毎度毎度この人にはどうしたものかと頭を悩ませる、前とは違う意味で。
一日目に仕事をしている時は休憩にコーヒーを飲みながら彼女はいるのかとか、結婚を考えてるのかとか、色々と聞いてきた挙句にため息だ。確かに彼女はいて結婚を考えていないわけでもない、それに彼女のほうはのんびりとその時を待つ、という状況で事実上婚約している状態だ。それを言ったらため息だ
まあみょうじなまえは一筋縄ではいかなさそうだとは思うが、降谷さんの場合みょうじなまえの事を考えすぎなのでないかと思う。たださらりと言ってしまえばいいのに、彼はなぜ言えないのか理解ができない。あんなに普段仕事ができて、かっこいいと思える姿を見てきているのにみょうじなまえのせいで降谷さんがおかしくなっている

二徹目になったらコーヒーカップをくるくる回し始めたし、なぜかウィダーインゼリーをかっこよく飲むとか言い出し…あぁ、降谷さんが変なのはあの人のせいだけじゃなかったな…。
とりあえず言われる前に彼女を連れてくるつもりだ。パスは返してもらっているものの、彼女からの公安への申請は終わったが公安から彼女への申請はまだ出されたまま…。彼女は多分降谷さんや組織の件もあってここに入れるはずだ
仕方なく加賀さんのほうへ行って電話番号を聞いて電話をした。降谷さんに会いにこないのかと連絡をしたら、2日前に会ったよーなんて言われた。この女本当に降谷さんが好きなのか!?
しかも明日関西に行くとか言ってはしゃいでる…この話し降谷さんは知っているのか…?
「降谷さんが好きなら来い」
と言い残して電話を切った。新たな書類を持って降谷さんを見に行くとちゅーちゅーとウィダーインゼリーを吸いながら頬を机にくっつけている状態になっていた

「お疲れ様です降谷さん…仕事増えましたよ」

「んー…」

降谷さんの机の上に書類を置けば、吸い終わったらしい彼が顔を上げて、吸っていたウィダーをゴミ箱に捨てた。先ほどよりも大分テンションが落ち着いたように見えるが、どうなんだ
書類を見てるのに、本当に見ているだけの状態の彼に寝るように進めてみたが、まったくもって休む気配が無い。

「みょうじなまえの事ですが」

「なまえがどうかしたのか?」

この時ばかり視線が鋭くなる。小さくため息を吐くと「明日関西に行くとか言ってましたよ」と教えれば降谷さんの目が開いた、iPhoneを開こうとしたようだが電源が切れていたようでため息を吐いてiPhoneをテーブルに置く。充電器を探しているようだが無いそうだ

「風見、持って無いよな」

「持ってませんね」

「はぁ…なまえから連絡来ているかもしれない。…関西ってなんだ」

「知りません」

降谷さんはそういうが、あの反応を見ると多分連絡はしていないだろう。コンコン、と扉をノックする音が聞こえたのでそっちに視線を動かした
すると部下に連れられてきたのがみょうじなまえで。降谷さんを見た瞬間にため息を吐いた

「元気そうじゃないですか!何でちょっと降谷さんが死にそうな感じで連絡してくるんです!?」

「降谷さんはこう見えて二徹目だ…」

「私忙しいんですよ」

入り口で腕を組んで恨めし気にこっちを見てくるみょうじなまえは頬を膨らませていた。降谷さん、この女と別れたほうが身のためです、と言いたくなったが降谷さんが立ち上がるとみょうじなまえのほうに歩み寄り、何の躊躇いもなく抱きしめていた

「はっ…間違えた風見!俺臭くないか!?」

「俺に聞かれましても…」

すぐに放したかと思えば今度は俺に寄ってきて、俺に抱きついて確かめようと両手を広げる彼から逃げるように腰を引かせると、みょうじなまえがクスクスと笑い出した。
その隙に降谷さんから抱きしめられた。やはり男の俺にはよくわからない、臭くは無いと思うが彼女がどういうかはわからない。それを見て大笑いする彼女はやはり降谷さんにどうなのかと思う

「降谷さん臭くないですよ」

そのうち笑いながらもそう言う彼女に降谷さんが俺を離してみょうじさんに歩み寄って行った。今度は躊躇いながらもみょうじなまえを抱きしめていた
それを彼女が受け入れたかと思えば降谷さんは結局放して彼女の肩を掴んだ

「関西ってどういう事です!?」

「新一くんが行くって言うから」

俺は頭がクラッとした、降谷さんの前で何言っちゃってるんだと。他の男について関西に行くってどういう事だ、と思ったら話しを続けた

「蘭ちゃんと新一の友達が関西にいるんだけど…服部くん…と、会った事あるー…よね?」

「……あぁ…ええ、あります…ね」

「その、服部くんと和葉ちゃんに会いに…行きたいなぁ…って、まだ会った事ないんだ」

「………ホー?」

よくわからないが、降谷さんの知っている人らしい。それでも降谷さんの機嫌はよくならずに肩に手を添えているその手がどかない。
痴話げんかなら、自分とそっちの彼女を連れてきた部下も下がらせてはくれないだろうかとは思ったが、俺はこの女が本当に降谷さんの事を好きかどうか見極めたいし、あっちの部下は興味津々といったようで見ていた

「お土産買ってきますね!」

やっぱりこの人は降谷さんで遊んでいるんだろう、そうとしか思えない

「降谷さん、みょうじさんって本当に降谷さんの事が好きなんですか?」

「…って言われてるけど、なまえ」

「はっ!?」

降谷さんがみょうじさんに話しを振ると、みょうじさんが声をあげた。その顔は段々と赤くなっていって「知りませんよ、もう!」なんて言っていた。それを見て降谷さんが楽しそうに笑う。確かに反応を見るからには好きだとは思えるかもしれないが、それでも納得が出来ない

「降谷さんの事好きならもう少し降谷さんの気持ち考えたらどうですか?」

「…気持ち?」

彼女が降谷さんを横目で見上げると、降谷さんが肩を竦めて恍けていた。
この二人はお似合いなんじゃないかと思うが、どうにも口を出したくなる。結局自分もそこの部下と同じで野次馬みたいなものなんだろう。面白がっているわけでは無いが、降谷さんは大事な上司という事もあり、何よりもいつも大変な思いも辛い思いもしてきている人だ、幸せになっては欲しいと思う

「降谷さん、この人でいいんですか!?降谷さんの事ほとんど蔑ろにしてますよ」

「わぁ…否めない…」

「なまえでいいんじゃなくて、なまえがいいんですって。風見、何が言いたいのかわからないが、なまえが俺の事を好きとか嫌いとかがわからないって言うなら答えは簡単。この人は好きすぎてこういった態度になるんだ」

彼女の肩から手を放すと、降谷さんがこっちのほうを見てきた。好きなのにそんな好きかどうかわからない態度を取る…理解が出来ない。どうやらそんな顔を思い切り顔に出しているらしく、降谷さんがため息を吐いた

「風見、なまえはキスすると俺が好きで好きでたまらないって顔をする。見せてやってもいいが…見せたら君たちがなまえに欲情するかもしれないだろ?」

「しないですよ。何言ってるんですか…」

彼女が降谷さんから一歩離れると、今度は彼女がため息を吐いて扉から廊下へ出ようとした

「風見さん、最後なんて言ったのか覚えてないんですか?だから来たんですよ。じゃあ帰ります…」

最後…「降谷さんが好きなら来い」俺は確かにそう言った。それだけで来たと言うのか…
いやそれも違うだろ。降谷さんが心配だから来たって言えよ…!それともこの女は俺に証明するために来たのか?

「まだいていいですよ?」

「面接あるので…それ終わったら明日の準備しないと。ちゃんと休みながら仕事してくださいよ…あと降谷さんにあまりにも呼び出されるので協力要請受けます。それじゃあ」

降谷さんが再び彼女に寄っていくと彼女の肩に頭を乗せた、それを彼女が笑って頭を撫でたかと思ったら顔を真っ赤にさせて降谷さんの背中を叩く

「ひぁ!ちょ、っと…降谷さん!」

降谷さんがリップ音をならして離れたかと思えば、彼女の首に紅い花が咲いていた。彼女は頬を赤らめながら降谷さんを押しやり、今度こそ帰っていった

「風見」

「はい」

「仕事終わらせるぞ」

「はい…」

彼女の影響は凄い。多分関西について行くつもりの気合いなんだろうな







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