「すみません、今度の土日は帰れないかと思います」

「わかりました。怪我する事は…なるべくしないでくださいね?なるべく…」

「わかってるよ」

「あともうつわり治まってるので、もうお仕事普通に出て大丈夫ですよ?本当にありがとうございました」

もう普通の服も着ていられなくて、ワンピースか妊婦さんようのズボンとかを履いて過ごしていた。今度の土日はちょうど蘭ちゃんと園子ちゃんに誘われていたので会いに行ける事を伝えよう。つわりはもうすっかり治まって、お腹が空いた時に少し気持ちがわるくなる程度で吐くまではいかない。毎朝ご飯を作ってくれたり、遅くなる時は夕飯まで用意してくれていた彼には感謝してもしきれない

「そう…か。つわりが治まるのは良かったと思うけど、ちょっとだけ寂しい気持ちもありますね…具合悪い時は遠慮なく言って?」

「はいっ」

「あとつわり治まったんなら、いってらっしゃいのキスとお帰りなさいのキスもください」

「はいっ!はい…?」

「ね?」

「あ、はい…」

可愛い笑顔で「ね?」なんて言われたら了承するしかない。確かに最近私のつわりと妊娠したあれこれで、えっちは愚かキスも本当に極稀になりました…ごめんなさい。
だって結構な頻度でトイレに引きこもりしてるから、それで降谷さんにキスしろとか言われても無理!絶対いや!降谷さんは気にしないとか言うかもしれないけど、私は気にするよ!

「あと、私土日園子ちゃんちに蘭ちゃんとお泊りしてきていいですか?」

「それはもちろん…送り迎えはする」

ダメだ、とか言われそうな気がしたのだがそれは考えすぎだったようですぐに了承されたが、やっぱり少なからず心配はされているようで眉を寄せた彼に送り迎えはする事を言われると、苦笑いを浮かべて手を振った

「え、大丈夫ですよ。蘭ちゃんと歩いていきますし、お散歩がてら…」

「転ぶんじゃ」

「転びません」

「つわりが」

「大丈夫です」

「…じゃあ、まあ蘭さんにお願いします。蘭さんが迎えに来るわけじゃないでしょうし、探偵事務所まで送ります」

「仕事前ですよね?」

「その日、昼間どうしてもポアロを手伝ってくれって頼まれているんですよ。お世話になったマスターなので」

「突然のお休みとかでね」

渋々歩く事を了解してくれた彼からポアロにいる事を聞かされれば、そんなの目が輝くしかないだろう。一瞬自分でも目を見開いて絶対笑ったと思ったのだが、お世話になったと彼から伝えられれば真顔で突っ込んでしまった。そうすると彼の手が私の頬に伸びてきて軽く横に引っ張られる。その顔を見てクスクスと笑った後に彼に頬にキスをされた



さて…こんな事を聞いて黙って園子ちゃんちには行けない
ので、勿論二人に連絡をしておいたら、二つ返事でオッケーが来た。
土曜日なのに梓ちゃんがお休みで、きっと混むのに困っているという…蘭ちゃんが事前にマスターに頼んでおいてくれたので、お昼なのに自分たちのぶんはあけてくれていた
もちろん、彼には内緒だ。
朝に蘭ちゃんの家に送ってもらい、そのまましばらく蘭ちゃんといるといって引っ込んだ。彼もそのままお仕事に行っただろうから園子ちゃんが来た11時半頃から、ちょうど混み始めたポアロにお邪魔する

「いらっしゃいま…せ。蘭さん、園子さん、なまえさん…お久しぶりですね」

満面の笑みを浮かべて扉のほうであるこっちを見てきた彼は、さすがだった。
表情を崩さなかったが一瞬間が空いたのを私は見逃さない。動揺させる事に成功した所で、予約で取っていた席に案内された

「あぁ、あのマスターに予約って言われていた席は蘭さんたちの席だったんですね。驚きました」

「そうなのよ。久しぶりにポアロに行きたくなってね」

園子ちゃんが返事をすると、安室さんが「ごゆっくり」と言って他の人の接客をしに行った。園子ちゃんと蘭ちゃんは可愛さと綺麗さが増してものすごく…私だけ置いてけぼりな感じが半端ない…年下なはずなのに二人は大人な魅力がある

「なまえさん、綺麗になりましたね」

「え、蘭ちゃんたちじゃなくて…」

「えぇ!?なまえさんですよ」

「いいわねぇ、あんな良い男捕まえて…しかも料理もなんでも出来そうだし、困った事とかないでしょう?」

「あー…あはは」

困った事、といわれれば…過保護な所。安定期に入ったから少し公園を散歩したいというのに、彼がいない時は彼の部下に掴まって家に戻されたり
とりあえず気持ち的に落ち着いてくれないか、と思う。ただそれを二人に言えるわけもないので、笑って誤魔化しておいた

「安室さーん!またバイトするんですかー?」

「いいえ、僕は今日はお手伝いに来ていまして」

「きゃー、お手伝いだって、可愛い!!!」

「この肉団子かわい…間違えた、美味しい」

聞いていたせいで、うっかり食べた肉団子を可愛いと言ってしまったら、園子ちゃんが笑い出した。久しぶりに食べるポアロの味は変わってない
サンドイッチは作ってもらうけど、家ではポアロのものは作ってもらわない。だからとっても美味しく感じる

「安室さん握手してください!」

「うーん、それはちょっと…おまわりさんに捕まっちゃいますから」

「あはは、安室さんおもしろーい」

「相変わらず凄いわねぇ…いいの?なまえさん」

「何が?」

そんな話し声が勝手に聞こえてきてしまうため、園子ちゃんがこっちを見て問いかけてきた。私は野菜を食べようと思ってフォークで刺していたのだが、動きを止めて園子ちゃんのほうへと視線を移動させる
いいの?と問いかけられても安室さんが人気なのは今に始まった事では無いので、いいの?も何もないと思うし、彼から人気を取れないのはわかりきっている。
首を傾げていると、蘭ちゃんがふふっと可笑しそうに笑った

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