「安室さんは食べないんですか?」

「チョコバナナですか?チョコバナナはやっぱりなまえさんが食べたほうがいいと思いますよ、絵的に」

「……徹夜…」

「してないです、昨日はちゃんと眠りました」

「ねぇ、安室さん楽しいですか?」

「それはもう。なんでです?」

先ほどからほとんど笑いっぱなしの安室さんに、時々不安になる。本当に楽しくて笑っているのか、それを作っているのかが気になって
彼が作った笑顔を見せている時、私はそれをわかるとは思えないから。だから聞いてみたら、彼が真顔で頷いてきたので、楽しいんだろうなって思えた。そこで笑って取り繕うように言われたら、もしかしたら無理しているのかもしれないって思ったかもしれない。
チョコバナナを食べているのを物凄くジッと見られていて食べづらい

「食べたいんですか!?」

「食べてるなまえさんが見たいんです」

気持ちがよく理解出来ないので、ちょっとスマホをつけて検索してみたら「色っぽい」「生々しい」という言葉が出てきたので安室さんを見た。すると苦笑いされたので、安室さんの口の中にチョコバナナを突っ込んだ

「食べてる安室さんが見たいんです」

「やられました…はい」

彼が少しかじると、すぐにこっちに渡してきた。そのチョコバナナを全部食べれば、彼がそのゴミを袋の中に入れてくれた。次に渡されたのはりんご飴
花火が始まるという事で、階段のところにはぞくぞくと人が集まっていた。とは言っても花火は二部にわけられていて、二部のほうが本番で一部はちょっとした打ち上げ花火とナイアガラをやるらしく、そこでそのままリンゴ飴を食べながら見ていた

「すっごい綺麗に見えますね」

「たまたま座った階段だったんですけど、ここにしてよかったですね」

安室さんとしゃべりながら見ていたが、花火の音が五月蝿くてあまり聞こえなかった。
飴の部分を食べ終わると、今度はリンゴの部分に差し掛かったのでシャリシャリと音を立てていた。安室さんが傾いてきたので、私も耳を傾けると

「リンゴ飴食べてるなまえさん可愛いですね!部下が言ってる事は本当でした!」

と言われた。
あれ、待って、なんか公安で聞いた話しだな、なんて思って安室さんを見ると、彼は花火を見ていてその瞳がキラキラと輝いていた。
変な感じだな、と思ってその目を見ていたら彼がこっちを見てはにかんで笑ってくる
何か今日の彼は物凄く甘くて、私を凄く甘やかしてくるし、ちょっとだけ照れくさい
花火が終わって、また人がいなくなっていくと、リンゴ飴に飽きてきた。そろそろお肉が食べたいな、とか思う
りんご飴を口から離してすぐの出来事。私の唇に彼の唇が重なって、そして唇をぺろりと舐められた

「なっ…」

「甘いですね。二重に」

顔を赤くしていると「あ、りんご飴です」と言われて頬をつつかれた。
んんんん、なんだこの人ぉおお!!!って物凄く叫びだしたい衝動にかられたけど、とりあえず頑張って落ち着いてポーカーフェイスを気取りたくなった、ただの願望だけど。
私が立ち上がって階段を駆け上っていくと、彼もその後をついてくる
りんご飴を食べ終わり、手を繋ぎながら屋台がある真ん中を通って行く。苺のカキ氷に練乳をたくさんかけてもらって、また違う電球ソーダのお店があったからいれてもらった

「帯きつくなったりしないですか?」

「大丈夫ですよ、呼吸浅くしてますし!」

「…それきついんですか?ちょっと深くしてみてください」

「ダメです!浴衣脱いだ後の開放感がいいんですよ!」

なんて、軽口をたたきながら進んでいき、私はカキ氷を食べながら進んでいくせいで、彼と手を離していた。ただ彼のほうは私から離れないように、私の腕を持って誘導していく
後で食べろ、と言ってこない彼の優しさと、上手く誘導するその様子が面白くて、別にすぐに食べたいわけじゃなかったけどそのままにした。
段々と下駄ですれた足が痛くて、足をゆっくりにしていくと、道の両端にあったベンチの一つが開いていたのでそこに座らせられた。彼が私の前にしゃがむ

「靴擦れしました?」

「知って…たんですか」

「あたり前です。気づかなかったら言わないつもりだったでしょう…絆創膏買ってきますからかき氷食べて待っててくださいね」

「はい…」

若干冷たい物言いに頷くしかなくて、大人しくカキ氷を食べながら待っていたら、隣に人が座ったので傍らに置いていた電球ソーダを自分のほうに寄せた
隣に座ったのは男の人で、腕を背もたれの上の部分に乗せていて、私の後ろの背もたれのほうにまでその手が届いていて、まるで肩を抱かれているような気がしてベンチに浅く座りなおした

「彼氏とはぐれたんですか?」

最初私に話しかけられてるわけじゃないと思ったが、浴衣の袖のところを引っ張られたので振り向いたら、隣に座った男の人と目が合った。今までその人の顔を見ていなかったから気づかなかったが、ガラが悪い、赤井さんよりもガラが悪い。
私はしゃべることなく首を振ると「じゃあ一人?」と問いかけられて、それにも首を振った

「一緒に遊ばない?」

と、問いかけられたのでまた首を振ると、そのうち「何かしゃべれよ」って言われた。
そういわれてもしゃべる必要が無いから首を振るだけにしておいたのに

「なまえさん?」

「蘭ちゃん!新一くん!」

聞こえてきた声に顔をその人から違う方向へ向けると、蘭ちゃんと新一くんがいたので嬉しくて笑ってしまった。

「一人ですか?安室さんは?」

「靴擦れしたから絆創膏買ってきてくれるって」

「わぁ…痛そう…私絆創膏持ってますけど、安室さんが買ってきてくれるならそっちのほうがいいですよね」

「うん、ありがとうね」

その隣の人そっちのけでしゃべっていたが、新一くんたちはその隣の人に話しかけられていたのに気づいていないらしく、安室さんが来るまで一緒にいてくれようとしたのだが、邪魔しちゃ悪いので断った。

「なんだ、彼氏待ってるのか。じゃあ今暇じゃん?」

「暇じゃないです」

しつこい、と思って食べ終わったかき氷のカップにストローを入れて、落ちないようにストローの部分を親指で挟んで持った。安室さんは動かないでって言ったけど、この人が五月蝿いから安室さんを探しに行ったほうがいいんじゃないか。電球ソーダを持って下駄に足を入れようとしたら、安室さんが走って来た

「お待たせしました」

「お帰りなさい」

安室さんが再び私の前にしゃがむと、絆創膏をつけてくれた。「彼氏?可愛い顔してるね」と、まだ話しかけてくる隣の人を安室さんがチラリと見た
その目が私の後ろに伸びている手を辿っているのが視線でわかる
絆創膏をつけてもらったので、下駄の中に再び足を入れると、立ち上がった。すると安室さんがカキ氷のゴミを持ってくれる

「あのさぁ、シカトかよ!!」と、ベンチを蹴っ飛ばして立ち上がるその人を、安室さんが見た瞬間だった。目の前から見た事ある人が来たので私が大きく手を振る

「高木刑事ー!佐藤刑事ー!」

「みょうじさん!」

「なまえちゃんこんにちは、久しぶりね」

「デートいいですね…デート…ですよね?」

「あはは、うん、今日は休暇とって」

「安室さん大変だ、新一くんもいたし刑事がここにいる、事件が起こりそう」

隣にいたベンチを蹴っ飛ばした人は物凄く固まっていた。しかも蹴られている所を佐藤刑事に見られていたため、佐藤刑事はその人を睨んでいた
私が事件が起こりそうだって呟いて数秒後の事、通り魔事件が始まった

「高木くん行くわよ!」

「は、はぁい…」

「なまえさっ…」

別に置いていかれてもよかったのに、私とベンチの人を交互に見ると、安室さんが私を抱きかかえようとしてきたが。タイミングよく通り魔がこっちに来たらしく安室さんが私から離れて捕まえに行った
私はまたベンチに座ってその様子を見ている。みんながきゃあきゃあ行っているから、その騒ぎを聞きつけて走ってきたのは新一くんと見回りをしていた警官
蘭ちゃんも浴衣なのに走らされてパタパタとこっちに来た。

「大変だね、蘭ちゃん大丈夫?」

「なまえさんも、大変そうですね」

先ほど隣に座っていた人は騒ぎに乗じて逃げていったようだ。
蘭ちゃんと二人で並んでベンチに座っていると、通り魔を捕まえ終えたらしく安室さんと新一くんが戻ってきた

「いやーごめんな、蘭」

「ほんとにもう…!事件だって聞くとすぐに飛んでっちゃうんだから…私の事も考えてよね…」

「すみません、なまえさん」

「だから言ったじゃないですか」

その後は今度こそ蘭ちゃんと別れて、安室さんに射的をしてお菓子をいっぱい取ってもらった。花火を見てから駅まで歩く、ちなみに二回目の電球ソーダは美味しかった
二人で下駄をならしながら歩いていた、靴擦れとは別に足の裏が痛くなってきたが、そのまま歩き続ける

「明日お休みですよね?」

「はい。うちに来ますか?」

「いえ、僕の家に」

「…ロッカーから着替え持ってきますね。着付けしてもらったので」

すぐそこのロッカーから、着てきた服を取ると、彼の元に戻った。
彼がその荷物を持ってくれてそのかわりに開いた手を握ってくれる
安室さんはすぐそこのコインパーキングに車を入れていたらしく、そこから車に乗り込んだ、私は座席に浅く座ってシートベルトをつける
安室さんの家の駐車場につけば、安室さんは私をお姫様抱っこ、とかではなく、片手でお尻を持ち上げて抱き上げると、荷物と下駄を持ってから両手で支えられた
これ絶対重いだろう。

「あの、歩きますから大丈夫ですよ!?」

「足痛いでしょう。すぐだから大丈夫です、だから暴れないでくださいね」

私はせめて彼と一体するように彼の首に腕を回してしがみついた







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