彼と結婚してから一年が経った。私と降谷さんが結婚するなんて当時まったくもって思ってなかった…だいたい付き合ったあたりでももう奇跡どころか神様からのご褒美レベルだったのに、プロポーズされるとか本当に何事だ。
それと同時に物凄く怖くて、彼に愛されてるってわかってるんだけど、それに甘えてしまったりして嫌いになられたらどうしようとか、彼が好きすぎて、ずっとずっと不安が私の後ろをうろうろしていた。結婚したってそれは変わらず
寂しくても寂しいなんて言えない。仕事を頑張ってる彼が好きだし、かっこいいと思う
たまに寂しいって感じる事があっても、そのぶん会った時に降谷さんのほうが寂しかったと態度で物凄く示してくれていた。何があっても二人なら大丈夫、なんて言葉はまったく言えないけど…わたしはずっとずっと降谷さんを好きでいられる自信しか無い
私は彼を好きだけど、彼は?なんて思っているのは…彼も同じのようで、不満をもらしたりしてくるけど、それが私は嬉しかったりする。でも子供ってなると話しは別…何か彼が子供をあやしている姿は物凄く想像は出来る、それはコナンくんのおかげもあってだからなんだろうけど…自分の子供ってなったらどんな反応をするのか怖かった
だからしばらく言い出せないままでいた、彼が忙しかったこともあってね。でも子供よりも何よりも、私の違う世界から来たお話しと死んだお話しが表に出てきた事には本気でびっくりした…それは降谷さんも同じようで、最初こそそっちに気を取られていたようだけど、子供のことを色々と聞いてくると、少しは興味があるのかと嬉しく思う


でもね、少しじゃなかったみたい。

朝起きて、ベッドの上にお尻をつけて座って…欠伸をもらして

「おはようございます」

欠伸がとまった。
初めて目を開けると、目の前に寝転がって手で頭を支えている格好をしている彼と目が合った。あれ、おかしいな…夜寝るまでは確かにいなかったはずなのに
それに彼が夜に帰ってきたとしても彼は絶対に私を抱きしめてくるはずだし、スーツ姿という格好を見るにさっき帰ってきたのだろうか
おはよう、と返事を返す前に吐き気がこみ上げてくる。空腹の時に感じるこの吐き気はどうにかならないものかと思うが、眠っている時にご飯を蓄えることは出来ないのでどうしようも無い。ただ、吐くのは辛いから吐きたくなくて、唾をこきゅんこきゅんと音をたてて飲み込んでいたら、彼が起き上がった

「気持ち悪いですか…?」

何度か頷くと、彼が飲み物を持ってこようとしてくれていたのか、ベッドから降りて扉から出て行くものの、私は堪え切れなくてトイレに行った。鍵を閉めても入っても、彼は入って来れるには来れるのだがしっかりと鍵をかけた
吐いている姿は見られたくないので、吐いているときは絶対に入ってこないでと言ってあるから、そこはちゃんと考えておいてくれるだろう

吐き終ってすぐに洗面所へ行き、歯磨きをして口をゆすぐと少しはすっきりする。とりあえず空腹状態をどうにかしないといけない、洗面所から出ると、ソファーに座っていた彼がこっちを見てきた。その表情はあきらかに心配そうな表情で、仕事から帰ってきたばかりの降谷さんに私はなんで心配させているんだと思ったが、吐き気はどうにも出来ない
彼のそばに行くと私が買い置きしていた三ツ矢サイダーにレモンが入ったものを差し出してきてくれたので、隣に座ってそれを受け取って飲む

「ご飯食べられますか?」

「食べられますよ」

「何か作るよ」

「え、いいですよ!お風呂に入ってあとはゆっくり休んでください」

「僕が作るサンドイッチ、食べたくないですか?」

「安室さんのサンドイッチ食べたいです!」

「……」

「へへ」

勢いよく返事をしたら、無言で見られたので笑って誤魔化しておいた。なんとなく安室さんの笑顔には抗えない何かがあるんだよ…降谷さんの笑顔は何となく怖いって思うんだけど、安室さんのは可愛いって思うからどうしても、何か甘えたくなるというか、悲しそうな顔されるととっても弱い…。多分それに気づいての無言なんだろう、そのうちふっと可笑しそうに笑うと「着替えてから作るよ」と言って立ち上がった。ソファーから彼がいなくなると、私はその後をついていく

スーツのジャケットを脱いでハンガーにかけていた彼が、私に気づいて目を見開いた

「え、どうした?」

「ついてきました」

「え、な、え!?あま…えてます?」

「少し」

かしゃんっとジャケットとハンガーを落とした彼がこっちに寄ってきたと思ったら抱きしめられた。お腹には少し空間があいていて、そのかわりに私の肩と彼の胸元が密着していて、ぎゅぅっと抱きしめられた。それから体を離してもらえたと思ったらキスをされそうになったので彼の口の前に手を出して彼の口を塞いだ。歯磨きしたとはいえ、吐いてしまったので何か嫌!私は苦笑いを浮かべると、彼の口から手を離して踵を返した

「じゃあ着替えてください」

「小悪魔…」

彼が呟いた言葉はしっかりと聞こえていたので苦笑いを浮かべてから扉から出た。彼が用意していてくれた飲み物を飲み干した頃には、着替えた降谷さんがこっちに来てそのままキッチンへいった

「れーさん、眠くないんですか?」

「ええ。このくらいなら、あとはなまえとお昼寝する」

お昼寝て…可愛い!!レモンの果肉と氷まで食べればコップに残ったのはレモンの皮だけ。それを捨てにキッチンへ行くと気がついた彼が手を出してきたので、その手を握った

「ちがっ…いや、嬉しいですけど!!」

「大丈夫ですよ。自分でできます」

「俺がいる時は俺に頼んで、俺に頼って。なまえは座ってのんびりしてていいんだよ?」

「仕事してる降谷さんにそんな事させられないですよ」

彼の手を握ったままコップを流しに置いた。私は悪阻が酷すぎてしばらくお仕事を休んでいるので、だいたいいつも家の中にいる。体調の良い昼間のうちに家事とか買い物をしているんだけど、たまに彼の部下の人が家の前にいて驚く時がある
用事を聞いたら「荷物持ちです」と言われて本気で口が開いた。そう、彼はものすごく過保護…今までも少しは過保護っぽい感じはあったのだが、妊娠してからそれが余計に増したと言うか…そんなに気使って疲れないのかと心配になるし、私が彼の負担になってないかと思ってしまう。

「妊娠してる時くらい甘えて欲しいです」

「限度がありますよ…ね?」

「ないです」

きっぱりと返事を返されてしまい、一瞬返事に困った。彼は何事も無かったかのようにサンドイッチを作る手を進める…座っていてと言われてしまえば素直に座って待っている事にした
すぐに彼がこっちにサンドイッチを持ってきてくれれば、それを口に含んだ。美味しい。それを並んで彼と食べていて、彼は私に妊娠してから愛用しはじめた牛乳屋さんのミルクココアを入れてくれていた。牛乳屋さんシリーズの飲み物はカフェインレスで美味しいから好きだ

「なまえって普段何を食べているんですか?」

「…杯戸ハンバーグの」

「あぁ、はい」

「フライドポテト」

「……また油っこいものを…そんなの食べて大丈夫か?」

「なんか、塩が欲しくなるんです。それもフライドポテトが食べたくて食べたくて仕方なくなるんです…」

「まあ、つわりの時は食べたいものを食べてもいいと思いますけど…あまり食べすぎて逆に気持ち悪くならないようにな?」

「はい」

心配しすぎな彼に笑ってからサンドイッチを全部食べ終えれば、彼も食べ終わったようなので片付けは申し出た。食べてしまえば体調は大丈夫なのでシャワーを入ってくれと伝えると、渋々といった様子だがシャワーに向かった。

その間に洗濯は出来ないので掃除をしていると、シャワーから出てきた彼に怒られた

「大人しくしててください!」

「過保護すぎます!」

私が言い返すと、彼が私を抱き抱えたせいで、持っていたクイックルワ〇パーが下にからんっと音を立てて落ちた。乾いちゃう!
ソファーの上に彼が座ってその膝の上に乗せられれば抱きしめられた

「目を離すとすぐ動く…」

「黙って座ってるのはちょっと無理なんですよ」

「安定期入るまで大人しくしていてくださいよ…」

私の首筋にすりすりしてくるから、くすぐったくてどうしようもない。とりあえずわかったと言っておくと、抱きしめる腕が緩んだ…緩んだけど離してはくれない
妊娠しても変わらずにこうやってくれる彼は凄く嬉しくて、すごく大好き

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