自業自得





どうしてこうなった、んだ。

「ナマエ…」

え?ちょ、なんで兄さんそんな色っぽい声出してるのまじウケるー…だから、どうしてこうなったんだ。誰か説明して欲しい。

…いや、誰も説明出来る人なんていませんよね。この場に俺と兄さんしかいないんですから。あはは、俺ってばうっかりさんだなぁ…はは……とりあえず、往生したい俺です。

事の始まりは何だったかすら思い出せないので、多分いつもと変わらない些細な事だったんだろうと思う。

今日はアカデミーが午前授業だけで帰って来て、居間で宿題を片して、そしたら授業で鬼ごっこなんてしたからか眠くなって。今日は父さんも母さんも用事があるらしくて、家には誰もいなかったから、その静けさが余計に睡魔を助長させて…寝たんだよね、確か。

で、いつのまにか帰って来てた兄さんに揺り起こされた…のは何と無く覚えてる。眠気の覚めない頭でも縁側から差し込む陽が紅に染まっていたからもう夕方か、位は分かった。緩く肩を揺する兄さんが任務上がりなのも分かった。

…そうだそうだ。それで、ここから兄さんの過保護なまでのブラコンが発揮されたんですね。

「ナマエ、何も羽織らないで寝ると風邪を引く。例え風邪を引いても俺が風邪菌を引き受けてやるけど、治るまで苦しむナマエは見たくない」

未だぼんやりと霞む思考で「このブラコンめ」と内心ごちていたら、少し冷えた頬に兄さんの手が触れた。さっきまで外に居たであろうその手も人の事を言えない位には冷たくて、反射的に逃げる様に身を捩る。

それがいけなかったのか、追い掛けて来た両手に今度こそ頬を包まれて手とは違い温かな感触が口に触れた。

「……なにしてるの、兄さん」
「冷たい手を嫌がるナマエが可愛いから、つい」

つい、じゃないよね。つい、じゃ…!そんな事で一々兄弟から口付けされてたらたまった物じゃない。お陰で目は覚めましたけど、代わりに苛立ちも感じましたよこのやろう。

「兄さん、訳もなくキスするの止めようか」
「何故」
「いや、俺が聞きたいよそれ」
「好きだからしてる」
「……」

そういう事じゃ…そういう事じゃないんだよ兄さん…。いや、今更だけど本当にこの人天才って呼ばれてるの?それガセじゃないよね?アカデミー一年で卒業した天才は間違いなくこの人だよね?

…これならきっと誰でも天才になれるよ。

「…俺が好きなのは知ってる、けど、それだと兄さんに彼女が出来たとき大変だよ」
「彼女にはナマエがなる予定だから大丈夫」
「何が大丈夫なのか言ってみ」
「そこらの女よりナマエの方が可愛いから」
「……」

そもそも俺男なんですけどー…とは言わない。この兄の前ではそんな事は問題では無いのだ。要は言うだけ時間の無駄。

それにしてもこの兄は本当にどこへ向かっているのやら…。うちはなんだから、その内嫌でも結婚しなきゃならないだろうに。…そこに、この居たたまれなさをやり返してやろうかと、邪心が芽生えた。後から見れば絶対止めろと言いたくなるだろうに、その時の俺は…きっとまだ寝てたんだよ。うん、絶対そう。

「兄さんの方が可愛いと思うよ」
「……は?」

言った後に兄さんを見上げれば、ぽかんとした間抜け面が拝めた。初めて見るそれに気分が良くなって、俺は止めとけばいいのに言葉を続ける。

「笑った顔すごく可愛い。その髪だって、そこら辺の人よりずっと綺麗だよ」
「……、」

寝そべったまま、横から覗き込んでくる体勢の兄さんの頬へ片手を伸ばして緩かに撫でて。首筋を伝い結われた髪へと指を滑らせると、ふわり頬を紅潮させる兄さんに笑みが零れる。

「でも一番可愛いのは、俺が大好きでしょうがない所」
「ナマエ、」
「はは…照れてるの?でもそんな声で呼ばないでよ。…どうにかしたくなるから」

普段拝めないその表情に面白くなって、普段困らせられてる仕返しがしたくて、と言い訳を並べてみても俺が楽しんでいるのは事実。

眉を八の字に垂らした兄さんの肩から流れる黒髪に、少し身体を起こして唇を寄せながら横目で彼を見れば。…陥落したな、と思わず歪む口角。

俺を直視出来ずに視線をさ迷わせて、朱に染まった頬を隠す為か口許を片手で覆って。なによりその瞳がうっすらと涙の膜に揺れている。

「……ね、恥ずかしいでしょ?だから、もうこういう事言うのはや、」
「ナマエ、好きだ」
「めて、って……は?」
「好きだ。ナマエ、愛してる。ナマエが望むなら俺が下でも構わない」
「…い、いやいやいや、そういう事じゃなくて」
「ナマエ、ナマエナマエ、」
「……」

なんだこれ。悪化したのか?

…お前らの兄さんだろ!早く何とかしてよ…!





―――
尾切蜻蛉もいいところですみません!匿名様リク、いつも兄に攻められてばかりは悔しいか ら、自分がイタチにせめる話し。です。兄さんが収集付かなくなってわたしもびっくりです。い、色々すみません…!一応攻めて、みましたが、…どうでしょう…!←

リクエストありがとうございました!


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