お祭りの日の次の日になって、朝食後のコーヒーを飲んでいたら彼のiPhoneがなり、廊下で電話をしに行った。私は新しく発売されるグッズとか、ゲームの事前予約の確認とかをしていて、テレビの音を大きくして彼の話している声が聞こえないようにしていた。
それなのに帰って来た彼が急にこっちに飛びついてきて、食べたものが胃から出そうになる

「ど、どうしたんですか…?」

彼が私の首筋に鼻先を埋めてきたと思えば頭は固定されてるし、腰にも手を回されているしで身動きが取れない。それにしてもくすぐったいのに、首を甘噛みされた。私の息が一瞬止まると、彼はゆっくりと首から頭を離してきたかと思えば今度は両肩を掴んで私の胸付近に項垂れた

「はぁー…」

と、大きくため息を吐かれれば、先ほどの電話で何か言われたのか、それとも仕事がたまっているから本庁へ来いって言われたのかと思ったが、彼のこの行動の意味がわからずしばらくジッとしながら彼の言葉を待っていたら、彼が再びため息を吐くので、頭をよしよしと撫でてあげた

「長期…の、仕事が出来ました…」

「そうなんですか…どのくらいですか?」

「だいたい…3ヶ月程…その任務が終わったら今度はそれの報告と溜まっていた仕事を終わらせるために本庁に缶詰です…」

「それは、体壊さないようにしてくださいね」

なるほど、なんとなくわかった。いつも一ヶ月そこらの時は、少し外であったりも出来るし、なんなら私が本庁に呼び出しくらって行ったりしていたが、私は今完全に本庁へ行ける状態でも無ければ、彼の言い方からして外で少し会うのも出来ないのだろう。
彼の柔らかい髪を撫で続けていると、彼が私の匂いを嗅ぐように鼻を胸に擦り付けてきた
可愛いけど、可愛いけどくすぐったい

「なまえと三ヶ月離れるとか…仕事恨みます…」

「あはは、仕事人間の人が何か言ってる」

私は本気で笑ったのに、それが気に食わなかったようで頬を軽く抓まれた。私は本当の事を言っただけで頬を抓まれるいわれはまったく無いのに、納得が出来ない。彼が顔をあげてきたと思ったら頬をつまんでいた手を離し、かわりに私の頬を優しく撫でると口付けをしてきた

「ハニトラとか…するわけじゃないんで…」

「はい」

「浮気とかも…しないんで」

「はい…」

「なまえも、浮気しないで、俺から心を離さないで待っててくれるか?」

「三ヶ月そこらで降谷さんから心はなれるとか、ちょっと難しいですよ」

なんでそんな不安そうに問いかけてくるのか、私は降谷さんが大好きなのに。もちろん、という意味を込めて笑って見せると、もう一度彼の唇が私の唇と重なった。泣きそうで、啄ばむようなキス、震える唇を感じたけど、彼は泣いてない
というか、たかが三ヶ月で泣かれるなら私は組織の事が終わるまで結構待って…あ、でも全然会わないって事が無かったのか

「なまえの事がバレると、厄介だから…電話とかもできないんだ」

「はい、待ってますね。体壊さないでください」

「……なまえ」

「はい?」

「この家に帰ってこれるかわからないけど、合鍵をなまえに渡す。寂しくなったらここに来て、俺はいないかもしれないけど、勝手にご飯とか食べてていいから」

「あはは、降谷さんがいないのに一人でご飯食べないですよ。でも、はい、受け取りますね」

彼はすぐに仕事に行かないといけないらしく、彼が着替えをしている間に私はすっかり冷めたコーヒーを片付けた。そういえば危ない仕事じゃないのだろうか…そうは思ったが彼がちゃんと帰ってくると言っているので、私は信じて待つしかないのだろう
すっかりと自分のものになったカップと、彼のカップを洗って布巾で拭いて。エプロンを取ったらスーツを着た彼が来た
荷物を纏めて持ち上げると、彼が私を引き寄せて額にキスをし、瞼と頬にキスをしてきた。くすぐったくて仕方ない

「帰ってきたら、口にする。送っていくよ」

言い方が気になって仕方ないけど、彼に素直に送ってもらった。
降りる前に運転席に座っている彼を見ると、彼は笑って「どうした?」なんて聞いてくるから、顔を寄せて彼の頬にキスをする

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

彼の車から今度こそ降りると、彼の車の扉を閉めた。
彼は車を動かさないで、私をジッと見ていたから、きっと私が入るまで彼は動かないんだろう。彼に踵を返してアパートの中に入ると車が動く音が聞こえた







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