「安室さん!」
「…はい、安室さんです」
お風呂に入ろうと思ってお湯がたまったか確認するために見に行き、そしてすぐに戻って咄嗟にいつも通りに呼んでしまえば、ソファーに座っていた彼が頭を背もたれの上に乗せてひっくり返るようにしてこっちを見てきた。そんな嫌味ったらしくわざわざ言ってこなくてもいいのに…私が言葉を止めていると彼が可笑しそうに笑って「それで?」と問いかけてきた。癖は抜けないんだからしばらく放っておいて欲しい
「お風呂にりんごが浮かんでましたよ!」
「そうゆうお風呂ですよ」
「あ、降谷さんが間違えていれたのかと思いました」
「なまえは俺をなんだと思ってるのか詳しく聞きたい」
「なんとも思ってませんけど?」
「ん?」
「え?」
体を元の位置に戻して、今度はこっちをちゃんと向いて来た降谷さんと見事な会話のキャッチボールをすませたと思ったのに、彼がこっちを見たまま動かないので私もじりじりと後ろに下がっていった。この状況がよくわからないけどちょっとだけ楽しく感じて笑ってしまう。「お風呂入ってきます」と逃げるように言い残せば彼からの返事が聞こえてきた。
ちなみに夜ご飯は物凄く美味しかった、メインダイニングで食べたんだけど少しだけ薄暗く感じるその場所は大人っぽくて少しだけ戸惑ったんだけど、一応私も大人だった。
安室さんは物凄くその雰囲気が似合っていて、ご飯もちゃんと食べていたから、え、ここに誰か潜入してるのかな!?なんてちょっとだけキョロキョロしていたら安室さ…あぁ、もう、降谷さんに笑われた。
洗うのを済ませてりんごの湯船に浸かって、うっかり彼がいるのを忘れてれーさんって呼ぶ練習していたら、外から彼が声をかけてきた。
「ごめ…ずっと安室さんとか降谷さんって言ってたから練習してただけです…」
「あぁ、何かあったのかと思いました」
「大丈夫。ごめんなさい」
彼が軽く声をかけて退室していったので、のんびり暖まった後に外に出て下着を出した。
Tバッグじゃないだけましだけどサイド紐の下着だなぁ、なんて思って…園子ちゃんだなぁってすぐにわかるよ。なんとも言えない気持ちでそれを履いてみたら素材が普通の下着よりもツルツルしてて気持ちよかった
それに着替えてパジャマを着て髪を乾かして外に出ると、彼とお風呂をかわって私はテラスに出て外を眺めていた
オレンジ色の光に照らされてきらきら光っている水面が綺麗。テラスにあるソファーの上に寝転がって空を眺めていた
のんびりとした音楽が流れていて気持ちがいい。忘れないうちに蘭ちゃんにちゃんと連絡をして新一くんにも連絡をしておく
そうやってしていたら降谷さんが出てきた
「風邪引く」
「気持ちよくて…今入りますね」
部屋の中に入ると彼が窓を閉めてブラインドを下げたので外が見えなくなった。れーさんがソファーに座っているのを見れば、私も彼が座っているほうのソファーじゃないほうに座った。ちなみにテレビは置いてないらしい
足にブランケットをかけてルームサービスやこのへんの観光スポットが書いてある雑誌を読んでいれば、彼が遠くに座ったのが不服だったようで、隣に座りなおしてきた
本当はわざとやった事だったから、ちょっとだけ面白くてクスクスと笑ってしまったら、わざとやった事だって気づかれてしまい、彼が私の雑誌を取り上げた
何も無くなった手元
「俺で遊ぶのやめてもらえるか?」
「なんの事でしょうか?」
クスクスと笑って問いかけると、彼が私の頬を軽く抓んで来たと思ったら頬をそのまますぐに撫でてきた。そして彼に引き寄せられると、頬にキスをされる
「じゃ、離れて欲しいみたいだから俺はあっちにいる」
「……」
彼が隣から立ち上がったので慌てて彼の服の裾を握ると、やってしまったと思った
れーさんが表情を緩めてきたから慌てて手を離した
「れーさん…そんな…笑う人でしたっけ…」
「そうみたいだな?安室みたいに作ってるわけじゃないけど」
「何か楽しいですか?」
「なまえといるのが楽しくて仕方ない」
何この殺し文句。誰この人…中身キッドとかじゃないでしょうね…いや、でも匂いはたしかにれーさん…キッドだったらまた話が違ってくる。彼を見ながら悩んでいたらちゅっとキスをされた。声にならない叫び声をあげて彼の胸を叩くと、彼が笑った
「何か考え事をしているようだったので」
といたずらっぽく笑われた。まあ、この人が本人以外の何者でも無いと言うことがわかった
立ち上がったままの彼を見上げて安堵の息を漏らすと、彼が私の前にしゃがんでこちらを見上げてくる。不安そうに一瞬瞳が揺れた
「あ、悪いこと考えて無いですよ…あの、座らないのかなって…隣に。それか私が抱っこしましょうか?」
「それは遠慮するよ…」
苦笑して言われるものの、彼がソファーの上にあがって寝転がったと思えば私の膝の上に頭を乗せてきた。ひゃーってなる、これどうしたらいいの?頭を撫でたらいいの!?どこに手を置けばいいの!?
ぐるぐると目を回していたら、彼が私の垂れてる髪を緩く掴んで自分のほうに引き寄せていったので、流れに従って前かがみになると、キスかな、と思って彼の唇に優しくキスをした。顔を離すと彼が顔を緩んで笑っているから、いたたまれなくて顔を隠した
彼の頭の重さが膝から消えると、彼が私の腕を掴んで顔の前からどかそうとするのを必死で抵抗した
「なんで隠すんですか…」
「もう…恥ずかしい…いたたまれない…」
「いい加減慣れて」
そのうち慣れるんだろう、と思ってとりあえずうなづいておくと、手が今度こそ退かされて瞼から頬までキスをされてくすぐったくて、笑いながら「んー」と唸っていたらそのまま唇にもキスが降ってきた。ただ彼の唇が私の唇に触れただけ、それだけなのにいつも彼に触られてた時の事やこれからの事を私の体が期待してか、熱を持ち始めた。彼の唇が熱い
そのまま押し付けてきたようなキスから、唇を優しく挟まれるような啄むキスをされて一度解放されて、手も一緒に放してくれた。それなんだけど彼との距離はまだ近いままで、視線を逸らすと自然と顔もあっちのほうを向いてしまう
すると顎を軽く掴まれて彼のほうに向かされた。額と額が合わさり、彼の唇が再び重なる
彼のキスは私を好きだと言っているようで、気持ちもくすぐったくて仕方ない。
優しく、優しくしてくるキスから少しずつ深いキスに変わってくる時が一番心臓が跳ねて仕方ない。唇の隙間から彼の舌が侵入してきて、舌を甘く噛まれて絡められる
必死で答えようとするけど、彼のように上手には出来なくて、声も漏れちゃうし手も震えていた。私は彼とのキスは気持ちよくて凄く好き、でも私は上手に出来なくて少しだけ情けなくなってくる
彼の顔が放れて目が合うと、その瞳から目を逸らした