近場の携帯ショップに行ってみたが、彼女は来ていないという。犯人は次々と捕まっていき、被害も無くなってきているようだがまだ犯人は残っているという
そういえば家という可能性もあるのでは無いかと家に向かったが、家には誰もいない
仕事にも今日はまだ来ていないという。風見たちからも何も無しで、ただ犯人が犯行を止めたのかなんなのか情報が減ってきた
一度iPhoneを充電したほうがいいか、車で充電できるやつを購入して繋げ、充電しながら彼女の指輪についている発信機を起動させた。その発信機は俺のすぐ後ろから車と同じスピードで向かってきて、そして通り過ぎた
路肩に止めていた俺の隣には車やバイクが通りすぎていく、車を動かしてその後ろをついていくと、彼女が乗っているのはバイクの後ろだった。クラクションを鳴らしてみればスピードをあげられ、公園のほうに行ったのでそれを追いかけたらやっとそのバイクが停まった

「あっはっは、ごめんごめん。なまえさんの旦那だって事は知ってたんだけど、あまりにも必死に追いかけてくるから面白くて!」

「面白がらないでよ!もう!ありがとう乗せて来てくれて」

「いいって。今事件があって一人で歩かせると危ないからね、それじゃ」

こっちに片目を瞑ってさっさといなくなった彼女、赤井の妹。赤井を無邪気に笑わせたらあんな顔なのかと思うと恐ろしい
彼女を見送った後に、今日ほぼ一日中探し回っていた人物がこっちを振り向いてきた、瞬間に抱きしめた。いったい彼女は何をしていたのか、怒るよりも安堵のため息が出てきて、彼女が無事で良かったと感じた

「あの、あのね、安室さん…私実は置き引きにあって…あとスマホも走ってる途中にどっか行っちゃって…あ、でも割れてるからどうにもならないと思うんですけど!でもスマホとか中身復元されたら大変ですし、それにお財布の中に…」

笑えてきた。何だこのすれ違い。だいたいなんで彼女は今日という日に限ってこんなにも不運が続いているのか、ただ何ごとも無くてよかったし、もう被害者もいなくなり、犯人も全員捕まったのではないかという報告が入った。風見に彼女を見つけた旨を伝えた
彼女が説明しているのをちゃんと聞いてはいたのだが、抱きしめる力を強めたら彼女が言葉を止めた

「安室さんの匂いじゃない…」

「ええ。今日なまえを探すためにスーツから着替えて…部下のを借りました」

「え、それで安室さんお外にいたんですか!?ごめんなさい、本当に…」

「いえ…ただちょっと仕事増えそうですね。とりあえず家に送りますよ、スマホの件はこっちが…新一くんにも連絡しておきます、一緒に探すと言っててくれたので。あとバッグは高木刑事…ですよね?彼が持っています」

「本当ですか!?よかった…仕事の書類まで失くしたから…あ、職場に行かないと」

「今日は僕がなまえさんの仕事場まで送って、あと帰りも自宅まで送りますよ」

「え、大丈夫ですよ?」

「万が一という事もありますので」

彼女に匂いが違うと言われたので離して説明をした。確かに、着ているのは自分で抱きしめているのも自分だという事にかわりはないが、彼女に自分以外の男の匂いがつくのはたとえ部下だとしても面白くは無い。少しだけ距離を開けたまま送っていく旨を伝えると遠慮されたが、こっちも遠慮する事を却下した。新一くんに連絡をするのに、彼女に電話を代わると犯人像を突き止めたのが新一くんだと聞いたらしく、楽しそうに笑っていた
仕事をしていると、この笑顔を守るためにしているんだと感じる。ただ、その笑顔を失う可能性だって、自分が捨てる可能性だってあるんだというのは自分だってよくわかっている
それでも、失ったり捨てる自分ではいたくない。たった一人の何に変えても守りたい人がここにいる
電話を切った彼女がその画面のままこっちに渡してくる。それを受け取ってから彼女の額にキスをした
耳元でずっと音がなっているので、彼女の手を握ったまま部下からであろう通話をとった
車に乗っていれば何も問題が無かったのだが、今はまだ外だ。安室としていないといけない

「どうしました?」

"降谷さん!早く戻ってきて報告書とか後処理とかしてくださいよ"

「ええ、彼女を送ってから行きますね」

"もう犯人は全員捕まったそうなのでだいじょう"

"こっちは風見さんがどうにかしますので、ゆっくり送ってくださーい"

耳元が騒がしいのでとりあえず通話をきった。彼女が俺が握っているその手を握り返してきて笑った「大丈夫ですよ」と
こんなやり取りをしていたら、彼女は遠慮するに決まっている。タクシーを使うように伝えて車に乗り込み、車を発進させた。何かが引っ掛かっている気がするが、何かがわからない
公園から出る直後にバックミラーを確認した瞬間に、ギアをいれかえた
公園から出てきた男になまえが公園の中へと引きずられていったから
そのまま車で戻りそうになったが、考えると車のエンジン音を立てちゃまずいだろう。車から飛び降りて公園の中へと入っていった。急いで、でも音を立てないように
事件のせいか、公園の中は静まり返っていて、いつもは見える子供たちの姿も何も無ければ風の音しか聞こえない。しばらく耳を澄ませていると男の声がトイレから聞こえたので歩み寄った、トイレだなんて安易な

「あの、今このへんで起こってる事件の犯人…さん?」

「そうですよ。仲間が全員捕まって、俺の事が表に出るのもすぐだと思うので最後の最後に何かしとこうと思ったら、なんとびっくり公園の前で不倫しているカップルを発見したじゃないですか」

「ふ、り、ん…?」

「男のほう、彼女を送っていくって言ってたし、君だけ指輪つけてるだろ?あぁ、やだやだ年取っていくとこうやって会話も楽しくなっちゃって色々な情報を被害者に与えちゃうから、だから殺さなくちゃいけなくなるんだった」

「で、私今から殺されると…」

「不倫なんて事をしている女を性的にこらしめてからな」

「されるわけにもいかないし殺されるわけにもいかない、だいたい私ね」

近づいていくと、会話が聞こえてくる。彼女はどういったわけか、いつも犯人とちゃんとした会話が出てきていて、交渉人に向いているんじゃないのかとつくづく思う。簡単に隠す事が出来る小さめの果物ナイフ、それを彼女に突きつけているわけでは無く、ただ自分の手のひらを叩いていたので頭に銃を突きつけた

「残念ですが、彼女はれっきとした僕の妻ですし不倫なんてする子じゃないですよ。あぁ、もうわかってるかと思いますがあなたの頭に銃が突きつけられてます、彼女の前で脳みそぶちまけたく無いのでそのナイフを下に置いてゆっくりと後ろに下がってもらえますか?」

風見には連絡済み、犯人が舌打ちするとナイフを下に落として後ろに下がってきた。俺がトイレの奥側へ、彼を出入り口のほうへと誘導させると男が外へと出て行く。なまえのほうを見たりして余所見が出来ないため、彼女をそのままにして彼と一緒に外へ出た
こうなればもう銃を突きつけている所を誰かに見られても困るのでそれをしまう
風見たちがタイミングよく駆け寄ってきて犯人に手錠をかけた

「どういう事だ?この女三度くらい見かけたが…ダーリンは銀髪の金色の目だとか話してたのを聞いたぞ…」

「それ多分、漫画のキャラですね」

「ウィル王子の事?」

「でしょうね」

後ろから顔を覗かせた彼女がしれっと答える。彼女の様子からするに、何もされていなさそうだが頭を摩っていたので、どこかにぶつけたのかもしれない。「なんだと…」なんてぶつぶつと呟いている犯人に聞いてみた

「どうして彼女に色々ぺらぺらとしゃべっていたんですか?」

「…なんででしょう…。そう、他の女は何かしようものならぎゃあぎゃあ泣き叫んで…口を塞いだり脅すしかなくなるが、彼女は口を塞いで引きずっても暴れもせずについてきて、トイレにぶち込んでも怯えた顔一つしない…どうしたの?ってまるで言われてる気がしたんです、キョトンとしてるから」

叫べよ。だいたい、助け求めるなりすればいいのに、それさえもしないのか
彼女を横目で見れば、困ったように笑っていた

「この人どうしたのかなーって思ってました」

そのままですね。犯人が連れていかれると、ようやく事件が本当に終わった
犯人はお互いの人数を言ってないのに、犯行が止まったからといってそれで全員だという事は無い。頭はトイレに投げ入れられた時にぶつけたらしく少しだけたんこぶになっていただけらしく、少し冷やせば大丈夫そうで先程思った通り何もされてはいないそうだ
彼女に何かあるたびに心臓が止まりそうになる

「なまえさんまで…僕の前からいなくなるのやめてくださいね…」

「私安室さんよりも…彼よりも長生きしますよ。それよりさっきのベルモットの真似ですね」

最後の一言は余計だが、笑っていう彼女を抱きしめた。あー…俺の匂いじゃないって言われたんだった
俺の匂いじゃないって、随分俺のにおいに慣れてくれたものだ…本当に、何もなくてよかったと感じるが精神的に疲れた日だった







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