育児休暇は条件付で許可された。その前に出来る仕事を終わらせているため、結構家にいない事が多いが、彼女はもう安定期だし後期つわりも無いようだったので彼女に甘えて仕事に専念していた。ただもう予定日近くなったら定時には帰ってくる予定で、俺が無理でも、部下の誰かには電話が繋がるようにはするつもりだから産気づいても大丈夫なようにはしている。
それでもそんな彼女を一人で家に置いておくのは不安で、園子さんと蘭さんがよく買い物行ったり遊んでくれたりしているのは嬉しく思う。思うが、俺も彼女と買い物に行きたい

今まで物を強請ってこなかった彼女が始めて言ってきたおねだりを断るわけが無い。車でもなんでも買う

「とりあえずなまえのものを買うのは百歩譲ってなまえのお金でもいいとする。ただ他の事は俺からでいいだろ?家事してもらってるわけだし」

「だって家事も…れーさんもやってるじゃないですか」

「むしろ俺はなまえが家にいる事にお金を払いたい」

「私を買おうとしないでください。でも、とりあえず子供用品の事は甘える事にします…」

よし。彼女が折れてくれたので満足気に頷くと、彼女が深く頭を下げてお礼を言ってきた
お礼を言われるような事をしている覚えはないのだが、そのままベッドに横になって彼女を抱きしめて眠った。彼女は俺に背中を向けて抱き枕を抱えている感じだが、それでも俺の腕の中にいるからいいことにしよう

結果的に、彼女は仕事をとりあえずはやめたらしい。だからいつ帰っても彼女はいるようになってはいるのだが、じっとしていない彼女の事だから仕事じゃなくても家の中にずっといるわけではないだろう。目が疲れるという理由でゲームも全然していなくて、本当にほとんど眠っている感じになっていた

「だるいんですか?」

帰ってきて、ベッドに横になっている彼女の傍らにスーツのまま座って彼女の髪を撫でると、彼女が「んー」と声を漏らした。そのまま頬を撫でるとゆっくりと瞼を開けてこっちを見てくる

「眠い…お帰りなさい」

「ただいま」

「ん」と目を瞑ってきたので俺から彼女にキスをする。んってなんだ…可愛すぎるだろ…。誤魔化すように着替えをしに行くと、別に起きてこなくてもよかったのだが彼女が起き上がって欠伸を漏らすと、後ろから俺に軽く抱き着いてきた、彼女の体よりも先にお腹が当たって、俺が動いたらお腹がつぶれそうな気がして動きを止めると彼女にいつも笑われる。確実にからかわれているのはわかっているのだが、どうにも出来ない。
離れた彼女はまたずっと動き出していた。

俺の心境はと言うと、段々となまえのお腹が大きくなっていくたびに
少しだけ怖くなっていく。産まれて、赤ん坊にかかりきりで、俺に構ってくれなくなりそうで。ただなまえの子供とか絶対可愛いだろうとは思うのだが、それでも俺にとっては今はなまえが一番で、今の自分の心境としては父親という自覚はまったく無い

そんな状態のまま、その時は来てしまった。
予定日よりも6日早い12月27日の事、丁度俺が仕事が休みで朝御飯を食べ終わった後だった。何度か彼女がトイレに行ってを繰り返していたのには気づいていたが、そのうち彼女が首を傾げていた。いや、首を傾げたいのはこっちだよ

「どうした…?」

「ううん…?」

なんでもない、と首を振る彼女が俺の膝の上に頭を乗せて寝転がっているという状態で、彼女の頭を撫でていた。髪に指を通していると、彼女が体を丸くさせて目をぎゅっと瞑った。それが数秒たったらいつも通りにしていた
彼女が洗濯物を干そうとベランダに出て行ったのだが、そのうち戻ってきて結局寝転がった。絶対やらないでって言われているし、熱があっても何をしていても俺に頼んだことは無かったのだが、頼まれたので彼女の様子を見ながら洗濯物を干して行く

終わった後に彼女の元に歩み寄ると、彼女の頬を撫でた

「なまえ、陣痛じゃないんですか?」

「え…そうなの?」

「いや、感覚短いと思うけど…俺に聞かれても」

「計ってたんですか?」

「なんで計ってないんですか…」

そんなやり取りの中、また彼女が顔を歪めた。ダメだこの子、話しにならない
とりあえず彼女を連れて病院に行く事にした

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