潜入する5日前から着々と準備は進められて行った。
私の入る高校の先生に挨拶をしたり、公安の人が親がわりになって挨拶したりとする事は様々。ちなみに自分が住んでいる所から少々離れている夏葉原駅の近くの高校なので、ほとんどばれないだろうという事で名前はそのまま使用する事になった。
ちなみに設定は、祖母の所に住んでいたが祖母が他界したので一人暮らしのために上京したのはいいが、夏休み前に親のいる海外へ結局移動する事になる…っていうちょっと難しい設定。ちなみに一人暮らし用の家も借りているらしく家具も私の元々使っていたものから違うものまで揃えられている、つまる所しばらく米花町と杯戸町からさようなら状態
それでも一ヶ月くらいなので蘭ちゃんに会いたくても我慢する…一応新一くんと赤井さんには言ってあるので、何かあったときはフォローを頼んでいる。園子ちゃんたちが出没するときは教えてね、とか…

高校へ潜入してから1週間ほどたった
私は思い切り溶け込みまくっていた…自分でもびっくりするくらい溶け込んでいた…
でもさすがに性格というか、しゃべり方は少しだけ大人しくはしていたけど
そんな時に、保健室から帰って来た友人が私の机のところに歩み寄ってきた

「お帰りなさい。絆創膏もらえた?」

「うん、もらえたんだけど…ねぇ、なまえちゃんってお兄ちゃんいる?」

「え?お兄ちゃん?」

「うん、保健室の先生が今日から代理になるんだけど、その先生みょうじっていう苗字で…すっごくかっこいいの!」

「そうなんだー…。同じ苗字なのかなぁ…?」

っていう事があって数日後の事、昼ごはんを食べ終わってから友人を歩いていたら、後ろからダイナミックに男子にぶつかられて私は階段を転げ落ちた

「なまえちゃん大丈夫!?待ってて!今先生呼んでくるから!!」

「ごめんみょうじ…本当にごめんな!今本当、逃げないと!」

その男子が謝ったあとにすぐに私の元からいなくなった、痛いなぁ、と思って体を横にしてから起き上がり、危なくパンツが見えそうになっていたのでスカートを整えた
お尻と足と腰が痛くて立ち上がれない、と思っていたら友人が保健室の先生というのを連れてきた。白衣、めがね、金色の髪、青い瞳…あなたここで何してるの
驚きのあまりに普通に名前を呼びそうになったが落ち着いて、いつも通りの顔で友人を見ていた

「なまえちゃん大丈夫!?あの男子どこ行った!私探してくる!」

「だいじょ…あぁ、足早い…」

「みょうじ大丈夫か!?」

担任の先生にも心配され、その担任の先生は体育の先生だったからか、私を運ぼうと手を伸ばしてきたが、すぐに保健室の先生…というか安室さんが「僕が」と言って私を抱きかかえた。保健室に連れてこられてすぐに、まずは膝の怪我を綺麗に洗われて消毒されて、他に痛いところが無いかと問診された
私が首を振るとその瞳が私を捕らえる。すぐに視線を逸らすと、先生が安室さんに任せてさっきの男子生徒を探しに行った

「ベッドにうつ伏せになってください。背中見せて…あぁ、動けないですよね」

安室さんに再び抱きかかえられてベッドに寝かせられた。安室さんがカーテンを閉めている間に肘をついてコロリとうつ伏せになり、それから捲くれたスカートを下へ引っ張った

「背中見ますよ」

安室さんが私のワイシャツとカーディガンを上に捲り上げると、その布が擦れた感触が痛くて目を閉じると、安室さんの声が「っ」と詰まった。
そこはズキズキと押されているように痛いので何かしらなっているだろうけど、そんな安室さんがそうなるほど酷いのだろうか

「あの…背中どうなってるんです?」

「…石の上にでも落ちましたか?赤紫になってます…冷やしましょうか」

一度カーテンが開いたと思ったらすぐに閉まって、何かしら動く音が聞こえてすぐにまた安室さんが戻ってきた。
再びシャツを捲りあげられて私の息が一瞬止まる、ヒリヒリズキズキ、とりあえず痛い

「冷たいですよ」

っていわれて覚悟していたのに。そこに触れたのは暖かく柔らかな感触で、安室さんの唇だなってすぐわかった、その後は本気で冷たくなったので声にならない声をあげた。
保健室の扉が開く音が聞こえる

「みょうじ先生、いますか?」

みょうじ先生!?

「はい、ちょっとまってくださいね。なまえさん、背中に布団かけますから、動かないでそのまま冷やしていてください」

また安室さんがベッドの傍らからいなくなる。さっきの声の主は友人だろう
男子生徒は体育の先生に捕まったらしく、今からこっちに来るらしい。それと友人は私の様子を見に来たらしく、安室さんが今日は家に帰らせるという旨を伝えて鞄を持ってくるように言われていた
しばらくしてさっきぶつかってきたクラスメイトがやってくる

「まったく、女の子に怪我させるとは…ほら、ちゃんと謝れ!ん?みょうじはどうした?」

「彼女なら背中の打撲が大分酷いので今ベッドで冷やしています。彼は…」

「みょうじと、二人にしてもらえませんか?」

「………ちょっと待ってください」

声は聞こえてるけど本当眠い…。冷たくなって感覚は無いし、それなのに安室さんがそれを取って変わりにまた暖かいものが当たった。なんなんだと思って安室さんを見ると、安室さんの眉が下がっていて、なんとなく泣きそうだと思ったから起き上がった

「どうしたんですか?」

私がそう問いかけて服を整えると、安室さんはいつものように笑った

「先ほどあなたを落としてしまった彼が、話しがあるそうですよ」

「え?」

ベッドの上に座ったまま、カーテンが開く
体育の先生が保健室から出る時に「二人きりにはさせられない。また何をするか」と信用していなさそうな声をあげていた。私は別に大丈夫なのに、と思って彼を見た後に安室さんを見ると、安室さんが外から見える保健室のカーテンを閉めた

「僕がいると何か都合が悪いですか?」

「あー…いいですよ、みょうじの親戚なんですよね?怪我させちゃいましたし…話します。鍵は閉めてください」

安室さんがそう言われて鍵を閉めて私の座るベッドの横にあった椅子に腰をかけ、その彼も足元にある椅子に座った。

「階段から突き飛ばしたのは…ごめんな。わざとなんだ…実はこの学校で宗教団体が出来てて、それに入るのは心身ともに健康である事ー…とかまあ、なんか色々あって、その中に科学の先生に気に入られるっていうのがあるんだよ。それで、お前科学の先生に好かれてるの知ってるか?その宗教ちょっと危なくて…女が入ると体とか…とりあえず何か、調教、懐柔とか無理やりされて、言う事聞かないとそれをネタに脅される。男の場合はお金を徴収されたり、死んだら違う世界に行けるとか…それで、とりあえず変な団体があるんだよ。次のターゲットはお前…だから、怪我でもさせようと思って」

あー、つまり女の人は簡単にいうとハニートラップてきな感じの事をさせられちゃうわけで、男の人はここにはオタクが多いから、二次元に行きたい人とか現実逃避したい人がうっかり自殺を強制されてしちゃうって感じなのかな?
私としては痛かったけど突撃された事には納得した。でも、安室さんが鋭い目つきで彼を見ていた

「もう少しやり方無かったんですか?打ち所悪かったらどうするんです!?」

「だから…体育の時とかよくみょうじの事見てたんだ…運動神経良さそうだったから、大丈夫かなって思って…」

「そん」

「落ち着いてください、先生。でも表だって私を突き飛ばした君…大丈夫なの?」

怒ろうとした降谷さんを遮るように問いかけた

「多分狙われる。だから」

「誰か来ます」

「頭下げて」

足音が保健室に近づいた時に私が大きな声を出した

「だぁかぁらぁ…ちょっとふざけてぶつかったって、それだけで許せると思うの!?すっごく痛かったんだから!みょうじなら階段から落ちても前転して着地できるとか、出来るわけないでしょ!」

「まあまあ、落ち着いてくださいなまえさん、彼もこうして謝ってる事ですし」

ガタガタという音が聞こえて言葉を一度止めた

「なまえちゃん…あれ、鍵閉まってる?」

安室さんがそっちのほうに歩み寄っていくと鍵を開けて、前にいるクラスメイトの男の子が頭を下げている状態のままそっちのほうを振り向いた

「すみません、男の子なので、女の子に頭を下げている姿見せたくないかと思いまして…」

「見ちゃった、ごめんね。なまえちゃん怪我してない?」

「いや…みょうじに怪我させた。病院連れていかないといけないと思う…ほんっとごめんな!今度は自分で実践してから誰かに試すよ!」

「試さないで!?危ないでしょう」

「鞄ありがとうございました。それじゃあ…今日は僕も早退して彼女を病院に連れていきます…そこの君も、一緒に来てもらえますか?レントゲンの結果にもよりますが親御さんにも責任を取ってもらうかもしれませんよ」

体育の先生が後から来たので事情を説明し、それから友人は怪我の結果教えてね、なんて言いながら手を振って見送ってきた。安室さんの車はいつもの車じゃなくて、多分風見さんのなのかなって思える車で、私は相変わらず安室さんに抱きかかえられて車に乗せられた。クラスメイトもついてきて、車に乗り込む

「びっくりした…みょうじ急になんでもないようにしゃべりだすから…」

「女子って噂話しをよくするからね…。一緒にいると嫌でも身につくのよ」

「もしかして彼女もその宗教団体の一員だったりしますか?」

「そう…なんだよ、そうかもって思ってて…何度も怪我の心配してたから」

そういわれれば確かに、安室さんは冗談で病院って言ってたと思ったのに本当だったらしく病院に連れていかれた。骨には異常無かったみたいで痛み止めとシップをもらい、発熱が起きた時は無理に薬を飲んで熱を下げないように言われた
また車に乗り、車を出す前に安室さんが彼に質問をしていた

「君、親はいるんですか?あぁ、別に先ほど言った時のように治療費寄越せって言うわけじゃないですよ」

「あ、あぁ…親はいないんだ。施設で生活してて、中学卒業と共に出た。本当は高校までなんだけど俺が望んで一人暮らししてる」

「ホー…?君の名前は?」

名前を聞いた後に安室さんは電話をするために外に出た。私はクラスメイトに何度も何度も謝られたけど、気にしなくて大丈夫だと伝える
それからその宗教団体の大元の話しと、なんで知っているかを問いかけたら、自殺した友人から全部聞いていたという。本当は極秘事項なのに、自分に教えていて、それ事態はバレてはいなかったけど、親や自分を人質に取られて好きな子を無理やり犯したその事実が耐えられなくなったらしい
私は、ちょっとだけスコッチの話しに似てて泣いてしまった

「なまえ!?何かされたのか!?どっか痛い!?」

電話を終えた安室さんが、慌てた様子で車の扉を開けてきたので首を振った

「話しが…悲しくてっ…恨んだりしないの?」

「出来れば、どうにかしたい」

ぐすぐすと泣きながら問いかけると、強く頷いていた。
私は鼻をすすって泣き止もうと目を擦って落ち着いているうちに安室さんが車を走らせた







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