短編 | ナノ
 真夏の太陽は苦しい

※自己満足すぎるものです。ご注意ください。



次の日、みんなと歩いてお墓参りに行った。降谷さんのご先祖様には会いにいけないけど、松田さんたちのお墓はこそこそと…

「降谷の格好が暑い」

「仕方ないんですよ、姿見られたら大変なんだから」

「お前はいいのかよ」

「私はアマレットじゃないからいいの」

なまえの時に見られたってなんでもない。みんながいるのにお墓参りとか不思議だけど、なんて思いつつ伊達さんのお墓にいったら伊達さんがいた

「お、伊達」

「お前らも外出中か」

伊達さんの事をジッと見ていると伊達さんが屈託のない笑みを浮かべてきたので笑みを返す…うん、頑張ってみても…この人たちと同じ年齢だと思えない。あ、それをいうと降谷さんが一番若くも感じるけど
伊達さんの彼女はもういなくなっちゃったみたいだけど、降谷さんがお水を汲んできてくれたので、お花を入れるところに少しだけ水を足して、あとは私が隙間に花を徐にぐさっと刺した

「降谷の彼女豪快だな…」

「降谷ちゃんがいいならいいんじゃない?」

「いやよくみろ、苦笑いしてるだろ」

「ゼロのあの可愛いはなまえが可愛いって顔だよ!」

伊達さんに豪快呼ばわりされてしまえば、そうかもしれない。なんて思った。それにみんなが話しを続けるから私は楽しくて仕方ない。お墓は綺麗だったから掃除はしないで、お線香だけあげて、私は爪楊枝を置いておいてから移動した

「あいつの彼女名前なんだっけ」

「ナタリー…さん、じゃないですか?」

「なあお前、前から気になってたけどなんで俺らの事知ってるの?」

「ストーカーなんで」

もう誤魔化すのも面倒なので適当に返事をすると、ずっとスコッチと話していた降谷さんが笑ってこっちを見てきた。楽しそうに笑ってる、子供みたいな顔で「そうだったんですか?」なんて問いかけてくる。私たちに合わせて歩いてくれるみんな、ずいぶんでっかい人たちに囲まれているな、なんて思って萩原さんと松田さんを見上げた

「萩原さんが一番おっきいの?」

「そうかも」

萩原さんが笑って、それからまた移動した。知っている人たちのお墓参りを早急に終わらせてから買い物をして降谷さんの家に帰った。
あとはまたみんなで話したり、トランプをしたり…トランプはお供えものみたいに置いて、私がふざけて手を合わせたらどうやら触れたみたい。というか私たちには触れるのに、それはそれで幽霊の世界はわからないな

「あがり!」

「えっ…」

ボーッとしているうちにスコッチが私の手元からカードを引き抜き、私の手元に残ったのはあざ笑うかのようにこっちを見ているピエロ…ジョーカーだった。

「はーい、みょうじ罰ゲーム!」

「罰ゲームってなに!?」

そんなの聞いてない。なんとなく正座した。まさかまずいものを食べさせられるわけでもないし、お尻を叩かれる…いや、一番最初に抜けたのが萩原さんだからそんな事は無いだろう…。萩原さんの事だから優しいものに決まってる!

「あ、俺が決めるのか…えー、じゃあ…ひげ…」

「ひげ!?ひげって何!?」

スコッチのほうを見て呟いた萩原さん、私は意味がわからなくて上ずった声をあげた。降谷さんが萩原さんに「変な事させないでくれよ」と頼んだ。ありがとう降谷さん、でもその後スコッチが自分のひげを触った後にこっちを見てきた。え、見ないで

「なまえちゃんの足の裏をひげで擦る!」

「絶対やだーっ!!!」

そんなの絶対痒い!無理!!なんて思って足を崩して逃亡しようとしたところ、松田さんに足を掴まれて尻もちをついた。スコッチがにやにや…いや、にこにこしながら近づいてきて、私の足首を掴む

「やだやだやだっ!」

そもそもで足、足ですよ!!スコッチが汚いとかどうとかじゃなくて、足ぃいい!!って思ってるうちにスコッチの力に叶うはずもなくスコッチのザリザリしたひげが私の足の裏を擦った
降谷さんはため息を吐きだしつつもこっちを見ているだけ、え、これはひどい事じゃないの!?
私は声にならない笑い声と、笑いすぎて涙が出てきたところでスコッチが離してくれた。呼吸を整えて、その場にひっくり返る

「誰か…やられればいい…降谷さんにもやってよ!」

「え、なんで巻き込まれたんだ。二番にあがっただろ、罰ゲームは関係ないです」

「やろうか?」

「やるな」

スコッチが楽しそうに笑って、降谷さんが逃げる体勢になったけど結局はやらなかったみたい。私が起き上がったところで降谷さんと目が合い、降谷さんがふんっと笑った
お盆の数日間、彼らはずっと私たちといた。私はみんなの時間を邪魔しないように、と思ってお嬢のところに行こうと思ったけど、そのたびにそれを察した降谷さんがキッチンで私の服を掴む。何も言ってこないけど、ただ掴んで来るだけ。
今日も片付け終わったら出ます、と言えなくて、三人がリビングで話している姿を見て、降谷さんを見た。

「降谷ちゃん」

「…どうした?萩」

「タバコ買ってきて」

「じゃあ、俺も行くよ」

「いいよ、ヒロはここにいて」

「何か美味しそうなものがあったら買ってもらう」

「わかった」

萩原さんが降谷さんにタバコを頼むと、降谷さんが目を細めて、それからスコッチも一緒に行くという。知らない顔をする降谷さんが、柔らかく笑ってスコッチと一緒に部屋を出た。私はソファーに座って、二人を見送ってからニコニコしている萩原さんに視線を移す

「なまえちゃん、降谷の事頼むね?」

「え」

「そろそろ行かなくちゃ」

「え、でもまだ時間ありますよね?」

「んー。下りられる時間が決まっててさ…俺らは今日までなんだ」

「なにそれ…お盆の休暇みたいな…」

「そうだよ、そんな感じ」

「じゃあ、じゃあ降谷さん呼んでこなくちゃ」

私が立ち上がろうとしたのに、松田さんが肩を押してソファーに戻した。あいつが戻ってくるまではいる、なんて言って

「絶対…帰らなくちゃダメですか…」

「うん。だからなまえちゃん、あいつが無茶しないようにちゃんと見てて欲しい」

「みょうじも、無茶はすんなよ」

「来年も会えますよね」

私がそう問いかけると、萩原さんが眉を下げて笑って松田さんは視線を逸らした。
なにこの反応、会えないって事?なんで?お盆って毎年かえってこれるんじゃないの?

「私来年もきゅうりとナス使って四人乗りの車を作りますよ。さらに荷物も乗せられるような大きいやつ」

「うん…」

「ハンドルとかも作って、無駄に性能のいいやつ作りますよ」

「うん」

「プルバッグです…」

「すごいね」

吹き出して笑う萩原さん、それでもまた来るね、なんて言ってくれなくて、私はもう彼らと話す事が出来ないんだと悟った。喉の奥がジンとして、泣いちゃダメだって思うけど自然と涙がにじんで、瞬きをしたら頬を涙が伝う

「おい、萩原。泣かせんな」

「あはは、ごめんなまえちゃん嘘だよ!明日帰るし来年も来る」

ぴたっと泣き止んだ涙。私が拳を握って、左手で萩原さんの胸倉をつかんだ時に玄関からリビングにつながる扉が開いた。こっちに夢中で全然気づかなかった…
降谷さんに見られてしまったのは、友人の胸倉をつかんでいる一応彼女。私はそっと萩原さんを離してから何事も無かったかのようにソファーに座って笑顔を作った

「おかえりなさい」

「…泣いた?」

降谷さんがこっちに来ると、涙はとっくにひっこんだのにやっぱりまつ毛とかが濡れるせいか気づかれたのだろう。降谷さんが私の目元を指の甲で触れてきた
その後私の目元から手を離した降谷さんが真っ先に疑ったのが松田さんだったが、その数秒後萩原さんへと視線を移した

「今絶対俺を疑ったよな」

「当然だろ。萩原、なまえに何言ったんです?」

「…もう帰る、って言いました…」

萩原さんが正座した…しかもそっと正座した。降谷さんは何を言うのかと思えばふっと可笑しそうに笑った後にタバコをテーブルに置き、それからアイスらしきものをしまいに行った

その後は特に何もなく、萩原さんと首を傾げるほど。かしげた後に怒っていたんだと思いだしてふんっと顔を背けた。
次の日は私も降谷さんも仕事で、でも全員降谷さんじゃなくて私のほうについてきた。犯罪予告があったところへ行って、事件を未然に防いで、報告書を出して夕方には家に帰る。

ついてすぐに花火をしに行く、と降谷さんに言われて一緒に花火が出来るBBQ場へ行った。何人かBBQをしている人もいて、降谷さんも許可は貰っているらしく、受付に話しをしてから花火をしに行った。どうして花火なのか、なんていうのは聞かなくてもわかる。
私が花火でいいのかって聞いたからだ、最初の時に

まだ太陽は落ち切っていないけど、火をつけて手持ち花火を始めた。つけてくれたのは降谷さんで、二人でなんとなく黙って花火をする
途中で降谷さんが飲み物を買いにいった時に、一緒にしゃがんでいたスコッチを見た。それから視線をあげて萩原さんと松田さんを見る

「……私、みんなに会いたかった」

呟いてから、花火の下に手を入れて、それから花火をぎゅっと握って火を消した。松田さんがバカッて言おうとしたんだろう「バッ」て聞こえた瞬間に手を開いて手のひらを見せた

何度か呼ぶ声が聞こえて、重たい瞼を持ち上げた。私の目に入ってきた光が嫌に明るく感じて、まぶしくて、もう一度目を閉じた。気だるくて、体を横にしようとしても上手に力が入らない。そのうちシャッというカーテンが閉まる音が聞こえて、少しだけ薄暗くなったからゆっくりと、もう一度瞼をあげた。
何度か見た事がある真っ白い天井。その一つ一つのタイルの数を暇な時には数えた時があった。私の顔を覗き込むのは見慣れた降谷さんの顔で、私と目が合うと顔を歪めた。視線を移動させて、いるはずの人の姿を探す

「…スコッチたち、は?」

「え?」

最初掠れた声が出たせいで聞き取れなかったんだろうか、もう一度人物を変えて問いかけた

「萩原さんと松田さんは?私いつの間にか眠っていたんですか?」

「なまえさん…?何言ってるんですか…」

降谷さんが目の前でひどく悲しい顔をした。さっきまであんなに楽しそうにみんなと話していたのに…あぁ、でも最後のほうポツポツとしか話して無かったかも。どちらかといえば私が松田さんたちと話している事のほうが多かったかもしれない。

「ここ病院?どうして病院?さっきまで公園で松田さんたちと花火していたのに」

「……やめてください、ずっと目覚めないかもしれなかった時にそんな…」

「降谷さん、何言ってるの」

「それはこっちのセリフだ!」

「お盆だからみんな帰ってきてくれたんですよ!私が降谷さんの家できゅうりでね…こっちに来れるように…」

作った。作ったよね?作って、それでみんなに会って、遊んで、しゃべって

「萩原さんが…今までどうして来なかったのって聞いたら、降谷が一人の時に来るわけにはいかないだろ、って…。そうだ、降谷さんの事降谷ちゃんってたまに言ってた」

あぁ、そうだ

「スコッチが…スコッチがゼロのところに行こうね、って。なかなか帰ってこないから降谷さんを探しに行ったんでした、他の人に聞いて近くの川に行ったみたいだったからそっちに行って、蛍ですよって降谷さんが言ったから、私が川をわたって…」

「もういいです、わかりました」

「本当なんですよ!お盆の間ずっと一緒にいたんです!」

「わかったから」

起き上がってから説明をしていたのに、途中で降谷さんに止められて、それから抱きしめられた。ぎゅうっと痛いくらいに抱きしめられているところにコナンくんが来たけど、降谷さんは離す事なく、コナンくんはとくに甘い雰囲気でも無いとでも思ったのか、ほっとしたようにこっちに入ってきた。
聞いたところによると、私は最後の最後にジンに心臓を撃ち抜かれて、赤井さんがいつもの医者のところに連れていってくれたらしい。しっかりと撃ち抜かれていたらしいけど、その銃弾は貫通して、後ろにいた降谷さんに当たったとか


「っていう落ちは!?」

「ねぇよ!つーかお前心臓撃ち抜かれても生きてようとすんな!」

「何ありそうな話ししてるんです…」

戻ってきた降谷さんが激しく突っ込んで私の頭を押さえつけてくる松田さんを見て苦笑いを浮かべた。その後すぐさま松田さんの腕を振り払い、無言で睨みあいが始まった

その後にこやかにスコッチが間に入り、最後まで花火を終わらせた時には、もうみんなには触れなくなっていて、薄く、とっても透けていた。現実感があったその人たちは全然無くなっていてまるで夢のようにしか見えない

「恨みつらみを…言いたいんですけど…」

「知ってる。また来年聞いてやるよ」

松田さんが私の頭に、多分触れた。その後にタバコの煙を私に向かって吐き出したけど、とくにタバコの煙を感じるわけでも無ければ、臭いもしない。ただ白い煙が私の周りをまわっただけだ

「幽霊なんてものの類は信じてないんですけどね」

「またな」

スコッチが笑って私と降谷さんに手を振る。炎がだんだんと消えていくみたいに、だんだんとみんなが煙になって消えていく、最後は萩原さんだった

「俺ね…」

萩原さんが言った最後の言葉は多分私にしか聞こえていなかったと思う。降谷さんが訝しそうにこっちを見ていたから。
ちょっと複雑な気がするけど、苦笑いを浮かべて手を振った

「なんて言っていたんですか?」

「来年は…俺には会えないかも、ですね」

「そう、ですか…」

きらきらと光っているようにも見える煙はだんだんと上がっていって、それから静かに消えていった。お盆の間の不思議な出来事は、なんとなく現実味があるのに、それでも無いような…不思議な感じで。
多分空を見上げて私と降谷さんが思う事は一緒だと思う

仕事…たまってるだろうなあ…






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