産婦人科は別館になっているので、透明な扉の中に入って待合室の中に入った。彼が私に気を使って端にしてくれたのはいいが、隣に座る女の人が気になる
いっぱい椅子空いてるんだから違う所に行けばいいのに…なんて醜いことを考えつつもやっぱり気に入らなくて彼の腕に自身の腕を絡ませていた。彼は多分私のそんな思いに気づいているようで表情が緩んでいる

そのうち話しかけられるとポアロで見た事があると言ってきて、彼が無難に返した。その時に予約番号が書かれた画面がテレビに映ったので立ち上がった
血液検査に体重を量ったり血圧…それに彼を連れて行く理由が無いんだけど、そこにいる女性が気になって振り向いたら彼が立ち上がって私に歩み寄ってきた、そして手を差し出して「転ばないでくださいね」といわれると「羨ましい」とか呟かれる。

優越感になんか浸れない。私の旦那様を見ないで、かっこいいって思わないで!!なんて思ってみたりして
私は相当やきもちやきだったらしい…あ、でも妊娠中って情緒不安定らしいからそれのせいなのかもしれない…さながら生理前
扉の前まで送ってもらえば私は中に入って、色々食生活とかつわりとかの話しを聞かれながら貧血とかの検査をすると言われて小さな瓶にたくさん血が抜かれていってくらくらした。机に突っ伏したら看護師さんが扉を開けて彼を呼んでくれた

「脳貧血だから少し休めば大丈夫だと思うわ…よくあるのよ」

「ええ、本当によくあります」

酷い!!!血が抜かれてるの見てたらなんか貧血みたいになりますよ!!
なんて心では思っていても、ぎゅっと目を瞑っていたら、体が宙にふわりを浮いた

「ベッドに寝かせましょうか」

「そうですね、このまま座っててもいいですが…後で怒られそうですし」

「素敵な旦那さんね。それじゃあこっちに運んでくれる?」

怒りますよ!目を開けようとしてもチカチカするし、とりあえず無理はしないようにしてベッドに大人しく横になった。下ろしてくれた彼が傍らに椅子に座って手を握ってくれている。重症患者みたい

「体調どうですか?」

「血を採ってるところは見ないようにします…体調は大丈夫ですよ」

起き上がろうとしたら、そのまま検査に入れるというので、彼と一緒にいつも検査の時に入っている部屋の隣の部屋に入った。そこはいつも先生の話しを聞くところで、今日からは腹部エコーに変わるというので、そこにある台に寝転がされた。お腹に生暖かいジェルのようなものが塗られてそのままお腹の中を見るものが当てられて、私のお腹の上をうろうろしている

「さーて、心臓どのへんかなー…このへんかな」

私の担当は女の人で、さばさばしている優しい先生。その先生が赤ちゃんの心臓がありそうな部分にそれを当てると、変な音がなった。そしたら彼が笑った

「本当にしゅわっしゅわって聞こえますね」

「でしょう?」

「じゃあ赤ちゃんねー…」

クスクスと笑ったら私のお腹が揺れたせいだろう、モニターに移る赤ちゃんが何か動いているのが見えて、ちらっと彼の様子を確認したら目を見開いていてただただ驚いているような…ていうか赤ちゃんって何状態の子供みたいな顔をしていた。
お会計の時に彼が払おうとしてくれて、ただお会計の前でもたもた出来ないので、そのまま出してもらい、車の中に入ってからお金を返そうとしたら睨まれた
睨まれる覚えはありません!

「お腹の子は誰の子ですか?」

「え、私とれーさんの子です」

「じゃあ俺にもお金出す権利あるよな?」

睨まれる覚えは無かったけど、筋合いはあったようだ。
うんうんと何度も頷くと、満足そうに車を進めた。彼の子供ってどうなんだろう、降谷さんとしては本当はどう思っているんだろうと思っていたが、車の中では聞けずに車から降りて部屋に入って、今日もらったお腹の中のエコー写真を見ていたら、隣に座った降谷さんが一緒に覗いてきた

「不思議ですよね…赤ちゃんがなまえのお腹の中にいるって…」

「れーさん、赤ちゃん見てた時変な顔していましたもんね」

「変な顔?」

「赤ちゃんって何?みたいな顔です」

そういったら、隣で彼がクスクスと笑って頷いて「確かに、そうでした」と続けた

「父親って父親の自覚が遅いっていいますけど、なんとなくそれがわかる気がする…結局俺の体には何の変化もないから、産まれてきてその子の事を色々するまで実感が湧かないんですよね、きっと…」

私のお腹を撫でながらしみじみと言ってくる彼に、笑ってしまった。確かによく言うし、何か妊娠おめでとうって書いてあったパンフレットとかにも色々と書いてあった
私はなんとなく性別がこっちかな〜っていうのはあるんだけど、彼はどっちが欲しいんだろうか

「れーさんは、男の子と女の子どっちが欲しいですか?」

「あぁ、微妙なところですが…男の子ですかね」

「なんでですか?」

「女の子で愛するのはなまえだけがいいので」

「子供は別にしてください」

「男の子だとすると…でもなまえを取られたような気分になって、結局可愛く思えなかったりしないですかね」

「私を真ん中に立たせるのやめてくださいよ…」

どうしても私の名前が出てくるので眉が下がってしまうけど、嬉しいには嬉しいのでどうにも出来ない。妊娠していると赤ちゃん赤ちゃんばかりで、私よりも赤ちゃんって感じがあるから、彼がこうやって私の事を考えているのは嬉しく思う

「そういえば…先ほど他の妊婦さんが話していたんですが、里帰り出産は」

「あ、しようかなって思ってますよ。一人目ですし」

「嫌」

「え?」

「なまえが離れるのが嫌なんで、俺が育児休暇取る」

「え、あるんですか」

「あまり事例は無いな…それにただの警察官ならわかるし、公安部とかならまだしも、警備企画課が育児休暇取るとか聞いた事ないですし…って事で、初事例」

「いやいや…」

「何かどうしても俺が出ないといけないってくらいの事態になったら、行くっていう理由つければきっと行けるだろ」

「いやいや…」

「だいたい妻がなまえなので、余計に取れそう」

「えーっと…」

何言ってんの、この人…状態なのにもうiPhoneを確認しながら何かを打ち込んでいて、勢いが止まらないしなんでこんなに強引なの。私が困っていると、iPhoneを閉じてこっちを見てきた

「なまえと離れると怪我するんだよな、なぜか」

あれ、本当だ、否めない…え、本当だ、怖い

「俺の安全のためですよ」

え、怖い。何この人、怖い…色々な意味で

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