彼女が寝ている間に帰宅して、寝ている間に起きて朝食の準備をした。目を擦って起きてきた彼女は自分の姿を見て慌てて洗面所に入った
パジャマから部屋着に着替えた彼女はきちんと身なりを整え終えてて、僕の隣に並ぶとこっちを横目で見てきたので笑ってしまった。この無言はなんなんだ
「おはようございます…なんで声掛けてくれないんですか」
「おはようございます。可愛い寝顔で眠ってる所起こせないだろ?たまには俺が朝食作ろうと思って」
「寝顔見るのやめてください!たまにじゃないんですけど…ちゃんと寝たんですか?」
「もちろん」
拗ねたように言ってくる彼女に笑いかけると、彼女が視線を逸らした。寝顔見るのはやめられない、頬触ったらくすぐったがったりするし、悪戯するとあっちこっちに動く彼女が可愛いしたまに眉間に皺が寄ったりする、寝顔なのに表情が変わる彼女を見るのが楽しい。ちゃんと眠ったと言ったのに疑うような視線を向けてくる、とりあえず俺がする事なすこと疑う事しか出来ないのか…
ほとんど作り終わっているため彼女が運んでいき、二人でご飯を食べ始めた
「お仕事もう行くんですか?」
「今日は一日お休みもらいましたよ。買い物にいきませんか?」
「お買い物?」
お互いが元から使っていた不揃いの食器。それをちゃんと夫婦茶碗にしたい俺の気持ち
「食器同じのにしませんか?」と、少々言いづらいけど聞いてみたら、彼女が目を見開いて笑った「いいんですか?」なんて言って楽しそうに笑っていた。
だいたいのところ、蘭さんたちとお揃いの何か〜とか言って楽しそうに話しているのを聞いているのに俺とのお揃いが無い。何か納得いかない、そんなやきもちに似た俺の対抗心みたいなもの
「夜ご飯って何か考えてた?」
「何も…。一人なら余ってる材料でパスタかなーって…いつもの事ながら突然帰ってくるんですもん」
「夜中になるって自分でわかってるのに、俺が連絡したらなまえが寝ないで待ってると思って」
「否めませんけど…」
「夜ご飯も何も考えてないなら旅行行きましょうか。一泊二日で旅館に」
彼女の動きがピタッと止まったと思えば、彼女の手から箸がスルリと音を立てて落ちた
そのうち「旅館!」と嬉しそうにし始めたので失敗ではなかったようだ、基本的に俺が何しても喜んでくれるのはなんとなくわかってはいるのだが、なんとなく反応が怖い
ご飯を食べ終わると、彼女が準備があるだろうから俺が片付けを名乗り出た。この時は彼女は遠慮せずに準備に勤しみにいった。お茶碗を洗い終わって片付けが終わると、彼女がちょうどバッグを持ってリビングに出てきていた
彼女が着たのはハイウエストで絞られたワンピース
可愛い以外の何物でもないし、基本的に俺と出かける時はあまりスカートを履かないために新鮮で仕方ない。彼女がスカートを履いているのを着たのを見たのは5回にも満たないかもしれない
スリッパをパタパタといわせてまだ歩き回ってる彼女が可愛い
俺も準備をし終わり、車の鍵を手に持ってソファーに座って弄んでいると彼女がこっちに来た
「お待たせしました!」
「可愛いですね!!!間違えた…待ってないですよ」
思わず思っていた言葉が勢いよく口からもれ出たけどすぐに訂正した。彼女がどんな反応したらいいのかわからないと言ったような、笑っているような笑っていないような本当に微妙な表情を浮かべていた。鍵をポケットに入れてiPhoneと財布とバッグを持って立ち上がる
本当ならば洗濯物くらい手伝いたいのだが、彼女が本気で嫌がるので洗濯だけはノータッチにしている
旅館も遠くの旅館でもないので、まずは買い物に来た。夫婦茶碗にするのが遅いだろうけど、これはこれでいいだろう
「梅とか桜とかうさぎ模様多いですよね、可愛いですし」
「ちゃんと意味はありますけど…僕としてはなまえはうさぎか梅ですかね?」
「なんでですか?」
「うさぎ可愛いじゃないですか。それに活動的とか向上心とかの意味がありますし、梅はこれからつらいことも乗り越えて花が咲きますようにっていう願いが込められてるんですよ」
「でももう咲いちゃったよ?」
「……ん?」
彼女が困ったように首を傾げる。ちょっと彼女の言った意味がわからずしばらく考えたが、彼女が段々と顔を赤く染めて梅のお茶碗を棚に戻した。
彼女に掘り下げて聞いてみると、彼女が顔を背けて俺を離れろというように押しやってきた
「ちが、自分に例えたの、違うの…辛かったわけじゃない!」
「うさぎにしましょうか!うちにいるスコッチティッシュもうさぎですし」
なんとなく理解した。彼女はちゃんと言ってくれたわけではないが、辛い時が組織との事だったとしたら花が咲くは結婚の事かなと思って。とりあえず可愛すぎて辛いので後ろから抱きしめるようにうさぎのお茶碗を指差すと、彼女が色違いのを二つ取った
彼女から離れてカゴを差し出すと、その中に彼女がお茶碗を入れる。汁碗もそれと同じ柄のを選び、箸は椿にしていた
それから彼女が一番長かったのはマグカップ。下手したらお茶碗よりも使うかもしれないそれだ
「安室さんはやっぱり黄色…私は?」
「ピン…みず…いや、白?」
「すごく定まらないですね」
「難しいです。うーん…どうせなら俺が黄色って言うなら同じ黄色にして欲しいですねぇ…」
「なんでですか?」
「白が僕の色に染まったーって事ですね!」
「この腕組んでるみたいな可愛い顔のやつにします。白いの」
「スルースキルが身につきましたね。顔は赤いですけど」
彼女の頬を人差し指でつつけば、こっちを睨むように見てきたがすぐにいつもの通りに手のひらで顎を押しやってきた。ここはお店だ、落ち着こう俺。からかうのが面白いとか思ってる場合じゃない…
食器の買い物を済ませてから車に乗り込んで旅館に行った。受付を済ませて荷物をスタッフが持って案内するときに、彼女は気づいたらしいが、挨拶していいものかわからないらしくそのまま部屋のほうまで行った。鍵を開けて部屋の中に入るとそのスタッフの腕を彼女が引っ張って部屋の中に入れる
「こんにちは」
「こんにちは、降谷さん、なまえさん。二人が安全に過ごせるように俺が潜入してます!」
「暇人か!仕事はどうしたんですか!」
「冗談ですよ。ここでちょっととりひ「上田」
「はっ…怖っ…なまえさんだと思ってぺらぺらしゃべるところでした!あ、仕事に戻ります!」
なまえを見ると、苦笑いを浮かべながら部下に手を振っていた。彼女も先ほどの部下の言葉の続きを聞こうとするわけもなく、靴を脱いで室内に入った
いつも通りに室内探索が始まったので座布団に座って館内の案内を見ていた
「あれに他意ってありますか?」
彼女が俺の前に立って外にある露天風呂を指差したので笑った
「あります」
ただのお風呂だったら何も言ってこなかっただろうが、せっかくの露店風呂つきなのに彼女と入りたくないわけがない。彼女があんぐりと口をあけていたので笑って誤魔化した
彼女がふっと踵を返して荷物のほうへ行けば、四角い箱を持って戻ってきた
「あのね」
「はい?」
「これからもよろしくお願いします…」
「ありがとうございます。何のプレゼントですか?」
その四角い箱をこっちに向かって差し出してくる。それを受け取れば知らないふりを決め込んだ、すると彼女が唇を結んで眉を下げたので途端に申し訳なくなって彼女を抱き寄せた
「ごめんなさい、覚えてます。意地悪しました」
「恥ずかしいじゃないですか!」
「あはは、ごめんなさい」
「笑い事じゃないですよ!!」
彼女の首筋に鼻先を摺り寄せると、彼女の背筋が伸びた。怒ってる彼女のお腹にまわす腕の力を強めると、彼女がそれから抜け出そうと必死にもがくのでスカートに手をかけて太ももを露にしたら「ぎゃあ」と悲鳴をあげてもがくのをやめた
「開けていいか?」
「どうぞ」
彼女を自分の膝の間に座りなおさせれば彼女の肩に顎を乗せて包みを開いた。出てきたのはタンブラーとペン。可笑しくて笑ったら、彼女に「え?ダメでした?」と不安にさせてしまったので、彼女を一度たたせて自分の荷物からプレゼントを取り出して差し出せば、彼女がそれを受け取った。俺に促されるままにあけると、彼女が目を見開いた後にすぐにふふっと肩を揺らして笑い始めた
「あけてみて」
「あ、はい…タンブラーだ…」
「ちなみに何でタンブラーにした?」
「職場で飲むかなって、れーさんは?」
「職場で飲むかなって思った」
二人で笑っていると、ノックの音が聞こえたので返事を返し、自分が扉を開けに行った。何があるかわからないので彼女が扉を開けるのは避けたい。そこにいたのは部下で、食事の準備が出来たと言うことだったのでレストランの個室に入った