彼女が海のほうを見ていたのだが、新一くんたちと話している途中で彼女が腕を引っ張った
「どうしました?」
「浮いてる」
彼女が指さした先を見ると人が浮いていた。ただ遊びであの状態でしばらくいる人もいる、それに近くの友人が指を差して笑っていた
「ふざけてるんじゃなく?」
「ううん、あそこの友達は、あっちの人だと思う…それでそこの人は私が見てた限りだと沖のほうから来たと思うよ。水着が同じだし濡れて髪も似てる」
そこまで言われたら様子を見に行くしかなくなるのが、彼工藤新一くんと自分も赤井も…なんならドイツ系の奴も。
「園子さんたちといてくださいね!」
一応振り向いて彼女に忠告をすると、わかっていると言わんばかりに手を振られた。彼女の話した通りにあれは死体だった、しかも自殺とかでは無く、沖にいた人達の中の誰かの知り合い、それなのに誰も名乗り出ては来ない。死亡した原因は溺死、そばで彼女達がビニールボールで遊んでいるおかげで俺たちは犯人を突き止めることに集中出来た。喜ばしい事、たとえ日本じゃなくても人が殺されたりするのは気分が悪い
「安室さん!」
「はいっ?」
さて、もう彼女たちのところに帰ろうかという時に園子さんが走ってきた。勢いよく呼ばれたので勢い良く反射的に返す
「蘭となまえさんの水着が流された!」
そんなハプニングは二人きりの時にお願いします。上か下かって考えた、だいたい彼女はパーカー着ていたはずだがいったい何があってそうなったのだろう。二人は岩場の影に隠れているようで、園子さんがタオルを渡したらしいが水着を買いに行くにしても二人にしておくのは不安らしい。それは俺も不安ですよ
水着のほうは園子さんに任せて俺と新一くんは岩場へ向かい、赤井がいたらいたで気まずいだろうという事で、赤井は事件処理をしに行った
岩場のほうへは泳いで行かなきゃいけないので泳いで回ると、ちょっとした洞窟のような場所があって二人がいた。タオルを蘭さんが、なまえはパーカーを脱いで膝にかけていた
「あむっ…なんで来たんですか!?」
「園子さんが水着を買いに行っている間心配だからって言いに来たんです。水着可愛いじゃないですか」
花柄のビキニ、彼女が膝を抱えるようにして体を隠そうと体勢を整えた。
新一くんも蘭さんのほうへ行って何があったとかを話していて、どうやら子供が悪戯で二人の紐を引っ張ったらしい。蘭さんとなまえがクスクスと笑いながら談笑をしている
「でも三人ともじゃなくてよかったですよね」
「本当に。水着が流されるとか漫画の世界だけかと思ったよ…」
「バーロー、何ごとも無かったから良かったものの…笑い事じゃねぇっての」
「何かカニとかいないかなってそっちの岩場にいたら子供がくっついてきて、可愛いなーって蘭ちゃんと言ってたらしゅるんって」
「何歳くらいの子ですか?」
「えー…何歳くらいだったんだろう…でも、子供は子供でも…小学校高学年くらい…ですかね?」
蘭さんが首を傾げて考えているように呟く、小学校高学年はちょっと話しが違ってくるんじゃないかな。だいたいそのガキなまえの体見たんじゃないよな
新一くんに腕を肘でつつかれてそっちを見た
「どうしました?」
「安室さん顔顔」
「あぁ…ちょっとそのガキ見つけ出して俺の正義を執行してくる」
「安室さぁあん!!!」
「何?どうしたの?コントでもしてんの?」
顔があまりにも歪んでいたらしく、蘭さんが見ていないとは言え新一くんが教えてくれた。
二人から数歩離れて背中を向けると、話しに夢中になっている彼女たちに聞こえないくらいの声で呟いて海のほうへ行こうとすると、それに気づいたなまえが笑い出した。それと同時に園子さんが来る
「はい、代わりの水着。上下セットだったし…なまえさん明日もプール行くんですよね?よかったら明日はこっちの上のも合わせてみてください。荷物の所に置いておきましたから!ほらほら、二人はあっち見てて」
「ありがとう園子ちゃん!助かる。やったースカート付きだ、可愛い、感謝!!」
「ありがとう園子、なまえさんとちょっとどんな水着買って来るかなーって想像してたんだよ」
「どんなだと思ったの?」
「きわどいやつ」
「……なまえさん買って来ても今しか着てくれなさそうで」
「よくご存知で。よし、いいよ」
振り向いたら彼女はすでにパーカーを着ていて、そのパーカーの下からひらひらとスカートが出ていた。蘭さんも園子さんも何も羽織ってないのに、なんで彼女は脱がないんだろうか
その後は解散してやっと二人で遊べる事になり、浮き輪にお尻を入れて彼女がぷかぷかと浮いていた
「気持ちいいですか?」
「とっても。流れに流れて流されていくのと波が気持ちいいです…」
目を瞑って物凄くリラックスしているような彼女、流れに流れてって言ってますけど押したりしているのは自分であって流れてもなんでも無い。波はそこまで高く無いがバランスを崩したらひっくり返りそうだ。彼女の浮き輪に腕を乗せて彼女を眺めていた
楽しそうに歌う彼女の歌を聞いて周りにあまり人がいない沖のほうまで来ると、彼女の声と波の音しか聞こえなくなり、そのうち彼女も歌うのはやめていた
「なまえ」
「んー?」
「眠い…わけじゃないんだよな?」
「大丈夫ですよ」
彼女が笑って目を開いた隙に彼女の唇を奪い、すぐに解放すると彼女が俺の腕を浮き輪から外そうと押してきた。その彼女の顔は赤く、視線を合わせようとしない
「落ちちゃえ」
「離しても別に泳げますし」
「不意打ち!」
彼女が浮き輪からお尻を外してそのまま海の中に入っていった。不意打ち…って、彼女は何回キスをしたらいったい慣れるのだろうか
海の中を進んで行く彼女を上から眺めていてしばらくしたらあがってきた
「ぼやけて見えないですね」
「当たり前だろ…ゴーグル取りに行くか?」
「ううん、浮き輪に入ります」
浮き輪を彼女の頭に被せてやれば彼女が浮き輪に手を入れて、一生懸命這い上がっていた
手伝ってあげたいのはやまやまだが、脚をじたばたしながら浮き輪に入ろうとする彼女が恐ろしいほど可愛いので遠巻きに見ているしか無いだろう。
浮き輪に入れば彼女が足をバタバタさせて進んで行くのでついていった
足のつくところで浮き輪を取った彼女が、俺に浮き輪を被せてくる
「どうぞ」
一度怪訝な目で見たが、とりあえず腕を通すと彼女が笑った
「面白いくらい似合わないですね」
「それやりたかっただけか?」
「ごめんなさい」
そのまま足のほうまで通して浮き輪を取り、手に持つと彼女を見た。風も冷たくなってきたし、彼女の唇の色が少しだけ薄くなっているので浮き輪を返し、荷物からバスタオルを取り出して彼女の肩にかけたが、彼女が片方の腕を広げた
「れーさんも、寒いですよね?」
「ありがとうございます」
彼女の腰に手を回して彼女とバスタオルに包まる、最初こそ彼女も冷たかったが段々と暖まってきた。ただそれでも触れている箇所が暖かいだけで、反対側の腕に時折触れたが冷たい
ホテルに戻ってそのまま彼女と湯船に浸かった