彼女が妊娠してから、少しの間だけは既存の仕事を終わらせなくてはいけないので定時に帰る事は出来なかったが、今日の朝方やっと終わらせたので帰宅した。着替える前に寝室を覗き込んだらすやすやと寝息を立てて眠っているなまえがいるので思わず隣に寝転んだ。寝顔を見ていてしばらくすると、彼女が目を瞑ったままムクッと起き上がってベッドにお尻をつけるようにペタンと座り込むと、欠伸をもらした。
誰ですか、この可愛い生き物

欠伸をもらしている途中の彼女に声をかけると、彼女の欠伸がピタッと止まった。
驚いたような顔をする彼女が口を開いたかと思えばすぐに閉じて、それから唾液をこきゅんこきゅんと音を立てて飲み込む音が聞こえた。眉を寄せて起き上がると気持ち悪いそうで、彼女のつわりは空腹時が一番気持ち悪くなるようだったので何か飲み物を、と思いキッチンへ向かった。冷蔵庫をあけるとサイダーがあったのでそれを取り出した、彼女がトイレへ駆け込んだのを見ると俺は冷蔵庫と向き直る。レモン…グレープフルーツ、とりあえず酸味のあるものがいいだろうと野菜室をあければレモンがあったのでサイダーの中にレモンを切って入れた。ソファーに座って彼女を待っている間は、正直そわそわした
背中さすってあげたいのだが、絶対怒られるだろうし、最悪話しをしてくれなくなりそうだ。そのままなんとも言えない気持ちで彼女を待っていると、こっちに来たので用意した飲み物を差し出した
顔色のあまりよくない彼女が、それを受け取って飲んでいるのを見ると安心した。水分を取れているようでよかった。

「ご飯食べられますか?」

そう聞いたら、食べられるとは答えてくれたけど、俺に遠慮している様子だったので緩く笑みを浮かべて首を傾げ「僕が作るサンドイッチ、食べたくないですか?」と問いかけてみたら彼女が勢いよく返事をしてきた。笑顔をすぐに消して無言で見ていると、彼女が誤魔化すように笑った、いいんですけどね、別に。笑って着替えに行き、ジャケットを脱いでいると彼女がとことこと歩いてついてきたのでそっちを見た

「え、どうした?」

具合悪いのかなんなのかと思って問いかけると

「ついてきました」

という言葉が彼女の口から出てきて、正直物凄く動揺した。しかも甘えているのかと問いかければそれには「少し」という言葉が返ってきたので彼女の肩を抱き寄せてぎゅっと抱きしめる。彼女が可愛すぎるのでキスがしたかったのだが、彼女に拒否されたかと思えばしれっとリビングのほうに帰っていった
さっき吐いた事を気にしているのなら気にしなくていいのに。むしろ俺とキスが出来ない事を気にして欲しいくらいだ

もう一度言うけど、妊娠しているときくらい甘えて欲しい。それなのに彼女は動きまわっていて大人しく座っているという事をしない。自分が動いているせいでそう思わせているのかもしれないので、シャワーに入れば少しはソファーに座っているかと思ったのに、シャワーから出てきてみたのは掃除する彼女だった。
まったく…あなたって人は…

彼女を抱き上げて一緒にソファーに座り、彼女の腰に腕を通したまま離さないようにしていた。彼女のお腹はまだそこまでわかるほどには膨らんで無い、ただ少しだけ出ているかな?程度でそれが妊娠なのか……は全然わからない。彼女が出かける時は必ず部下に頼んで荷物を持つように言ってあった。そうじゃなければ彼女は歩いて重い荷物を持つ事になってしまう
自分でも過保護だとわかってはいるのだが、多分自分じゃないからこうなるんだろう
自分の体だったら、大丈夫だとかはわかるのだが、大切な彼女の体で、しかも無理をしそうな彼女なのでいまいち信用が出来ないというか…とりあえず大人しくはしていて欲しいし、うっかり外に出て事件や事故に巻き込まれてしまったら俺の心臓がストップするかもしれない
彼女の唇が俺の額に触れてきた、それからクスッと笑ってくるので彼女の唇に自身の唇を寄せたら、今度は触れるだけのキスを許してくれた。

「あの…病院とか一緒に行きますか…?」

「え、行けるんですか?赤ちゃん見れます?」

「来月の中旬…下旬くらいになったらエコーで見れるって言われましたよ。旦那さんも良かったらって…」

「ホー…。行きます、絶対に」

「あ、お仕事がお休みだったら…で」

「いえ、風見に任せてでもいきます」

「いや、あの」

「むしろ中抜けしてでも行く」

目の前で戸惑っている彼女が面白くて、最後のほうは半分からかっていただけだったのだが、最終的に彼女は眉を下げながら黙ってしまったので謝った。ただ見たいのは本気だったのでそれだけは伝えておく。そのまま彼女と話していると、彼女が瞼が重くなったらしく話しながら段々と声が小さくなっていき、そして目を開けた

「眠い…」

時計を見ると、彼女が起きてからだいたい2時間くらいしか経っていないが、甘えるように首に腕を回して抱きついてきたので「運びますか?」と問いかけたら頷いたので、そのまま抱き上げて寝室へと運んだ。
ベッドに寝転がらせて、自分も彼女と眠ってしまおうと隣に寝転がると、彼女がこっちを見て俺の服を握ったまま目を瞑って寝息を立て始めた

かっ……わいいですね!!妊娠初期じゃなかったら襲っていたくらいの勢い。
彼女を抱きしめたまま自分も眠りについた彼女はぽかぽかと暖かくて、何も考えずにすっと眠りに入れた

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