短編 | ナノ
 真夏の太陽は優しい?

※太陽オンリーサニーその後みたいなくらいで、組織壊滅後、やっと付き合ってます、同棲してます、みたいな
ナスときゅうりは風習によって違うかと思いますが、検索して一番最初に出てきたもの、見たものを参考にしております



「はあーまたこの時期かー…」

「松田はお盆嫌いだな」

「だってあの集団見ろよ!俺らはここにいるとしてもあの集団見て萩原は何も思わねぇのか!?」

「うん、あのきゅうりにまたがった人たちでしょ、思う。怖いよね」

「…でも今回は松田と萩原も呼ばれるかもな?俺も家族じゃない人に呼ばれそうで楽しみ」

「何、誰?」

「俺とゼロの大切な人!!松田も知ってるだろ?」

「それに俺も呼んでくれるって?俺の事知らない人だろ…?」

「見てればわかるって!」


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「ただいま」

なんて声をかけてみても返事は無かった。廊下からリビングへと繋がるドアは細い縦線の入った曇りガラスで中はあまり見えないけど、何かが動いているのは見えるので彼女はいるんだろうし、今日は先に帰るといって朝方本庁からあがったので彼女なのは変わりないんだろうけど…あと靴もありますし。いつもは帰ってくるとドアは開けっ放しで、玄関まで出迎えてくれるという優しさは無いけど、ちゃんと顔は出してくれるし、アマレットのときは全力で玄関まで来るので多分恥ずかしいだけなんでしょうけど、いつもなんらかはあるのに今日は無い。扉をそっと開けて中を覗くと、なにやら真剣な顔で立てたダンボールの向こうで何かやっているようなので扉を閉めた。とりあえず真夏だという事もあり、移動中でもなんでも汗はかいたのでこのままで彼女に歩み寄っていけるわけも無く、先にシャワーを浴びる事にした。脱衣所にはいつも換えの服を先においているし、二人ともスーツを着用している事が多いため脱衣所に一度スーツをかける場所もある。それにスーツをかけてからシャワーを浴びて、頭は乾かすことなくそのままタオルをぱさっと頭にかけて出た。スーツを持って服を入れている部屋へと行き、ハンガーかけにかける…スーツは明日クリーニングだな、とここまで時間が経っているし物音をたてても何の反応もしないのか…

ため息を吐いて今度こそリビングへと足を踏み入れると、今度は彼女はテレビの前に正座していた

「なにこれ、すごい…降谷さんに見せないとだめなレベル。なんなら風見に写メ送らないとだめだ!!」

なんて一人でしゃべりながら写真を撮る彼女の背後に歩み寄る。ここまで近づいて気づかない彼女なんて逆に珍しい

「降谷さんにも送りたい!今日帰ってくるかな!」

なるほど、聞こえていないのと気づかなかったのはこれのせいか…なんて思い外まで音が漏れている彼女のイヤホンをぷつっと耳から抜くと彼女が振り向く前に「いますけど」なんて言ったら彼女が叫び声のかわりに息をひゅっと吸い込んだ。さすがですね、叫んだら敵に気づかれますもんね

「ただいま」

「お、お帰りなさい」

「何を一生懸命作っているのかと思ったら…きゅうりの…車ですか」

「です。四人乗りでハイブリットカー、コンパクトで乗り降りも楽チン」

ありそうなフレーズにふふっと笑って、そのままそれを得意げに説明しようとしている彼女を後ろから抱きしめた。正座しているので腹部に手を回しやすい。そうすると彼女がビクッと肩を揺らしたのだが嫌がる事はせずに明らかに緊張しているようで肩を張っている

「あの、降谷さん…?」

「うん。続けて?」

「続けられません…」

「じゃあこのナスは?足の部分が短いのはわざとですか?」

「そうです。ゆっくり帰ってくれるといいなあ…と…」

「ふーん」

片方だけ彼女から手を離して、きゅうりをちょんちょん、とつついてみた。彼女がその隙にもう片方の手をはずそうとしていたのだがはずす事をしなかったらちょっと体を離れさせられて顔だけをこっちに向けて睨んでくる。見ないふりをしていれば小さく息を吐いて前を向き、手を合わせていた

「松田さんがきっとただのきゅうりだと文句言ってるだろうからこれにしました!帰る場所は実家でしょうけど遊びに来る場所はここでありますように!」

「あぁ、それで…車」

彼女の肩に額をつけて肩を揺らしていると、彼女が動きを止めた。確かにそういわれればそんな感じがする。幽霊事情はよくわからないけど、そういわれれば納得もした。「腐る前に来て!」なんて最後に言えば終わったようだったので彼女の頬に後ろから口付けをした。固まるなまえ、笑う自分

「暑い…」

「あ、暑いといえば、クーラーの温度下げすぎだ。これじゃあ体調悪くするだろ」

「出たよ姑ぇ…あーーーー」

そのまま後ろから彼女の頬を抓ってやれば声をあげた。彼女はそのまま立ち上がれないらしいのだが、それは自分が後ろにいる状態で立ち上がると自分の目の前に来るのは脚、ちなみに彼女は今短パンなので余計に立ち上がらないんだろう。
半そで短パンの彼女、だけどその脚をしっかりと拝めるのはこうやって「今から帰る」なんて予告しない時のみ。そうじゃなければ彼女は膝に大きいハーフケットをかけていたりするし、基本的に自分といる時は長ズボンだ

「立たないんですか?」

彼女の耳元で問いかければ「ひゃ」と彼女が声を漏らしてすぐに口を閉じる

「じゃあ退けてください」

「嫌です。帰ってきたの気づいてくれませんでしたし」

太ももを撫でれば「ごめんなさい!」と必死で謝ってくるのでキスを要求した。少しだけ腕を緩めると彼女がこっちを向いて、額にちゅっとキスをされたので彼女を真顔で見つめる。すると目を両手で隠してくるので手首を掴んだ

「なまえ…」

「いや、だって…」

「付き合ってる実感がわかないってそろそろ中学生みたいな事言うからな」

「むむむむ無理!だって、ほんと…想像しただけでっ…」

「想像しないで勢いに任せればいいだろ」

「んんんん〜〜〜っ…もう想像したから無理」

「キスの回数ならかなり多いと思うんだけどな。まだ慣れないのか」

「慣れないのはキスじゃなくて降谷さんの顔ですけど!?」

「今の悪口?」

「違う!良い口!」

「いや…ふっ…ククッ…もういいです」

絶対悪口の反対は良い口ではない事は確かです。確かにあまり聞く単語では無いんですが、そう来るとは思わなかったので彼女から顔を背けて笑ってしまった。彼女の顔を確認したら本当にそれがあっていると思っているようで、眉を寄せて笑っている意味がわからないといった表情をするので余計に笑ってしまった。ふぅ、と息を吐いて落ち着いてから、彼女の手を掴んでいる力を少しだけ緩め、「僕からします」とだけつぶやけば彼女を引き寄せて彼女の唇に唇を重ねた。当然、それだけでは終わらせる気は無くて、逃げ腰に段々と体を離そうとしている彼女の腕を自分の首に回させるようにして離し、腰に手をやればきつく抱きしめた

「んぅっ…ふ、んん!」

重ねるだけの唇から、今度はもう少し深くさせて、舌こそ絡めさせていないがついばむようなキスを何度かして彼女を解放したら、彼女が唇をきゅっと結びながら視線を下に向け、少しだけさまよわせた後に拳を握ってそれに「はあ」と息を吹きかけた。待て、その拳どうするんだ

「もう一回しますか」

そう言ったら拳は無かった事にして、ごまかすような笑みを浮かべて自分の前からパタパタといなくなった。それにしても…これ一日やっていたのか、なんて思ってきゅうりの車を見ると可笑しくなった。立ち上がってタオルを取り、洗濯カゴに入れて夜ご飯の準備でもしようとキッチンへ向かうと、部屋から出てきた彼女は服を抱えていて、こっちに気づいて振り向いた

「あ、もう作ります?」

「ん…。入るなら入ってきていいよ」

「じゃあ入ってきます!」

朝も入ったであろう彼女は再び脱衣所のほうへと消えていきました。エプロンをつけて今日のメニューを確認する。二人の予定に合わせて二人で話し合って作った、一週間分の献立が書いてある卓上カレンダーを確認した。すれ違いはほぼ無い、というか活動範囲が一緒なので帰れる帰れないはわかっているし、月に一回は一緒に一日過ごす日も決めている。何も無ければ…の話しだが…。それでもこうやって時間が合えば一緒にご飯だって食べられるので彼女が同じ公安なのはいいのか悪いのか…どっちもどっちというところか。あとはどうしても自分が早くて彼女が遅い時などは彼女はキッチンに「今日〜が食べたいです」と書かれたメモを置いておく。とりあえず二人暮らしはわりと上手くいっている

今日はトマトの冷製パスタ。彼女が仕事で外をうろうろしているときに困っているおばあさんに声をかけたら大量にトマトを貰ったらしい…最初は生ハムって書いてあったのが、訂正されてトマトになっていた。材料を冷蔵庫から取り出して途中まで作っていると、今度は彼女が頭を乾かさないままパタパタとこっちに来た

「髪」

「でも、暑くて」

「リビングでやっていいから乾かしておいで。夏場といえどよくないだろ」

「はーい」

彼女がドライヤーで乾かしている間に自分もご飯を作るのを再開し、ゆでている間に彼女が乾かし終わったらしく、片付けをしてから今度こそこっちに来た。今度は半ズボンじゃない…

一緒にご飯を作り、食べて眠る…。朝は早く起きて、彼女は潜入先の職場へ自分は本庁へと行く。昨日のカレンダーを見る限り夜には帰ってくるようなので自分も定時には帰宅して彼女よりも先に家に帰ってご飯を作っていた

「ただいま」

玄関が開いて声が聞こえる。扉の先を見ると彼女がいたので「お帰り」というと彼女が笑った。何かビニール袋のようなものが見えるが…

「迎え火って花火でいいんですかね?」

「ああもう、なまえらしいっちゃらしいな」

教えない自分も悪かったです。結局迎え火とか関係なしに、ご飯を食べてから花火が禁止されていない川原まで行って少しの手持ち花火を二人でした。

「時間が時間だからって蘭ちゃんたち誘わなかったんだけど、今度誘おうかな」

「ですね」

彼女がたまに星空を見上げて、視線を落としたりする。四人乗りって言ってたのは多分そういう意味だろうけど…聞けないし、聞いて、なんで知っているのかって聞いたとしても彼女は答えないんだろう。もしも会いに来てくれたとしても自分たちには見えないのに、なまえは何を思ってやりだしたのだろうか。ちゃんと片付けを終わらせてから家に帰り、お風呂を済ませた。お盆とはいえども明日も自分も彼女も仕事だから早めに就寝する。寝室へ行けばすでに寝る体勢を整えた彼女が寝転がっていた。寝室は一緒、だけど何かをする事も無く…なんて事は何日かに一回で、する時以外にもわりとじゃれてると思います。でも今日はなぜかいつもより無償に彼女に構いたくて構いたくて、背中を向けて眠る彼女の肩を掴んで仰向けに転がした

「え、何ですか…怒ってる?」

「怒っていませんよ」

仰向けになった彼女が枕元にある小さなオレンジ色の光に照らされて目を開けた。眉を下げて困ったような表情をする彼女の頬を指の甲で撫でた

「いつになったら、無理やりする前にあなたから求めてくれるようになるんですかね〜?」

すっと息を吸い込んだ彼女が顔を背ける。こう、何かあって本庁にこもる確立がお互い高いんだからこうやって出来るときは毎日シたいのに、彼女が許さない、無理やりすると彼カノでも強姦ですからね、だめですよ…ほぼ無理やりか…。だけど本気で求めると彼女は嫌がらないのでそれに甘えている状態…まあでも、彼女から求めてほしいのは山々で、彼女の見えている首筋に音を立ててキスをした

「まままま待って!ストップ!」

「ん?」

「ん?って、明日仕事です!」

「うん、そうだな」

「眠くなっちゃうじゃないですか」

「ならないよ」

「いや私はなりますよ」

「深い眠りになっていいだろ?」

「そういう問題じゃっ…!」

こっちを見た彼女の唇を奪い、そのまま深く口付けをする。不意打ちだったせいだろうか、彼女が苦しそうにするので一度開放したがすぐに唇を重ねた。服をぎゅっと掴んでくる彼女が足をばたつかせようとしているのだが乗っているせいで出来ないんだろう、自分のしたで力が入っているだけになっている。彼女が甘い声を吐いた頃に服の上から胸を触り、彼女の唇を解放し、鎖骨へ口付けた

「や…っ…え、ちょ、えぇぇ!?降谷さん!!見て!ほんとうに見て!」

「萩原!!お前身を乗り出しすぎなんだよ!!」

「だって降谷がっ…あの降谷がこんなに女の子に夢中になるなんてっ…」

「なまえがー…!」

「お前らこいつらのなんなんだよ!」

彼女が思い切り叩くのと、その声に勢いよく振り向いたら、見知った顔が三つあった。
あと一人どうした…



リビングの電気を再びつけて、寝室のオレンジ色の小さな明かりを消した。明らかにちゃんと見える三人、透けてもないしなまえはヒロに触ってる。萩となまえが自己紹介をして、あのきゅうりに乗ってきたとかの話しを終わらせた

「なまえちゃん優しい…俺まで呼んでくれたしね」

「っつーかみょうじと降谷がそういう関係になってるのにびっくりなんだけど」

「怪しんでたくせにな…」

「お前らいったいどこから見てた?」

「あー…なまえがぷはってなったところ?」

「はあ…」

ため息は吐いた、吐いてしばらく無言が流れた。なまえが可笑しそうにふふっと笑った後にすぐに萩がこっちに肩を組んできた

「久しぶりー!!いつも見守ってはいたいんだけど実際そんなことできるのって俺らじゃなくてご先祖様だからピンチのときしか見れないんだよ。元気そうで安心した!」

「俺がいなくて寂しいだろ?降谷」

「別に」

「またまた、ゼロは照れてんだよな〜?」




写真撮りたい。誰か幽霊までうつるカメラ、うつるんですを作ってください

私は四人がわいわいしているのをアイスカフェラテを飲みながら眺めていて、そのうち伊達さんまで登場しては伊達さんに降谷さんをとってもよろしくされてしまった。伊達さんはやっぱりすぐにいなくなってしまったけど、それでも降谷さんが楽しそうにしていた…から泣いちゃった。キッチンに寄りかかってカウンター越しに見ていたんだけど、申し訳ない気持ちでいっぱいになって、そのままそこでしゃがみこんで泣いた。降谷さんの前からまたみんなが消える。まさかこんなことになるとは思わなくて、見えるなんて思わなくて、ただ今降谷さんの状況とか…そんなのが見れたり、今のこの町とかを見れたらいいなって思っただけなのに

「なまえちゃん?どうしたの?」

「萩原さん…」

膝を抱えていたら声が聞こえて顔をあげた。私を見て驚いた顔をした後にやわらかく微笑んだ萩原さんに、余計に泣きたくなった

「どうしてみんなが見えるんですか?」

「普通は見えないよ」

「じゃあどうして…?今年だけが特別なの?」

「ううん…。そんなわけは無いんだけどね…太陽が優しかったからじゃないかな」

「なんですか…それ」

「明るいね、なまえちゃん。俺たちは結局見えないものまで今は見えちゃっているわけだけど。こっちに来るまで少しだけ町を見たけど、色が濃いものも黒いものもたくさんあったんだよ」

「オーラ?」

「あーまあそんな感じ?雰囲気みたいな?」

よくわからないけど、見えてないし見えることも出来ないだろうから頷いたら、萩原さんが私の周りを指でぐるっと囲った

「なまえちゃんはこう、きらきらーってしてる。あ、でもさっきなまえちゃんの周りの人たち見てきたらみんなだいたいそうだったけどね」

「それはなんとなくわかる!蘭ちゃんたちだ!」

「名前は知らないけど、繋がってるのは見えるから、その子かもね…。降谷ってわりと深い緑色みたいな色でさ…それがなまえちゃんのほうに向かってふわふわーってしているほうだけ明るいんだよ」

「ケセパセ…」

なんて言ったけど、黙って聞くことにして言葉をとめた。のに、それで終わりだったらしく、最後に満面の笑みを浮かべられた
私は萩原さんのわけのわからないお話しのせいですっかり涙が引っ込んで、楽しそうに話しているみんなを再び立ち上がってみることが出来た

「降谷だけのときに出てくるわけにはいかないだろ?」

「ん?」

「なまえちゃんがいるから、俺たちがまたいなくなったって、降谷は大丈夫」

「いや、でも」

私が話そうとしているのに、萩原さんは笑ってまた戻っていってしまった。あの人なんだろう、妖精さんなのかな?太陽が優しい…、真夏の太陽はだいぶ厳しいんだけどなあ…

「みょうじ」

「はい?」

「茶」

「自分で炒れて」

「コップに触れるわけねぇだろ」

「じゃあ飲めないじゃん」

「供えられたものは飲めるんだよ」

「じゃあ気合いれればコップくらい触れるんじゃないですか〜?そんなことも出来ないんですか〜?」

「はぁ!?出来るっつの!見てろこのやろ!」

こっちへ来た松田さんと結局わいわいして、結局松田さんがお茶碗を割った。私たちのお盆はまだまだ続く…



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