「ほ、他には何か…」

問いかけてきた部下のほうを一瞥すると、小さく息を吐いた。

「なんなら日焼け止めでもなんでも塗ってあげますし…。別に日焼けしたら日焼けしたで夜に水着の跡がついている姿も見れるわけで…まあとにもかくにも触りたいですね、今すごく欠乏症…あぁ、触りたい、なまえの幻が見える」

扉のほうから顔を出す彼女をみつけた。それは物凄く怪訝そうな表情をしており、よく見る彼女の顔だ。幻だと思っていたら「本物ですね」と言われたので勢いよく立ち上がる

「楽しいですか?仕事するか寝るか食べるかしてください」

彼女が食べていいといううれしい一言をもらったので彼女に歩み寄っていくと物凄い勢いで止められた。なんだ、そういう意味じゃないのか…
彼女に寝てくれと言われたので、先ほど眠った事を教えたのだが、彼女は信用してくれないし、30分寝たというと「足りないですよ」と全然引き下がってはくれない。
ただ彼女が飲み物を買いに行こうと珍しく誘ってきたので、部下たちに「お疲れ」と言い残して彼女と自動販売機のある場所へ行った

飲み物を買った彼女の隣に並んで座っていると、彼女の髪の匂いが自身の鼻腔をくすぐり、安心して大きな欠伸をもらした。彼女が大人しくしているので、多分そのまま寝て欲しいのかと思っているのかもしれない
彼女の肩に自身の肩を乗せたら本当にいつの間にか眠っていて、途中で彼女が身動ぎをしたので起きたが、彼女側がぽかぽかと暖かくてもう一度彼女の肩に頭を乗せた
再び自分は眠っていたようだが、頭にとんっと何かがあたり目を開けると、そこには自分の頭に寄りかかって眠っている様子の彼女がいて、肩のかわりに自分の腕で支え、手へと移動させて少しずつ彼女と距離を取っていき自分の膝の上に彼女を乗せた。

結構動かしたつもりだが彼女は穏やかな寝顔をしていて、可愛い。
彼女の寝息を聞いていると、再び眠くなってきたのでそのままの格好で眠ってしまった
そのうち彼女が身動ぎをしたのに気づき、起きたんだろうと思ったまではいいが、凄く視線を感じたので笑ってしまい目を開けた

「そんなに見られるとさすがにはずかしいですね」

「もう起きてる事に驚かなくなりました…」

「起きたのは本当に今ですよ」

彼女のおかげで頭がすっきりした、もしかしたらトータルで1時間半ほどはねむっていたかもしれない。自分たちがいる事で他の人が買いに来れなかったかもしれないが、こっちとしては頭がすっきりしてありがたい限りだ

膝の上から彼女の頭が退くと、いっきにそこが寒く感じる。
謝罪をする彼女に笑っていると、膝枕を返してもらうためにわざとやったのではないか、と彼女が問いかけてきた。もちろん、それもあるが、単に彼女を見ていたいだけでもあったので否定も肯定もしないでおいた。

その後彼女は自分が心配で見に来ただけだというので、引き止めたのに帰ってしまった

風見も仮眠室で眠っていたらしく、先ほどよりも元気な姿でこっちに書類を持ってきた。良い迷惑だ

一応お祭りに行けそうな目処がたったのでとりあえず仕事を途中まで終わらせて帰って睡眠を取り、万全な状態で再び仕事をこなした。彼女に祭りの誘いをすると、ちゃんと行くと言ってくれたのに心底安心した。彼女はデートがしたくない人種ではどうやら無いらしい、確かに室内に籠もっているような感じもあるが、どちらかと言えば外で蘭さんとかと遊んでいるイメージが強い




当日、彼女に浴衣と言われたので買って着ていった。人ごみの中彼女の姿を探す、ついたという連絡をもらったからわかりやすい場所にいるだろうと思って柱や端を探す。
そこで彼女だと思う人がいたので歩み寄っていった、彼女を間違わない自信があったのだが、隣に並んでから彼女じゃない?って一瞬思った、そのくらい彼女がいつも以上に可愛くて、物凄く動揺した

こっちを見上げてくる彼女を見ても、やはり違う人だと疑った。
まず自分が可愛いと思っている時点で彼女には違い無いのに、それでも疑った

「え、何か変ですか?」

「いえ、その逆です。とっても可愛くて綺麗で似合ってますよ…。」

もっと気の利いた事いえないのか自分。いや、でもそれ以上の言葉が見つからない、見つかったとしても公共の場で安室が言って良い台詞でもなんでもない気がする
彼女が少しだけ離れてしまったので、彼女の手を掴む。何かしただろうか、忘れ物か?と思って彼女にどうしたのかと問いかける

「ちょ、ごめんなさい…予想以上に安室さんの浴衣の破壊力が…かっこよすぎて死にそうです…」

んんんんん!!!!!
あぁ、叫びだしたい、なまえのほう、が!可愛くてこっちは死にそうですよぉおおお!!!!とりあえず今日は絶対いただきます。
どうしよう、この子どうしよう。多分今自分はギラギラした目で見ているだろうと思ってどう取り繕おうか考えていたら、先に彼女のほうが自分の目を隠したのでほっと息を吐いた。こっちからは彼女の結んだ口元しか見えなくてクスクスと笑う
彼女の手を離してあげれば自分と一緒に並んで歩き始める、本当は手を繋いだままでいたかったが彼女に恥ずかしいと以前言われたので繋がないようにした

一応前は向いているが、彼女の視線はちゃんと感じていた
チラチラとこっちを見上げてくる彼女が可愛すぎて仕方ない。

そんなふうに彼女の可愛さに浸っていたのに、彼女が別な男にぶつかった
それは許せない。中学生くらいの男だとは言えど、男は男
彼女の可愛さにほれられたら困る
それが原因だが彼女と指を絡めて歩く事が出来たので良しとした。駅前もだったが、お祭り会場も人が多い

食べ物を買って座っていると、彼女が急にすっと目を座らせた。その視線の先は自分の隣、ホー?それで、どうするのかな?と思ったら珍しいどころか初めて甘えてきた

「別に、なんでもないです。たこ焼きください、ふーふーしてあーんしてください」

んんんんんんんんん!!!!!!ふーふーしてあーんって…
彼女に殺される…笑って「はい」なんてなんでも無いように言ったがきつい!この安室の状態でそのへんをうろうろするわけにはいかないので気を引き締めた
彼女が二つに割ったたこ焼きの一つを食べてから、その半分をこっちに渡してきた。あぁ、なるほど?
彼女の真意はすぐにわかったので軽口を叩いてみた。自分なりに冷静を保とうとしている気持ちもあったが。

チョコバナナを食べている彼女を見ていた。ガブッと噛み付いてくれればまだいいのに、優しくあむって食べるから物凄く辛い
その食べ方やめなさい、誰かが見てるかもしれない

彼女が隣で食べて、自分の視線に困ったように視線を逸らして
とりあえず全部が全部可愛くて、とんでもなく幸せを感じていると彼女に楽しいかと問いかけられた。作った笑顔じゃないですよ

りんご飴を食べている彼女が可愛くて、人がいなくなったのを見計らって彼女にキスをした。そのままその飴で少しだけベタベタしている唇を舐める
彼女が顔を真っ赤に染めていると、それがまるでりんご飴のようだったので頬をつついてそれを伝える。彼女が立ち上がって慌てて階段をあがっていく姿を少しだけ見てから階段をあがっていった。可愛すぎる
お祭りばんざい

その後彼女が靴擦れしたり、通り魔が出たりして大忙し
彼女は確かになんでもなさそうに、むしろいつもの事だと笑って手を振ってくる
事件を放っておけない自分も自分だが、慣れてる彼女も彼女

とりあえず、彼女に近づく男はみんな滅べばいいと思います。







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