風見さんに仮眠室に押し込まれた。前のように放り投げられるような事はされなかったけど、ちょっと転びそうになった
怪我をしている時はたまに会いに行ったけど、安室さんはしょっちゅう寝てて、起きてる彼に会えたのは一度きりだった。しかもなぜか顔を背けられるしよくわからない
すやすやと眠る彼の顔は初めて見た、いつも後ろから抱きしめられて起きるし、あとは目を開けたらいつもすぐに目を開けたり…とりあえず彼が私の前で眠っているのはあまり見たことが無い

彼の頬に人差し指をつんつんと優しく突く
起こさないように、と思ってあくまでも優しく

「ふーるやさーんなまえ来ましたよー…」

彼の頬を柔らかくつまんでみて話しかけるものの彼の表情は変わらない。しばらく会ってなかったから、もしかしたら自然消滅というものになっているかもしれない

「まだ私たち付き合ってるんですかねー…あ、降谷さんじゃなかった…安室さんか…」

というか、安室さんという存在はまだあるのだろうか。彼の胸に手をあてると彼の胸が規則正しく上下していた
可愛い…。いつぞややられたように彼の唇を人差し指でなぞってはくすくすと一人で笑っていた、彼が唇をもごもごさせる姿が可愛くて。

「じゃあ帰りますね」

そう言い残して帰ろうとしたら手首を掴まれた

「えぇ…?お決まりですね…でも今日は寝てると思いました」

「いえ、今起きました…」

彼が大きな欠伸を漏らすと私の手首を離してくれた。彼が起き上がって顔を顰める、まだ全然眠っていないはずなのに、結局私が彼を起こしてしまったらしい「起こしてごめんなさい」というと彼が目を細めて笑った

「あなたに起こされるなら喜んで」

「はぁ…」

私の返事に笑っていた安室さん…の眉が下がった。彼の手が私の手に触れたかと思ったら、そのまま引き寄せられて彼の足の間に私が立つ形になった。そのままもう片方の手も彼に優しく握られる

「なんです?その微妙な反応は…」

「あ、いえ…久しぶりですね!」

「そう、ですね…前回まともに会ったときはびんたされましたし?なまえさん眠っちゃいましたし。怪我をしてる僕に寄りかかって」

それは本当に申し訳ないと思ってる。ただ彼らみたいに鍛えているわけでもなんでもない私にとって、一日中走り回って、仕事してバタバタ…は、すごく疲れたんです…子供みたいな事してごめんなさい!って言いたいんだけど、彼のために走り回ったと自供しているみたいで、なんとなく言うのは憚る。なんか押し付けがましいし、彼のためと言うよりも私のために等しい、私が彼に死なれたりすると嫌だから

「それは…その、ごめんなさい」

「あの時は久しぶりに会えたと思ったら僕を庇うしビンタするし…困った人ですね、本当に…しかも暫く全く連絡寄越さないですし…組織と色々ある時は仕方ないと思いますけどその後も全く連絡くれないですし…。なまえさんにとって僕ってなんです?」

お見舞いに行った時の話しは彼がほとんど眠っていたからカウントされないらしい…
すっごく困る質問が飛んできた。なんて答えればいいんだろうか
私は彼から視線を逸らす事が出来ずに真っ直ぐに彼を見ていた。彼氏?え、違う…?私にとって安室さんは…降谷さん…で?なんて答えて欲しいのかまったくわからない
口を結んで、どういっていいかわからない私に彼はため息を吐いて腰に手を回して抱きしめてきた。私のお腹に彼の額があたる。そこだけ暖かい

「あの…私、たちって…彼氏と彼女ですか…?」

私の問いかけに彼が勢い良く顔をあげた。「は?」と眉を寄せて言ってくる彼が段々と顔を顰めて視線を私じゃなくて違う方向へと向けたかと思えば「あぁ」と納得したような声をあげる

「そうでした、これで降谷もあなたのものです。嬉しいですか?」

あ、やばい、チョップしたい。でも満面の笑みで言ってくるからため息が出た
私のお腹あたりにある彼の頭をぎゅっと抱きしめて頭にチュッとキスをすればすぐに開放した

「なまえ…」

彼が熱っぽい視線でこっちを見てくるが、スマホが振動したのでその電話を取った

「もしもし?」

”あ、あの…えっと、俺”

「新一だ!?戻ったの!?」

「なまえ、新一って誰?」

”そーなのよ、やっと蘭の旦那が戻ってきたから、みんなでパーッとやらない?ホテル貸し切ったのよ。安室さんも一緒にって思ったんだけど安室さん全然ポアロに顔出さないから呼べなくて…なまえさん連絡先知らない?”

目の前にいる彼が聞き耳を立てているので、視線を彼に向けると彼が可笑しそうに笑って「仕方ないですねぇ」と呟いた

「安室さん来るって言ってるよ」

”え、やだ、ちょっと今一緒にいるんですか!?きゃあー!!よかったー!!らーん、ちょっと蘭ー!!”

あっちできゃあきゃあ言ってるうちに降谷さんがこっちを見たのでどちらからというでも無く、唇が重なった。もちろん即座に離れたけど。不服そうに私の背中を人差し指でなぞってくる彼にクスクスと笑っていた

”じゃあ安室さんとなまえさんに部屋一室取っておくわ。私たちも泊まるしね。それじゃあまた連絡するわ”

「ちょ、園子ちゃん!?取らなくていいっ…園子ちゃーん!?」

私が一生懸命しゃべっても、受話器の向こうから聞こえるのはツーツーという無機質な機械の音だけ。なんてこった…私が頭を抱えるのを彼は笑って見ていた

「じゃ、寝てください。私帰ります…それまでちゃんと休んだりして仕事終わらせないとだめですよ。疲れた顔してパーティーきたら怒りますから!じゃ」

「なまえ」

「もーなんですか!」

帰ろうと踵を返したのに、結局呼ばれて元の位置に戻る事になる。彼を見ると、彼が「キスしてくれたら頑張る」と言ってきた
ふぅと小さくため息を吐いて彼の前にしゃがむと、彼が啄ばむようなキスをしてきた。

「ん…!」

私が声を漏らすと、彼が楽しそうに笑う。久しぶりすぎて、ただ唇を重ねただけだっていうのに体が反応した。恥ずかしいにも程があるので慌てて帰りました







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