそれが愛しすぎてやめてあげた。
彼女といると、彼女の全てが愛しい、行動も声も、全部…だから自然と自分の顔が緩んでいるのは知っている

彼女を膝に乗せてる隙に、クッションの下に先程彼女が来る前に隠しておいた指輪の箱を取って中身だけ出した。彼女の指をしばらく触っていたのには意味は無く、ただ触りたかっただけ


「安室さん?」

「返事しないからな」

「れ…いさん?」

「ん?」

彼女に名前を呼ばれると愛しすぎて辛くなる…でも集中するべきは指輪
彼女の左手の薬指に指輪を滑り込ませた。彼女の指なんて測らなくてもわかる、するりと入ってすっぽりとおさまったが彼女は気づいていないらしい。そのまま彼女の指に指を絡ませた
本物かどうか疑う彼女に軽口を叩くのが楽しくて仕方ない
彼女をからかっていたが、ちらちらと髪から耳がのぞくので甘く噛んだら彼女が声をあげた。これ、この声、俺しかしらない声…やばいなぁ…

彼女が頭を勢いよく下ろしたと思ったら、まだ気づいていなかった指輪に直撃したらしい。それはもう痛そうだった…
彼女がそれを戸惑ったように見て、その指輪の真意を確かめ始めた。なんでこうも伝わらないんだ…

「んー…」

困った。いや、困ったも何も…自分がちゃんと言わないからか…1回言ったんだけど

彼女にやっと言えたその一言

ひってなんだ。ひって…
なぁ

結局何度かのやり取りのあとに受けてくれた。
息を飲んだ、やっとだった…本当にやっと、自分の手の中に入っててくれる







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