短編 | ナノ
 お疲れですか

’あの、起きてますか?家にいますか?’

’ええ、いますよ’

’今から行ってもいいですか?’

’もちろん’


珍しい、こんなメール寄こすなんて…。お風呂あがり、少しだけまだ暑かった事もあれば自分一人しかいない事もあったので上半身は裸で、なんとなく美味しい牛乳を見つけてしまったのでそれを飲みながら返事を返した。最近は彼女は溜まっていた仕事で忙しいらしく、こっちに来たとしても休むためにご飯だけは食べるくらいにして帰るだけ。今日は疲れすぎて家に帰ったらすぐに眠ると言っていたのに、夜22時頃の今に連絡が来た。何か事件か、それとも相談事でもあるのだろうか。
どちらにせよこのままでは逃亡される気がするので服をちゃんときてから飲み物を片付けた。牛乳は冷えていて美味しかったです

一応時間も時間なのであとはのんびりするために歯磨きをして、髪を乾かし、彼女が来るであろう時間帯に冷えた麦茶を置いてみればインターホンが鳴る。

「今出ますね」

そう返事を返してから玄関に向かい、開けていなかった鍵を開けてから玄関の扉を開けた。まあなんというか…ホラーですかね、開けた時には俯いた状態で顔の見えない彼女がいて、彼女が入りやすいようにもう少しだけ玄関を開いてあげれば油断しきっていた自分には大層な攻撃、彼女がみぞおちにどーーーん

「っ…!!!」

なまえだから、と油断していたぶん後ろに倒れこみ、尻もちをついた。なんとか頭は持ち上げてぶつけずに済んだが結構痛い。最後まで開けていなかった扉はゆっくりと音を立ててしまった

「どうした…?」

無言でそのまま抱き着いてきて、それから自分の服をぎゅうっと握りしめるなまえ。組織の仕事は無かったはずだからそういったものじゃないだろう。首に入れていた力を抜いて、その場に潔く寝転がった。ここ玄関なんですけどね…
片手で彼女の肩を抱いてから、髪を撫でた。そのまま微動だに動かないので、起き上がらせて抱っこしてから、そのまま抱き上げて移動。なまえはというとそのままされるがままに移動されていた

珍しい…

ソファーに腰をかけると本当に抱っこしている状態になるが、彼女はそのまま自分の首に腕を絡ませる状態で抱き着いていて動く事はしないし何も言わない。泣いている感じでもなければ、彼女の背中を軽くたたきつつテレビを見ているとなまえが頬を肩にすりすりと摺り寄せてきて、それから唇が首にあたった。キスをされているわけでは無いんだろうけど、息と唇があたってくすぐったい
そのうちそこで呼吸するような音が聞こえた。いつもと立場が逆になっている気がするが、そのままでいると確実にキスをしているように唇で挟まれた。濡れたように感じる首にそのうち音を立てて…

「ちょ、本当にどうした?甘えてる?」

「…うん」

可愛いっ…!普段こうしたりするのは自分のほうなのに珍しく彼女から来てくれた。そのせいで可愛いがあふれ出ます。そんなわけでぎゅぅっと力いっぱい抱きしめて頭に頬をぐりぐりした。「ん、ん」とそれに合わせて声を出す彼女は苦しそうで…でもやめませんよ!!!

「いつもいつもお疲れ様です」

「ん…でも降谷さんのほうがいつも頑張ってますよ…」

「他人と自分を比べなくていいんですよ、要領は人それぞれなんですから…疲れた時は少しでも休んで、また頑張ればいいんです」

「んんんー…」

今度はなまえがぐりぐりしてきた。

「あはは、よしよし、お疲れ様です」

「ありがとうございます…」

「ん、こっち来てくれて嬉しかったからいいんです」

癒しにはなれないと思いますけど、少しでも、ほんの少しでも元気を分けられたら…
そう思うよ。



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