「降谷さん最近休憩取っててえらいですね!いつも何見てるんですか?」
「癒し」
「あぁ…なまえさんですか…。最近どうですか?」
「どうって、なにが?」
「情報によれば放火犯を捕まえたとか」
「そういうこと。手綱を握ってるはずなのに、その手綱がどこまでも伸びるから困ったものだ…」
2分間くらいの休憩を終わらせて仕事を開始した、早く終わらせて帰りたい。日曜日のうちには帰れそうに無いが、月曜には絶対に帰りたい
彼女はつわりの間は休職していたが、安定期に入ったのでまた仕事を初めていた。働かなくていいのに、働く必要は無いとは言えないのは、自分がほとんど家にいないからという事もあるから安易には言えない。土曜がすぎて日曜が過ぎる、昼には外で活動して本庁に戻って仕事して…久しぶりの公安の仕事漬けの2日間を過ごした
「なまえからまったく連絡来ないんですけど…」
「昨日きてたんじゃないんですか?」
「今日は何も無いです」
「ほぼ毎日一緒にいるじゃないですか…」
「俺はそれでも足りない」
「妊娠中ってどうですか?」
「なにがですか?」
帰り支度をしながら部下に返事をする。いそいそと帰り支度をしながら思うことじゃないが仕事してこい。ただこの部下がしてくるのが彼女の話しなのでどうにも無碍にできないし、むしろあまり人にも話せないので聞いて欲しい気持ちもある
「冷たくなったりとか、態度かわったりするって聞きましたけど」
「全然ですね。全然甘えて来ない彼女が一度甘えてきただけで……まあ、ちょっとあれなところはどんなに可愛いと思ってもめちゃくちゃできない事ですね」
「降谷さん、眠いですか?」
「まあ、意外と」
書類を寄せてから立ち上がると、車の鍵をポケットに入れてiPhoneを確認してからそれも胸ポケットに入れた。
「降谷さん、帰るんですか?」
「…仕事を持ってくるな、風見。」
手に持ってるものを見ると、眉を寄せていった。すると風見が今日は何も止める気は無さそうで、ただデスクの上に置かれたのでそれと同時に立ち上がった
「お疲れ様です」
ひらひらと手を振って本庁から出ていけば真っ先に家に向かった。部屋に入っておかえりの言葉が無いが、美味しそうな匂いがするからいるか、さっきまでいたかのどっちかだし、部屋も綺麗なので午前は動き回っていたに違いない、それならお昼寝でもしているかと思い、着替えるつもりもあって寝室へ向かった
ベッドの上に横になっているのはワンピース姿で俺の枕を抱きかかえながらすやすやと眠っている彼女
ああぁぁあ…天使!!っていうか俺にして欲しいです。そんなのされた事ない
とりあえず枕をそっと取ると彼女が「ん…」と声を漏らして無くなった枕を探していた
この一つ一つの仕草が可愛すぎる。彼女の隣に寝転がると彼女が俺を抱きしめた瞬間に「ぎゃあ!」と声をあげた
「ちょ、帰って来たなら言ってくださいよ!!」
「いや、あまりにも可愛かったので。俺の枕を抱きしめて眠ったり?」
「ちが、これは…あったから!」
あったからって、あったものなんでも抱きしめて眠るのか…。彼女が適当な理由を言っているのはわかっているが可愛いので抱きしめた。あぁ、スーツが皺になるから着替えないといけないのに、いっきに眠気が襲ってくる
「あ、れーさん眠ってないんですか?着替えてっ!」
彼女がぐいぐいとジャケットを引っ張ってくるので、一度起き上がって着替えに行った。その間に彼女がベッドから足を下ろして起き上がろうとしてきたので、それを手を出して制すると彼女が足を止めてベッドに腰をかけた。着替えを終わらせて彼女のほうを見ると、彼女が自身の枕で顔を隠していたので、その枕をつつく
「どうした?」
「あ、着替えていたので…」
確かに、着替えを見ている事なんて一回も無いが、何回そういう行為をしたのかわからないのに、いつまでもそんな状態か。彼女が枕をどかしたので、寝転がって手招きをした。妊娠していなければお腹に手を回して自身のほうに引き寄せたのだが、それは出来ないので彼女自ら来てもらうしかない。ポンポンと隣を叩くと、彼女が唇を結んで視線を迷わせた後におずおずとこっちに向かってきて、俺の腕に頭を乗せてきた
「おやすみなさい」
「れーさんもお昼ねですか…?」
「うん。それになまえだって午前動いて疲れたろ?」
「なんで知ってるんですか?」
「わかるよ…」
段々と意識が遠のいていく中、もぞもぞと動いた彼女が俺の唇に唇を軽く押し当てて「お帰りなさい」と言ってくれたのに、返事を返す間も無く眠ってしまった
9/27