安室としての潜入もあったりして昼間もバタバタ、夜もたまに帰るがそこまで彼女とのんびりする時間が無かった。それももう落ち着く予定で二日間ずっと本庁に籠もって仕事をしていたらやっと落ち着いたので帰宅する事にした、やっとなまえとのんびり出来る
本当なら次の日の朝に帰る予定だったが、彼女に会いたい一心で仕事を終わらせて21時半頃に家に入った。そういえば窓を見るの忘れていた…起きているかどうかわからないのでそっと鍵を開けて中に入ったら明かりがついていたので、「ただいま」と声をかけたらリビングのほうから何か色々と落ちる物音が聞こえたのと同時に彼女の「あっつぁああ!!」という声が聞こえ、急ぎ足でリビングへ行くと、物音の原因はキッチンだったようでのぞき込む。リビングにはチョコレートの匂いがしていた
「お、おかえりなさい……」
「……いただきます」
「ちが、雑巾!」
彼女はチョコレートまみれで、床にもチョコレートと水が滴っていて…水?
「お湯被ったんですか!?」
それでさっき叫び声が聞こえたのか。熱いとちゃんと発音されていなかったから今床を見て湯気が出ているのを見るまで気づかなかった。暖かい部屋に湯気が出るほどのお湯をなぜ使っていたのか、とりあえず聞く前に彼女を抱き上げてお風呂場へ連れて行った
「あつっ…熱い熱い!」
「服についてるお湯だろ」
浴槽の縁に座らせて水を出してパジャマの上から彼女の足にかければ彼女が息を吐いた。彼女を見ると、彼女が一瞬息を呑む、それは多分俺が彼女を睨んだからだろう
「湯煎してた?」
「はい…」
「テンパリングに適した温度は50℃から60℃、なまえはどのくらいの温度のお湯を使った?」
「ふ、沸騰したのを使いました…」
「だろうな」
彼女の事だ、チョコレートも彼女の体を滴るくらいに溶けているので面倒で暖かいお湯でいっきに溶かそうとしたのだろう。 しばらく彼女の足に水をかけていたが、状態がわからないので彼女に下を脱ぐように言えば、俺の顔をチラチラと見ながら下の服を抜いで、上の服を下着が見えないように下へ下げた。彼女の太ももは赤くなっていて痛々しい。ただチョコレートが完全に溶けていると言うことは沸騰した温度よりも下がっているという事で、それだけが幸いだった
「あの、れーさん…私自分でやりますから、れーさんが濡れちゃいます」
「いいから。…だいたい、夜に何してたんですか?」
「れーさんが明日の朝帰ってくるって言ってたから…誰かに渡されるより先に私が一番最初にチョコレートをあげたかったんです」
「明日…?」
彼女が自分の太ももに触れているのを見ていれば、明日がバレンタインだと気づいた。結局の所自分が急に帰ってきたせいで、驚いた彼女がひっくり返ったのか…俺のせいだったのは認めるし申し訳ないとは思うが、湯煎の温度を横着したのは許せない。自分が帰って来なかったにしても火傷する可能性は充分にある
「バレンタインか…俺がなまえ以外から貰うわけないだろ…」
「安室さんは?」
彼女がムスッとした顔でこっちを見てくる。あ、やばい許してぎゅっとして俺の方が謝りたくなってくる。その顔は反則だろ
「安室はたしかに…断れ無いな、でも受け取るだけで食べはしませんよ?」
「それでも、一度気持ちを受け取るって事ですもん…やだ…。私が一番最初にれーさんにも安室さんにもあげるんだもん」
んんんんんん!!!!泣きそうな顔で言うのやめて欲しいです!!!!こんなの見せられたら甘やかしたくなる…でも他の事で横着するのはいいが、彼女に害をなす横着はいくら彼女としても許せない
彼女が鼻をすすって目に溜まった涙を拭った。
許す!!だめだ、ゆるさない
「なまえの気持ちは嬉しいですよ。でもそれでなまえが火傷したら意味無いだろ、嬉しくなくなるし。だいたい沸騰したので湯煎にかけたらチョコレートの風味が飛びますし」
「次はちゃんとやりますし…。詳しいれーさんなんて自分で作って食べればいいと思います」
「ホー?じゃあくれないんだな?」
ふいっと彼女が視線を背ける。全然反省していなさそうな彼女をどうしてやろうかと思ったら、彼女が自分の頬に両手を添えれば、頬を揉むように動かしていた。いったい何をしているんだ、彼女が上の服を足の間に挟んでいるため下着はやはり見えないが、そんなに動いていたら見えるのも時間の問題ではないかと…あえて指摘はしないけど。
「聞いてる?」
彼女に話しかけると、彼女がこっちを見てきた。その顔は明らかにニヤけているので意味がわからず一瞬動きを止めたが、すぐに眉を寄せた
「なんで、笑ってるんですか…?」
「ご、ごめんなさい…怒られてるのわかってるんですけど…怒ってるれーさんがかっこよくて死にそうで…最後わざと煽りました。でもにやけるのが止まりません!」
なんの申告だよ。こっちが葛藤してるあいだずっとそんな事を考えていたのか…。
「反省してないですね?」
「してます!美味しいチョコレート食べて欲しいので湯煎はゆっくりします!」
「理由はそっちか…」
彼女が体をふるふると揺らした、もうさすがに寒いかと思って水を止めると赤みが幾分かマシになっていたが、今度は寒いのだろう。湯船にいれてあげたいが、それだと結局足が痛いだろうし…ただ彼女自身にもチョコレートがかかっているため、結局の所シャワーを浴びなきゃいけないと思うが…
「でもまあ、いただきます」
「まだできてないですよ。作り直しです」
「あるだろ?ここに」
彼女の頬についたチョコレートを親指で拭って舐めれば
彼女が頬をカッと赤らめた。と、思えば今度は顔全体を手で覆うと「死ぬ……」と呟いていた。