彼との連絡が取れない間は私は仕事をした。
慣れた仕事も簡単に終わってしまう、今までも彼と一ヶ月連絡しない事があったが、それはそれでそこまで気にしていた事でもないのに、今回は本当に会えないし連絡も取れない。そう思うと人って急に寂しくなってしまうもので、私はゲームもする気になれなくて毎日残業していた。
残業をしたとしても20時くらいまでしか仕事は出来ないので、切り上げて外に出る。夏が終わりもうすぐ秋と言ってもいいはずなのに、以前私が住んでいた所と違ってまだまだ暑くて扇子が必須。あまり考え事をしすぎて足のスピードを速めてしまえば、家につく頃には汗をダラダラかいてる事が多いので、のんびり歩いていた

「あれ?みょうじ…?あ、すみません、人違いでした…」

すれ違いそうになっていた人に名前を呼ばれて足を止めて顔をあげると、そこにはメイトくんがいた。その制服は帝丹高校のじゃないか、と思い彼を見遣るものの、彼は慌てて私に向かって謝った

「メイトくん、久しぶりだね。転校したの?」

私がそう問いかけると、彼は勢いよく下げた頭を上げて私を見た「だよな!?」なんていうから可笑しくて笑ってしまった。彼がいない生活は全然慣れるわけも無かったから、少しメイトくんと話しがしたくなったので、飲み物を買って公園に行った

「あの後学校が成り立たなくてさ、それで廃校になる時に受け入れしますっていう学校の中から帝丹を選んだんだ。でも…まあ違和感は感じてたけど、みょうじってやっぱり年上だったんだな?」

何だ、新一も知ってたなら教えてくれればいいのに…まあ、私に言えてもメイトくんには言えないか…

「そうそう、探偵関係でちょっと付き合ってたんだ」

「そっか…あ、いや、そうなんですか…みょうじ、さんっていうのは本名?」

「やめてよ、敬語じゃなくていいよ。名前は本名だよ」

急にたどたどしい敬語になる彼も、しゃべりにくそうに頬をかいていたので、笑ってそのままのしゃべりかたにして欲しい事を伝えると、彼ははにかんで笑った。
可愛いな、これが本当の高校生だろ。買って来たアイスティーを飲みながら彼はその後の話しをしてくれて、というか時間は大丈夫なのか聞いたら、一人暮らしなので問題ないと言われた

「みょうじは、あの人とはどうなったの?」

「あぁ、今会ってない…って、別れたり喧嘩したんじゃなくて、ただ彼が今忙しいからしばらくお留守番」

「そっかー…寂しく無い?」

「寂しいよ。まだ1ヶ月くらいしか経ってないのにね…だから今日は彼の家に少しだけ言って、何かお手紙でも置いていこうかなって」

「電話とかメールは?」

「それもしばらくお休み」

可笑しそうに笑う。彼の話しが出来るのは嬉しい事、この間メイトくんには色々な部分を見せてしまったから、結構話しやすい。蘭ちゃんも園子ちゃんたちももう就職活動とか、受験とか何か色々あって忙しそうで、本当にたまに連絡をくれて、時折会うけど、前みたいに頻繁に…っては行かなくなった。遊んでくれる人は職場で出来た友人だけで、ちょっと寂しく感じたりもする。彼と1時間くらい談笑してからアドレスを交換して別れた

彼の家の鍵を使うのは、物凄くドキドキする。まるで初めて入った時みたいな緊張の中、鍵を開けて中に入った
開けた瞬間に部屋の中から彼の匂いがしてきて、凄く落ち着いた。座って玄関で靴を脱いで、中に入る。何かをするわけじゃないけど、ただソファーの端に座った、私がいつも座ってるその場所の隣に、彼がいつもいた。私がこうやって彼を見ると、彼が笑う
こっちからキッチンを見ると、彼の背中が見えて、お手伝いをしに歩み寄って行った。
本当はお手伝いじゃなくて、私が作ってあげられたら一番いいんだけど、彼の作っている背中と、作っている手つきとか、その全部が大好きでお手伝いだけにしたいのは私のワガママ

たまにこっちで私が一人で彼の何かを触っていると、目を細めて変態呼ばわりしてくる彼も、ほとんど変態なんだけど。
ソファーに一人で膝を抱えながら、いるはずの無い彼を頭の中で描いていた

寂しいなぁ…

お手紙を書こうかな、なんてメイトくんには言ったけど、書いても誰も見ないかもしれない
それが虚しくて、やめた。

それから少しして、私は部屋を後にした









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