「蘭ちゃん!新一くん、服部くん、和葉ちゃん、や、っほぉおお!!!」

蘭ちゃんたちは就職も進学も内定が決まったらしく、久しぶりに遊んでくれるというので日帰りで京都に来た。私は仕事の関係で蘭ちゃんたちよりも1日遅れて来たんだけど、新幹線乗り場まで来て待っててくれた4人を見て、蘭ちゃんに飛びついた。

「なまえさん、久しぶりです!」

「久しぶり、会いたかったよー!なんで地元じゃなくて会ってるのが京都なんだろうってお話しだけど」

抱きついた蘭ちゃんに頬をすりすりすると、蘭ちゃんがくすぐったいですよ、と言ってクスクスと笑っていた。その後ろから和葉ちゃんも抱きついてきてくれて私は幸せサンドイッチになりました
すぐに服部くんに和葉ちゃんを取られたので蘭ちゃんも解放してあげた。もちろん4人にはお祝いに何かしら奢ってあげるつもりだったのだが、それは夜になった。

昼間は京都を観光してまわったり、日帰りの温泉に入ったりして楽しんだ

「そうそう、前来た時はなまえさん工藤くんとなかよう見えて、めっちゃ焦ったわー」

「和葉ちゃん、私の話し聞いてくれないから困っちゃったよ。でも私のために焦ってくれてありがとうね」

「ほんまごめんなぁ…なまえさんもごめんなさい」

「友達思いの和葉ちゃんが大好きです」

個室の居酒屋でご飯を食べながら女子トークをしている、居酒屋をチョイスしてくれたのは新一くんで、居酒屋に行って楽しいのは私だけなのに、みんな賛成してくれた
お酒を呷って和葉ちゃんを拝んだりして、楽しそうな私たちの笑い声が響く

「そういや、最近安室さん見ねぇけど、何かしてんのか?」

「うん…ポアロもやめちゃったみたいだし、探偵の仕事が忙しいのかなって思ったんだけど」

あぁ…ちょっと聞いて欲しくなかったなぁ…彼と離れてからもう3ヶ月経ったから、もう少し経てばきっと連絡は来るだろうけど、まだ何もなし。だから少し彼を忘れる時間が欲しくて無理やりにでもはしゃいでいたのに、突っ込まれてしまった

「そうそう、何か忙しいみたいで私も全然会ってないよ」

「そうなんですか…今度また安室さんと6人でお話したりしましょうね」

「せやせや!あたしらが20歳になったら一緒にお酒も飲めるしな!」

「アホ、そんなんまだまだ先の話しやろ!」

アホ、高校卒業したらあっという間に20歳になるって事を思い知れ服部くん。
土日も仕事をいれていたせいで、私は次の日も勿論お仕事、だからお酒も程ほどにして帰らないといけない感じ。それでも時間ギリギリまで遊びたくて、カラオケに行ったりしてはしゃいだ。蘭ちゃんたちはまだ一泊するらしく、私はお見送りはいらない旨を伝えたんだけど新一くんが「安室さんの事で話しがあっから、先に蘭たちは旅館に行っててくれ」って言ったので、新一くんが送ってくれる事になった。

蘭ちゃんが気にしないか?と思ったんだけど、蘭ちゃんが「お願いね」って言ってたから、もしかしたら私が元気無いとか、そういうのがわかってたのかもしれない。
新幹線乗り場まで歩いている途中に、新一くんから問いかけられたのがさっきの安室さんの話し。事情を説明すれば「なるほどなぁ…」と呟いていた

「それでオメー…最初っからテンション高かったのか…」

「ちょっと、今日だけでも記憶から消し去りたかったんだ…」

「そりゃ、無理じゃねぇか?」

「え?」

「たとえ今日だけでも、消し去りたいって思ってるのが、もう安室さんを想ってる証拠じゃねぇか」

「あー…本当だ」

「だろ?」

新一くんが可笑しそうに笑う。やっぱり色々と言う事が違うなぁ…でも恋愛に関しては結構鈍感だと思ってたんだけど、人って成長するんだなぁ、って失礼な事を感じていたけど心の中でだけの事だから許してくれ
新幹線乗り場の前で足を止めると、「今、蘭ちゃんの気持ち」と言うと、新一くんが気まずそうに困った顔をした。そう、蘭ちゃんはいつもこんな気持ちで、組織との決着をつくのを待っていたはずなんだよ
違うとしたら、私と安室さんが完全に恋仲だってくらい…

「ありがとう、私帰るね」

「おー、何かあったら連絡寄越せよ?愚痴とかだったら聞くからさ…蘭も、オメーから連絡来ると喜ぶぜ」

「あはは、ありがとう」

新幹線が来たから乗り込むと、彼に手を振った。新幹線の中で考えてしまうのはやはり彼の事。暑い夏はもうなくなって、すっかり肌寒く感じ始めていた。
三ヶ月…長かった、ずっとスマホの音量をあげたまま眠って、仕事の時も傍らに置いていたけど、彼からの連絡は無い



蘭ちゃんたちと会ってから、また二ヶ月たった。今は1月
仕事をして、ゲームとかもしなくなったせいで、お金ばっかり貯まっていったけど嬉しくない。ニュースを見るのが日課になって、毎日朝につけて、帰ってきてからもずっとつけている。たまに蘭ちゃんと園子ちゃんが呼んでくれたりして、お話しをしたりする時間が楽しいのに、会話が一瞬でも途切れたり、トイレに行ったりしてしまうと、すぐに安室さんの事を思い返してしまう。一度家に行ってから、彼の家には行ってなかった
あの部屋から段々と、彼の匂いが消えていってしまうんじゃないかとか、そんな事ばかり考えていて、それが怖くて仕方ない。
もう、何か、無いって思ってたのに生きてるのかさえわからなくなってきた。本当は心の片隅でもしかしたら、って思ってたんだけど、それでも黒の組織は壊滅したんだから、彼が死ぬ事なんてほとんど無いって

赤井さんは海外に帰ってしまったけど、変わらず電話は繋がる。たまに電話をくれて新一くんたちの話しをするだけ。赤井さんに頼めば安室さんの事はわかるはずなのに、教えてって言わなかった

私は仕事帰り、久しぶりに彼の家に行って鍵を開けた。
中に入ると相変わらず彼の匂いがする部屋に、嬉しくなって、だけど寂しくもなった。
彼の部屋の寝室に入ると、彼と一緒に寝ていたベッドに寝転がって、ただそれだけで彼の匂いが私の鼻をくすぐる

抱きしめて欲しい
私がこうやってあっちを向いて眠っていると、必ず彼は後ろから抱き着いてくる
私の髪に顔を埋めて、首が出ていたら首にキスをしてきて
それがくすぐったくて…でも幸せで。
彼の腕の力の強さとか、匂いとか、感触とか、全部全部私はまだ覚えてる

気がついたら泣いてた
彼の枕が濡れてしまうのに、彼の枕に顔を押し付けて泣いていた
寂しい、会いたい

しばらくそうしていたけど、どうしたって彼には届かない。
濡れた枕をべしべしと何度も叩いて、やっぱりソファーに座った


紙とペンを取り出して
ただそこに


あいたい


って書いただけ。
私は部屋を出た







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