彼も私の背中に手を回してぎゅっと抱きしめてきたと思ったら、いつも通りに首筋に鼻先を埋めてきた。

「そう来るとは思わなかった…」

「ごめんなさい」

「夢だって思ってるのはこっちだって同じですよ。だからこうやってなまえの存在を確かめるみたいに抱きしめてるのに」

彼が呼吸をするたびに私の首筋に息がかかってくすぐったい。彼の心臓の音が聞こえているから、多分私のも聞こえているのだろう。彼の言葉に頷くと彼は私の首筋にちゅ、と音を立ててキスをしてきた

「またですか…」

「首の匂い好きです」

「自分の匂いわかんないです。降谷さんのも嗅がせてください」

「あれ?さっきみたいにれーさんって言わないんですか?」

「っ……盗み聞き立ち聞きその他もろもろ勝手に聞く系禁止です」

「それは約束出来ないな」

クスクスと笑う彼の首筋に、隙ありと言わんばかりに鼻を寄せる。彼がくすぐったいですよ、と笑ってるけどこっちだっていつもそうなんだから、こんな時くらい我慢して欲しい。うん、私も彼の首の匂いすっごく好き、匂いフェチとかじゃないはずなんだけど、これは多分何回もやりそうだ。彼の真似をするように首にすりっと鼻を寄せると彼が体を揺らした

「降…れー…さん、良い匂いしました」

「それは良かったです」

「首筋ってみんな良い匂いするんですかね…」

「本能的に好きな人だと、良い匂いに感じるそうですよ」

「……」

私が膝の上から下りようとすると、下から悪戯っぽい顔をした彼が見上げてきた。そういえばそんな事は聞いた事があるけど、それでも今のはちょっとずるいんじゃないかと思う
まるで私が彼を好きだって言わせているような…私ってれーさんに、帰ってきてから好きだって言ったかな…。さっき新一くんに言っただけだ、私が下りようとするのを彼は許さずに、そのまま腰の後ろで手まで組んでしまう始末。彼と目が合ったので、私から彼に触れるだけのキスをした。彼が驚いたような戸惑ったような顔でこっちを見てきて、私は顔だけが熱を持ち始める、視線を逸らして、彼に視線を戻して…

「好きだよ」

自分でもびっくりなくらい小さな声で、物凄くかすかすだった。
あぁあああ…もっと可愛く言えないのか…もっと可愛い声で、甘えたように言いたかったのに、緊張と恥ずかしさやらで彼に聞こえたのかどうかさえわからない。誤魔化して彼を抱きしめてしまおうと思ったのに、彼に片手で肩を押されてくっつく事が出来なかった

「うん…俺も好き。大好き、愛してる…マリッジブルーになるなら、不安がられる前にすぐに籍いれるのも有りですねー…」

彼が私の顎や頬や口にキスをしながら愛を囁いてくる。と思った瞬間に真顔で言われるから苦笑いを返して首を少しだけ傾げた。付き合ってる時も、黒の組織が終わった後も、うじうじして、うだうだして彼を不安にさせた
新一くんが言ってたけど、自分だけの気持ちじゃないんだよね…彼がずっと私のそばから離れないのも、こっちを見て笑うのも、嬉しいって思ってくれているんだってそう感じてもいいよね

「ごめんなさい…逃げて。もう逃げないから…一緒に暮らしたりするの?」

「当たり前…婚約しても結婚しても別居?」

彼が可笑しそうに笑いながら言ってくるけど、そのうちこっちを見上げてきて「嫌ですか?」と問いかけてきた。それには首を振る

「一緒に暮らしたら色々と…嫌われる要素も増えて行くかと…」

「あはは、嫌えるものなら最初から求婚なんてしない。嫌われるものなら嫌われてみてください」

最初笑ったかと思ったら、いきなり真顔で言われてこっちが戸惑った。彼の真顔って…結構貴重な気がする、降谷さんの時は眉間に皺を寄せていたり難しい顔をしていたり、何か楽しそうにしているし、安室さんの時はにこにこしてるし…真顔かぁ…

「嫌われないように…努力します…」

「全部見せてくれたっていいんですよ?」

「や」

私が断ると彼が可笑しそうに笑って、私に口付けをしてきた。唇を押し付けるようなキスをされて、離れてまたされて。頬から首にキスが移ったきたと思ったらそのキスが鎖骨に行ったので、彼の肩をグッと押して離れた。彼がこっちを見上げる
そんな目で見るのをやめて欲しい…、私が視線を逸らすと、彼がふっと笑った

「今何を思ったかわかったんだな?」

「いえ…別に、何も…」

「……いいよ、夜まで待つから」

彼がため息を吐いて私の背中をポンポンと叩いてきた。あぁ、やっぱりそうだったんだなぁって思って苦笑する。彼に抱かれるとしたら半年以上ぶり…で、半年していなかったら少し慣れたかなって思ったのもかた元に戻ってしまう。また私は彼の素肌に触れてー…って事をしなくちゃいけないのかと思ったら恥ずかしくて彼に抱きついた

「籍いれる前に身辺調査入るけど、大丈夫か?」

「うん。親族に事故起こした人も犯罪起こした人もいないよ」

「……すでに見たけど。なまえとまだ会って間もない頃に」

「おぉ…」

べつに見られて不味いものは無いのでべつに大丈夫だけど、それなら今から確認しなくてもよかったのに。個人情報見られるのはいいけどプロフィール見られるのには抵抗するがある、まあさすがにそこまで詳しくは書いてなくて、どこどこ出身とかそういった所だとは思うけど

「あ、そういえば…蘭ちゃんたち結婚するとかの話し知ってるんですか?新一くんは知ってましたけど」

「ええ、久しぶりに会うしプロポーズしたいんだけど、多分なまえさん着替え持って来ないと思うのでって言ったら喜んで協力してくれましたよ」

「断られるっていう…のは」

「ほとんどゼロですね」

「ゼロですね!!ゼロで零なだけに!!」

彼がどう思ってその事を口にしたかはわからないが、私にとっては楽しくなるお話し。内容が内容なのにふざけてしまったら、彼が眉を下げて私を見上げてからぽすっと私の肩に顔を埋めてきた

「そういえば結婚式したいですか?」

「…いえ、べつに」

彼がそう簡単にできる立場じゃない事はわかっているし、色々と大変なのもわかってる。ドレスを着たいか着たくないかと聞かれたらそれは乙女の夢だから着たい気持ちもある、でもそれを無理やりやるほどかと聞かれたら、別にそうでもない。別にと返事をした瞬間にお腹がなった

「……帰りたい!」

私が彼から飛び降りて、どこかに潜り込んでしまおうと思ったのに彼に手を掴まれて思い切り笑われた。それから困った顔で「離れないで」と言われてしまったら離れられない

「だ、だって朝ごはんから食べてなかったんですもん!急いでたから!」

言い訳めいた事をいうと、彼が立ち上がってどこか連れて行ってくれると言うので甘える事にした。今はもうおやつの時間だから茶屋に向かった
もう迷わない。ごめんなさい、れーさん







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