そのうち事務的な作業ばかりになってきたので、左手で頬杖をつきながら右手でキーボードを人差し指で押していた
「降谷さん…そろそろ休んでは?立会いしてからずっと休んで無いでしょう?」
それなのに仕事を持って近寄ってくる風見に俺はいつもびっくりするよ。休めと言いながら仕事を持ってくるこの部下…俺がため息で返事を返すと、部下が寄ってくる
「産まれたんですか?」
ああ。そういえば風見以外には言ってなかったな、なんて思って頬杖をやめてかわりに途中までやった仕事を保存してパソコンを閉じた、休む前に彼女のところに行きたい。部下に頷くと、興味津々なようで俺のデスクに部下がわいわいと寄ってくる
ガタイの悪いとは言えない面々が俺の周りに集まってくると、暑苦しいにも程がある…真冬だけど
「可愛いですか!?」
「可愛さは…なまえのほうが可愛いな」
「ちがっ…子供の可愛さとはまた別でしょう!?」
「そりゃそうですけど。なまえがトイレとかに行ってる間は全力で可愛いと思えるし可愛がれる…ただなまえが戻ってくるとなまえが取られた感じがして仕方ないです。あと子供産んでからなまえが美しく笑うので耐えられません。あとたまに俺まで甘やかしてくるのでさらに耐えられない」
「何が耐えられないんですか?」
「何というか…やめて欲しいけど構って欲しい。あ、一度出る、今からなまえのところに行くから。お前たちもサボってないで仕事しろ」
「はい!」
扉から出て行けばすぐに彼女の所へ向かった。一応ノックをしたのだが、返事が無い
中に入ると暑いのか、布団を抱っこして眠っている彼女と、ベッドの上で眠っている子供がいた。子供の小さな手を人差し指でちょいちょいと触れると、俺の手をぎゅっと握ってくる。おきてて動いてる時も、なぜかずっと目を開けないが、見えているのかと心配になった
ただ彼女が食事中の時とかには助産師のいる所に預けるらしいのだが、その時はよく目を開けているらしい
眠っているはずのその小さな手にぎゅっと握られていると、彼女がごろんっと転がった
お腹が見えてるので治してあげようかと手を伸ばしたが、この間言っていたお腹の事が気になった。捲ったらダメだろうな、と思ってそのまま直してあげると彼女がごろごろと二回程転がっていった
「もう少し違う起き方できないんですか?」
「お腹が出たのに気づいて…お腹出して眠るとか安室さんの前でしたくなかったんですけど…というわけで、恥ずかしさのあまりに転がりました!!!」
「もうすっかり体調は大丈夫なんですか?」
「後陣痛ももうあまり痛くない程度ですし、切開して縫った傷が痛いだけで、大丈夫です!」
何か無駄に元気だな、と思って笑っていると、子供が手を離したので彼女のベッドに腰をかけた。すると彼女がベッドにペタリと座ってこっちを見てくる
「お、お腹見ましたか?」
あぁ、それが気になってて変にテンション高かったのか…首を振ったら彼女に手を掴まれて服の中へと誘導された
「見られたくはないんですけど、この悲しさ共有してください。皮です」
皮、確かに皮。肉なんてものが無くて、本当に皮…
そりゃ彼女にとっては悲しいんだろうけど、笑っちゃいけないと思いつつも可愛らしいので笑ってしまった。
「なんで笑うんですかっ!」
「いえ、可愛いですね、相変わらず…」
「悲しいんですってば!」
「治りますって」
「知ってますけどっ…!悲しい…」
彼女の肩を抱き寄せて、俺のほうに彼女がぎゅーっと抱きついてきた。その頭を撫でて、鼻先を埋めた瞬間に子供が泣いた
そして俺の腕から彼女がいなくなる
寂しい、寂しすぎて転がりたい
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