「何してるんです?」
「スコッチのご飯です」
「せめて授乳中の時にはスコッチって言うのやめてください!」
彼女が声を上げて笑うと、「じゃあパパに名前考えてもらおうか」冷蔵庫の扉をしめると、スープパスタを作りながら考えた。名前…子供の名前か…
彼女は授乳が終わったようで下に敷いた布団の上に子供を寝かせていた。だいたいいつも眠っている。野菜を入れたスープパスタに少し暖めた麦茶を運んでいけば、彼女が立ち上がろうとしたので制し、全部運び終わった頃には眉を下げていた
「何から何まで…ありがとう」
「いいえ。これくらいしか出来ないから」
ふふっと笑う彼女に、途端に胸がぎゅっとなって抱きしめた。そのまま抱き上げて膝の上に彼女を乗せればもう一度抱きしめて胸元にぐりぐりと額を当てた
「どうしたんですかっ…?」
「お帰りなさい」
「ただいま」
たった1週間、久しぶりに仕事漬けで家にたまに休みに帰っても笑って出迎えてくれる人もいなければ当然キスもなし。今までこんな生活が当たり前だったのに、いつの間にか彼女がいる事のほうが当たり前に変わった
一人でいる家はかなり寂しくて、無駄に本庁に行っては面会時間内に会いに行った
だから今彼女がいるのが嬉しくて愛しくて仕方ない
顔をあげて彼女に顔を近づければ、彼女と唇が重なった。唇が離れると彼女は必ず笑う、その顔がまた可愛い
「ご飯冷めちゃう」というので離してやれば、一緒にご飯を食べた
「名前…こどもで、どうでしょう」
「こども…うん、こども…れーさんがつけてくれた名前…」
食べ終わった矢先の出来事だったけど、ただ名前の案を出しただけなのに凄く喜ばれた。その日から子供の名前はこどもになった
夜も彼女は2時間おきくらいにきちんと起きて、授乳とオムツを替えたりしていた。何か出来る事はないかと思って問いかけたら「あ、じゃあ授乳してください」と冗談交じりで言われたので
「じゃ、やってみますか」
と返したら
「母性ありそうだから出そう」
なんて真顔で言われたので、もう二度とこれについての冗談は返さない事に決めた
彼女が起きるのに気づいて自分も起きて、それを繰り返していたら彼女はオムツ交換だけはさせてくれるようになった。交換してからは俺に背中を向けて授乳をしているし、背中向けているどころかケープまで羽織っている
その背中に額を擦り付けていると、彼女が笑った
「どうしたんですか?」
「なんとなく。あのまま目覚まさないかと思ったりしてたので」
授乳が終わったようで、そのまま眠ってしまった子供をベビーベッドに寝かせると、彼女が頭を撫でてきた。「れーさん置いていかないですよ」彼女はそうは言うけど不安なんだ、と。ただ俺の心を知ってか知らずか、彼女が今日は俺の頭をぎゅっと抱きしめてきたからそのまま眠った。彼女の心臓の音が聞こえるのが物凄く安心する
その後は朝まで三人ともぐっすり眠っていたみたいで、一番最初に起きたのは俺で彼女は俺の頭を抱きしめたまますやすやと寝息をたてて眠っていた。何もつけてない彼女の柔らかい肌、背中に手を回すと「ん」と声をあげて彼女が起きた
「っ…え、何で」
勢いよく離れた彼女が動揺しているので眉を寄せた
「何が何で?」
「え、なんで私れーさんに抱きついてたんですか?」
「…え、夜中起きた時になまえからしてきたんだけど」
「私が!?」
あ、まって。珍しくそんな事してきたと思ったら寝ぼけてたとかそういう落ちか
逃げてしまった彼女をもう一度捕まえようとしたら、子供が泣いたので彼女がそっちに行こうとしたが、俺が抱き上げてみる事にした
泣き止まないと思ったら、泣き止んで、またスーッと眠ってしまったのを見て彼女が「凄い」と呟く。あとは彼女に任せて朝食の準備をしに行く
たびたび仕事に呼び出された時はご飯を温めるだけにしておいたりして、仕事に行き
帰って来るとソファーの上で天使二人で眠っているのを見たりして
思わず風見に電話をかけた
「風見!!ソファーに天使二人が眠ってる!!」
「おやすみなさい」
徹夜していた風見にすぐに電話を切られる始末。
俺はこんな日々が続くと思ってたんだけど、甘かったんだよな
→おまけ
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