少しの間、実家に顔を出すという事で3日程仕事をしてきて自宅に帰ってきて眠った。誰もいない部屋の中は本当に久しぶりで、朝いつも彼女が起きる時間に起きてはなんとなく休んでる気持ちにもなれなくて掃除を終わらせ、それから朝食を食べたらまた本庁で仕事をしようかと考えていたのに、10時頃に部屋の扉が開いた

「あれ、れーさん?」

1週間くらい実家にいる予定、と言われたのに彼女が帰って来たので声を聞いた瞬間に玄関まで早歩きで行った。座って靴を脱いでいる彼女がいたので、その後ろにしゃがんで彼女を後ろから抱きしめた

「忘れ物ですか?」

「違いますよ、怒られちゃいました」

「え?…それに、こどもは?」

「実家にいます。れーさん、今日はお仕事行きますか?」

「なまえがいなければ行く予定だったよ」

「そっか、じゃあ良かったです。とりあえずコーヒー飲みたいので入れてきます…」

「どうぞ」

彼女を一度放して家の中に入れると、コーヒーが飲みたいというので入れてあげようと思ってキッチンのほうへ向かうと止められた。「休んでてください」と言われるので素直に甘えようと思いソファーに座って彼女の背中を眺める、いつもはバタバタしているその背中がのんびりと動いていた
俺のぶんも入れてくれたらしく、二つカップを持ってこっちに来るとテーブルの上に置いた。忘れ物じゃなくて、何かに怒られたと言うが、何も言って来ないし何か実家であったのだろうか

「なまえ、母親と喧嘩したとか?」

「してませんよ。母が子供産んだ時に、父がすごく拗ねてた話しを聞きまして。二人の時間あるかって聞かれたから考えてたら追い出されました!1日見てるから少しは仲良くして来いって」

仲は…いいと思うけど。ただどの父親も同じような事思ってるんだな、と少し勉強になったと同時に心が軽くなった。自分に構ってもらえないからって拗ねたり、自分の子供にやきもち妬いたりするのもどうかと思っていたから。子供の声が聞こえないのも寂しい気はするが、1日だけいいっていうのなら甘えよう

「あ、コーヒーありがとうございます」

「いいえ。れーさんが入れたのよりは美味しくないですが」

「俺のは愛情がつまってるからな。でも1日か…何時ごろ帰ります?」

「私のも入ってますよ!あ、帰るのは明日の朝です」

一瞬時間が止まった。一日って本当に一日?一日、なまえは俺だけのなまえ?
作ってくれたコーヒーを飲んでほっと息を吐いた。6月といえど7月に近いので外は暑かったらしく、彼女はアイスコーヒーというか、もうほとんどカフェラテだがそれをごくごくと飲んでいた。ふぅ、と息を吐く彼女を横目で見ていると、途端に戸惑う自分がいた

待った。ちょっと落ち着こう
今まで彼女は妊婦で、強く抱きしめようにも抱きしめられなくて?産んでからも彼女とイチャイチャしようもんなら子供が泣いて中断され、そのうちお帰りのキスもいってらっしゃいのキスの回数も減っていって、忙しそうな彼女にたまにくっついたりするだけが…
こどもは可愛い、自分となまえの子供として本当に可愛い、可愛いと思えるんだけど同じ男としては可愛くない。同じ男として言うなら彼女を取られてるって思うしか無いから

子供は可愛いけど、俺の妻は可愛さが違う。こどもに悪いけどなまえの母親の言葉に甘える事にした、そりゃもう無碍にはしない

彼女に抱きつこうと思ったのに、彼女が立ち上がったために出来なかった

「安室さん!」

「……はい?」

「そんなわけでデートしましょう!」

「…ええ、もちろん」

もちろんじゃない。外を彼女と歩くのはいいけど、どちらかと言えば家で彼女にベタベタしたい。だから少し間を空けてから笑顔で対応した
だけど安室としては安室として、利用させてもらいましょうか。

片付けをしたり準備を終わらせると、彼女と車に乗り込んだ
助手席に乗る彼女が顔を覆ったと思ったら背もたれにゆっくりと体を倒して、あっちを向いている

「どうしたんですか?」

「いえ…なんでも」

「どこへ行きますか?」

「トロピカルマリンランド!」

「いいですね。行きましょうか」

車を発進させてしばらくして、風見から電話がかかってきた

「どうした?」

'あぁ、降谷さん?今大丈夫ですか?'

「あぁ」

車を走らせながら話していると、彼女がこっちをジッと見ているのが視界の端に映る。片手をハンドルから離して彼女の顎から頬を撫でると、彼女が遠ざかったので再びハンドルを握った。風見の話しを聞いている途中に路上に猫が飛び出してきたので思い切りブレーキを踏むと同時に彼女の腕を掴むと、彼女が「わぁああ!!!」っと叫び声なのか何なのかわからない声をあげた。シートベルトをしているから大丈夫なのはわかっているが、何となく彼女を掴んでしまった

'降谷さん?誰かと一緒にいるんですか?'

「悪いなまえ。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。轢かなくて良かった…」

'あぁ、彼女でしたか…'

「急用か?」

'いえ'

「じゃあ後にしろ」

「待って!もっとしゃべってていいですよ!ほら、路肩に車停めて!」

別に耳にイヤホンマイクをつけているから停める必要はまったく無いのだが、また何かがあって今度こそ何かに気づかなかったとなるのを避けるために路肩に移動した

「で?」

'いえ、会議書類の中にわからないものがあったので、後でパソコンのほうにデータ送りますので確認お願いします'

「あぁ、わかった」

ピッと音を立てて電話を切ると、こっちを見て爛々と目を輝かせている彼女を見た。こっちはいったい何だというのかと思ったら満足そうに笑って「降谷さんだ」と呟いた
それには一瞬目を見開いたが、眉を下げて車を動かす。いつも彼女といる時も自分なのは変わりないのだが、彼女に笑わないで話す事がほとんど無い、仕事の時の自分の事だろうけどそんなに嬉しそうに笑われても困る

マリンランドにつくと、彼女は楽しそうにはしゃいで回って
すぐそこでいつでも行けるというのに、自分とご両親にお土産まで買っていた

「電車でもよかったですね」

「そうですね、久しく乗ってないです」

電車かー…電車に乗ったら混雑に紛れてなまえに触っていたら痴漢と間違えられて…痴漢に間違われてというか痴漢か。風見が迎えにきて「何やってるんですか降谷さん…?」なんていわれるんだろうなぁ…

「安室さん、どうしたんですか?頭痛いですか?」

壁に寄りかかって眉を寄せていたら、買い物を済ませたなまえがこっちに来て自分の前で手をひらひらと振っていた

「いえ、風見に逮捕されるところまで想像しました」

「ふっ…何の話しですか?何か悪い事したんですか?想像で」

「…ええ、ちょっといけない事しました」

笑ってみせると、彼女が目を見開いていっきに顔を赤くさせれば「何ですか、その可愛い笑顔は」と呟いた。安室を選択したのは彼女であって俺では無い
マリンランドの外に出て公園のような所を散歩していた



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