就職先が決まり、その仕事も慣れた。当然ながら事務関係で、やる事は前の職場と同じようなものにした。この職場がなにかの犯罪に手を貸さないように祈りながら毎日仕事をしている
安室さんとはやっぱり例によってしばらく会ってないけど、ちゃんと連絡はしているから大丈夫そうで、その連絡もけっこう細かくやっている。ただまだ職場に慣れてなくて心細かったという事もあるけど、今はもう慣れたしみんなともよく話すようになり、歓迎会もしてもらえた。仕事が終わってスマホを見ると、風見さんから電話がかかってきていた
録音が残っていたのできいてみる

「あ、みょうじさん。実は降谷さん一週間ずっとちゃんとしたご飯食べて無くて、みょうじさん我慢はしてるみたいなんでけどちょっと頭がっ…!降谷さんそれ食べ物じゃないですよ!降谷さんそれ言っちゃだめなやつです!だ、だれか降谷さんを寝かせろぉおお!!」

という声の後にぎゃあぎゃあ聞こえたのでスマホを耳から離した。無視するか、無視しないか…でも結局これを放っておけないのが私で、しかもよくわからない降谷さんも結構好きだから見に行く事にした。ベタベタはそんなに人前ではして欲しくないが、面白いことになってるなら見に行こう。職場から本庁に向かって中に入る、公安課に行ったらみんなぐったりしていて、しかもなぜか救世主呼ばわりされた
それから降谷さんがいると言われた会議室へ行くと、なにか部下の人達と話し合いをしていた

「りんご飴!りんご飴とかいいじゃないですか!?」

「その根拠は!」

「単純に俺の彼女が食べてる姿が去年可愛かったです!唇も赤くなりますし!」

「よし採用!次!」

「水着はビキニはやめさせたほうがいいです!目を離した隙にナンパされます!」

「彼女のビキニ姿は見たいので僕はどっちとも意見し難いです!」

会議室の扉をそっと閉めた。風見さんはどこ行ったかな…と思って探していたが風見さんも徹夜続きでみんなが降谷さんの相手をしている間に一度家に帰ったと言われた。
ちょっとバカみたいな姿は見れたけど、あのテンションはいったいなんなんだと思って会議室に戻って顔を出す

今度はみんなに気づかれたようで、こっちを見てみんなの動きが止まった

「楽しいですか?仕事するか寝るか食べるかしてください」

「え、食べていいんですか?」

「どうぞ?」

「じゃ、なまえ、一緒に仮眠室に行きましょうか」

「は!?いや、ちょ、そっちじゃないですよ!!」

引っ張られそうになった所を止める。今日は簡単に眠りに行ってくれなくて、仕方ないので私が飲み物が欲しいという適当な理由をつけて、ベンチに座った。彼も私の隣に座ったかと思えば座った瞬間に大きな欠伸をもらし、私の肩に寄りかかって眠り始めた
最初は大丈夫だったが段々重いと思って身動ぎすると、彼は一度顔をあげるものの、すぐに私の肩に頭を乗せる。あれ、どうしよう可愛い…
重いけどそのままにしていたら、私が眠っていたらしく、目が覚めたら私は降谷さんの膝の上に頭を乗せて眠っていて、その格好のまま降谷さんは眠っていた。下から彼の寝顔を眺めていた、すると彼が笑いだした

「そんなに見られるとさすがにはずかしいですね」

「もう起きてる事に驚かなくなりました…」

「起きたのは本当に今ですよ」

彼の膝から頭をあげると、眠たいのは彼のはずだったのに自分が眠ってしまい、しかも彼の膝の上を借りるという失態をやらかしたので謝罪した

「いえ、だいぶ貴重なものが見れたので疲れもとれましたよ。でも今度はお返ししてくださいね」

「………んんん…わざとやりました!?」

「どうでしょう」

くすくすと笑う彼を恨めしげに見やるのに、彼から返ってくるのは嬉しそうな笑みばかりで。とりあえず大丈夫そうなのでその場を後にする事にした
ちなみに降谷さんたちが話していた内容の事はすぐにわかる事になる。

その後すごく引きとめられたけど帰りました

飴を食べながら仕事をしている最中にメールが来て内容を確認すると、何日の夜のお祭り一緒に行こうというお誘いだった
降谷さんの浴衣姿とか全力で見たいので、それを条件に了承メールをすぐさま打ち込んだ
そしたら「なまえも浴衣で」って着た。浴衣は…新しく買う事にした
それと自分で着付けとかヘアメイクも出来ないのでそれも頼んだ

乙女ゲームは勧められるがままにやっていただけだけど、趣味がネトゲとか漫画とかから段々と降谷さんになってきている気がする。それでも彼が仕事で忙しい間は趣味に没頭はしているけど、いまいち乙女ゲームにキュンとしなくなってきている
結局何が言いたいかと言うと、降谷さんにキュンキュンしすぎて怖い。彼に溺れれば溺れるほど怖くなって距離を開けたくなる
とは言っても、素直に誘われるのは嬉しいんだけど…

いつもどこか行く時は彼が迎えに来てくれるのだけど、今日はお祭り会場の近くの駅で待ち合わせをしていた。カラカラと下駄をならしながら駅前に行くもすでに人が沢山いて、彼の姿を見つける事は出来なかった。スマホでついた旨を連絡して端のほうで待っていると、隣に並んだ人がいたので見上げたら、その彼がほっと息を吐いた

「すみません、ちょっとなまえさんかなって思ったんですけど…曖昧でした。なまえさんの事は見つける自信あったんですけど…」

「え、何か変ですか?」

「いえ、その逆です。とっても可愛くて綺麗で似合ってますよ…。」

その言葉を聞いていた周りの女の子から悲鳴があがる。私も一緒になって悲鳴をあげたいくらい
彼から数歩離れると彼が手を掴んでそれ以上離れるのを止めてきた

「どうしたんです?」

「ちょ、ごめんなさい…予想以上に安室さんの浴衣の破壊力が…かっこよすぎて死にそうです…」

最後は顔を手で覆いながら呟くものの、片手では目しか隠れない。彼がクスクスと笑っている声が聞こえたので彼のほうを見る、私の顔は当然真っ赤だろう、彼のほうを直視できなくて視線をあっちこっちにさ迷わせていた
隣に並んで歩くものの、私は何を話したらいいかわからずに、ちらちらと彼を見上げては前を向いて歩いていたのに、躓いて彼…ではなく前にいた男グループにぶつかってしまって謝った

「ご、ごめんなさい」

「あ、大丈夫ですよ」

お面をつけて可愛らしい中学生くらいの男の子に頭を下げると、気にしないでくださいと笑って言われた。それからすぐに彼に手を繋がれて指を絡ませるようなつなぎ方になる
すぐに離れようとしたのだが、彼がこちらを見てきた

「また僕以外の人にぶつかりたいですか?」

「…い、いえ…」

お祭り会場内に入ると、彼が自分のほうに手を引き寄せるようにして、絶対離れないようにされた。近いし、お店の屋台の匂いがするはずなのに、私には彼の匂いしか届いてこなくて頭が爆発しそうになる

「何か食べたいものありますか?お腹すいてます?」

「あ、いっぱい色々食べたいです!気合を入れてお昼ご飯から食べてないんです!」

「じゃあ…たこ焼きとか焼きそばですか?」

「たこやっ…やきそ…………く、串焼き…で」

たこ焼きが食べたい、とすぐに言おうとしたのにたこ焼きを食べて歯に海苔がつく失態はしたくない。焼きそばも上に乗っかっているから却下、じゃあもう串焼きしかないと消去法で言ったら彼がたこ焼きの屋台に並んだ

「たこ焼き食べたいんじゃないですか?串焼きも好きそうですけど…」

「や、だってたこ焼き…」

「どうしました?」

さすがに歯に海苔が、なんて言えるわけもなく口ごもっていたら順番が来て彼がさっさとたこ焼きを買ってしまった。たこ焼きの袋をぶら下げながら彼と歩いて行くと、途中で串焼きがあったのでそれを買い、また電球ソーダというのも買った。何個か休憩所みたいな所があって、ベンチが置いてあるのでそこに座って一度食べる事になった
安室さんが私を端にしてくれたのはいいが、安室さんの隣には女の人が座っていて、安室さんを見てきゃあきゃあ言っていた

「……」

「どうしたんですか?」

「別に、なんでもないです。たこ焼きください、ふーふーしてあーんしてください」

私がそういうと、彼は笑いながら「はい」と返事をして、たこ焼きを一つとって私の口元に運んできた。一口で全部食べてしまえば彼が「美味しいですか?」と聞いてくる
何度も頷くと、今度は私はたこ焼きを半分切って自分の口に入れたあと、その残った半分を彼の口元に運んだ

「はい、どうぞ」

「あーんって言ってくれないんですか?」

「あぁん?って言いますよ?」

「ガラ悪いですねぇ」

彼が苦笑いを浮かべてそれを食べる。彼が私が好きだろうと思ってこういうところに連れてきてくれてるのかな、って思うと、彼も一緒に楽しんで欲しくて美味しいものも沢山あるんだって知って欲しい。でも無理にとは言わないから、せめて私がいる時だけは

たこ焼きを食べた後に電球ソーダを飲んだ

「それ美味しいですか?」

「……店によるのかなぁ…飲んでみてください、わかりますよ」

彼が口を開けたのでそれを寄せると、彼が私の手に持っている電球ソーダのストローに口を寄せてきて、吸ったのがストローの色でわかる

「…うん、なるほど。かき氷のシロップ薄めたような味ですね」

「美味しいソーダの店を探します。今日の目標です!」

たこ焼きを食べ終えて串焼きを片手に言っていたら、安室さんが楽しそうに笑う

「おそろしく似合いますね、お酒も買ってきますか?」

「それはやばいですね。完全なる花金のOLですね、そのままです」

彼と串焼きを食べ終わると、また何かを探しに行こうと歩き出した。チョコバナナとりんご飴を買い、彼がりんご飴を持っててくれてその間にチョコバナナを階段の所で食べていた







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